7 土砂災害③

 前2回は雨による土砂災害について書きました。今回は地震による土砂災害について少し触れます。地震によっても土砂災害が起こることは、2018年(平成30年)の北海道胆振(いぶり)東部地震で大規模、そしておびただしい数の斜面崩壊が映像とともに報道されたので、記憶されている方も多いのではないかと思います。写真は厚真町吉野地区の斜面崩壊ですが、これを見たときには衝撃を受けました。

 

7 土砂災害③

写真 厚真町吉野地区の斜面崩壊(北海道庁・胆振東部地震に関するページより)

 

 宇部市土砂災害ハザードマップの情報面(うら面)の説明を見ればわかるように、基本的に土砂災害ハザードマップは大雨を前提につくられています。地震による土砂災害のハザードマップはありません。その理由は簡単、できないからです。
 にもかかわらず、地震による斜面崩壊は、実はよく起こっています。少し前になりますが、1984年(昭和59年)の長野県西部地震、御嶽山の大規模斜面崩壊(山体崩壊)によって極めて大規模な土石流が起こっています。また最近では、2016年(平成28年)の熊本地震があります。海外では、宇部が高潮で大変な被害を被った直前に起こった(1999年9月)台湾の集集地震でも、ちょうど北海道胆振東部地震のようにおびただしい山の斜面崩壊が起こっています。

 

 話はそれますが、1999年9月の台風18号による高潮災害は、山口県へ相当な金額の義援金が送られてきてもおかしくないほどの災害だったのですが、この集集地震によって、義援金は台湾へ贈られて、山口県にはほとんど贈られませんでした。不運って、重なることがあるんですね。

 

 地震による土砂災害には、いくつか共通点があります。まず震央に近いこと。直下近くに震源があるので、多分突き上げるような衝撃(揺れ)が斜面を襲う、すると、斜面の土がズルっと滑り落ちる、きっとこのようなメカニズムではないかと思います。もう一つの共通点は、火山が近いこと。火山灰が堆積した地盤は一般に揺れや水に弱い性質があります。
 北海道胆振東部地震であれだけ大規模かつおびただしい数の斜面崩壊が起こったのは、有珠山系からの火山灰が積もった地盤であることに加えて、台風21号が前日大雨を降らせており、地盤が弱くなっていたことが考えられます。
 一方、熊本地震ですが、その地震のあと大雨が阿蘇山から熊本を襲いました。これによっても多くの斜面崩壊が発生しました。地震でひび割れが入った地盤に雨がしみ込んで土砂災害を起こしたものと考えられます。このように、土砂災害は地震と雨の両方の原因で起こり、両方が前後して起こった時には十分注意しなければなりません。

 

 ここ宇部は火山灰ではありませんが、風化花崗岩(真砂土)が覆っているところが多く、この真砂土もまた雨に弱いことに注意が必要です。上の厚真町吉野地区の斜面崩壊写真を見ると谷筋も尾根筋も関係なく崩壊していますが、この時も多くはやはり谷筋で崩壊が起こっています。すなわち、イエローゾーンは谷筋が指定されていますので、イエローゾーンに指定されているところとその周辺は地震にも注意が必要、ということが言えます。

 

2020年6月25日

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