3 洪水ハザードマップ②
県内には県が管理する河川が108水系474河川あります。いわゆる2級河川がほとんどを占めます。国が直接管理する河川は1級河川といい、山口県を流れる1級河川は佐波川と、広島県との県境を流れる小瀬川の2水系だけです。2級河川が多いのが山口県の特徴です。
この474河川のうち、洪水浸水想定区域図やハザードマップの作成対象は64河川あり、県では、すでに34河川の洪水シミュレーションと洪水浸水想定区域図の指定・公表を完了して、残り30河川のシミュレーションを実施中、あるいは準備中とのことです。
なお、宇部市内の河川については、厚東川、中川、有帆川、真締川の4河川が作成対象となっており、宇部市では、有帆川、真締川についても、県によるシミュレーション等が完了したことから、できるだけ早く、ハザードマップの更新を図るとのことです。
さて、図に示すように今回の更新で『想定最大規模の雨量』という言葉が使われています。実は明治以降、わが国では降雨記録がきちんと残されていて、降雨量の多い少ないは地域によってずいぶん異なることが分かっています。例えば瀬戸内地方は少なくて、紀伊半島南部や九州の屋久島では多いという事は皆さんもよくご存じのことと思います。従って、国土交通省(気象庁も国土交通省です)は地域ごとに過去の降雨を統計的に解析しています。その結果をもとに、大体山口県の宇部地域は50年に一度、あるいは100年に一度の豪雨はこれくらいの雨量、という統計的に解析した結果があります。
川幅の拡張、堤防の増強や新築、場合によってはダムの建設などの河川整備は、この統計的に解析した雨量を前提に行われます。またこれまでの洪水ハザードマップもこの雨量を前提として作成されていました。厚東川でいえば、改定前の『計画規模の雨(2日間総雨量335㎜)』というのがそれです。
ところが皆さんも「最近の雨の降り方は異常では」、という実感をお持ちのことと思います。全国約1300か所で雨量観測を行っている、気象庁のアメダスが運用され始めて約45年たちますが、この間明らかに時間雨量50㎜や時間雨量100㎜を超える回数が増えています。またここ数年は大変な豪雨により大きな災害が頻発しています。
そこで、これまでの観測記録も考慮に入れながら、考えうる最大の豪雨に対してハザードマップを作ろう、という考えに変わりました。統計的には何百年に一度、あるいは地域によっては千年とか数千年に一度の豪雨、ということになります。しかしこれはあくまでも過去の記録を統計的に処理したら、という数値で、決して数百年とか、数千年後にこの雨が降る、ということではないのです。そこに統計や確率に対する“落とし穴”があります。
実際、ここ数年、「観測史上最大の」、とか、「過去の記録を大幅に上回る」、と言った雨が全国各地で頻繁に起こっています。たとえ何百年、あるいは何千年に一度の雨、といっても、そのような雨が今年降っても全くおかしくはありません。それが確率というものの性質です。『想定最大規模の雨量』とはそういう意味をもった雨量です。
ハザードマップに示された洪水が今年起こるかもしれない、という気持ちでハザードマップを読みましょう。
図 厚東川洪水ハザードマップより
2020年5月28日