11 高潮災害②

 前回は中心市街地の例を挙げて、高潮による浸水深が4、5㍍以上になる場所が広い範囲であることを書きました。今回はその前提条件について説明します。

 

 宇部市高潮ハザードマップの冊子(お持ちでない方は、宇部市のホームページで見ることができます。「宇部市高潮ハザードマップ」で検索して下さい。)の5ページの「3.高潮浸水予測の条件」に概略説明があります。
 その最初に、『高潮浸水予測(平成18年山口県実施)は、枕崎台風が大潮の満潮時に来襲(概ね500年確率)し、それぞれの海岸で波高が最大となる条件で実施しており、平成11年台風18号での被災を基に定められた護岸・堤防などの施設整備の基準を大幅に上回っています。』とあります。ここで、500年確率とは、文字通り解釈すれば500年に一度起こる、という意味です。が、事はそう単純ではありません。

 

 まず、枕崎台風から。
 ハザードマップを作成するには、モデルになる台風が必要になります。ちょうど、厚東川の洪水ハザードマップの作成に用いられた2日間で518㎜というモデルの雨量に対応します。
 このモデル台風の候補として、記録がきちんと残っていて、宇部市に(というより山口県が行った検討ですから、山口県に、といった方が正しいでしょう)大きな高潮被害をもたらした4つの台風を検討しました。
 年代順に
 ①昭和17年の周防灘台風。宇部市に最も大きな被害をもたらしています。
 ②昭和20年の枕崎台風。結果的にモデル台風としています。
 ③平成3年19号台風(台風9119号)。青森県のリンゴ園に大変な損害を与えたので、リンゴ台風とも呼ばれています。
 ④平成11年台風18号(台風9918号)。西岐波、東岐波を中心に大きな被害がありました。表にこれら4つの台風の主な気象記録をまとめて示します。

 

 検討では、これら4つの台風が山口県を縦断するときに、その経路を0.5°ずつ東西にずらして、最も危険になる台風を選びました。その結果が枕崎台風だった、ということです。やはり最低中心気圧935hPaが利いたようです。

 

 次に、“概ね500年確率”について。
 枕崎台風クラスの台風が山口県を襲う確率を過去の記録から計算したところ、大体90年に一度(すなわち1/90)。満潮時に台風が直撃すると高潮災害が起こりますので、満潮時の±1時間がその危険時間とすると、1日に2回満潮があるので、合計4時間、すなわち1/6(4時間/24時間)が危険時間ということになります。そこで、1/90x1/6=1/540で540年に一度、すなわち約500年に一度、ということになります。
 次回も引き続き前提条件について説明します。

 

表 検討の対象とした台風とその主な気象記録

台風名 ①周防灘台風 ②枕崎台風 ③リンゴ台風 ④9918号
年月日 1942.8.27 1945.9.17 1991.9.27 1999.9.24
最接近時の中心気圧(hPa) 950 935 945 960

観測場所
最大風速(m/秒)
最大瞬間風速(m/秒)

下関市
34.2
37.8

下関市
23.2
37.1

下関市
24.0
45.3

宇部市
40.0
58.9

観測場所
観測潮位(m)
潮位偏差(m)

下関市
5.78
1.63

記録なし

宇部市
4.44
2.59

宇部市
5.74
2.23

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