20 これからのハザードマップ

 5月14日の第1回以来、ハザードマップはどのように作られているのか、そしてハザードマップには必ず前提条件があって、限界があるので過信してはいけない、といったことを書いてきました。

 

 実際に目の前で起こりつつある気象現象、たとえば雨の降り方や、台風であれば進路や強さなど、地震であれば震源の位置やマグニチュードなどがハザードマップの前提条件と異なれば、その結果起こる災害は、ハザードマップに記載してある予測とは異なることになる、ということです。

 

 このような観点から、宇部市が公表している6つのハザードマップ、
 ①洪水ハザードマップ
 ②高潮ハザードマップ
 ③土砂災害ハザードマップ
 ④揺れやすさマップ
 ⑤ため池ハザードマップ
 ⑥津波ハザードマップ
のそれぞれについて、前提条件や読むときに注意すべき点を書いてきました。

 

 ハザードマップを過信してはいけないとはいえ、自分の身を守る、家庭の防災を考える、企業の防災計画や事業継続計画を立てるときには、ハザードマップはなくてはならないものです。非常に多くの情報がちりばめられています。
 ハザードマップは「眺めるもの」ではなく、しっかりと「読みこむもの」なのです。

 

 ハザードマップが防災上必要不可欠なもの、ということはいくら強調しても強調しすぎることはないのですが、残念ながら大きな欠点があります。
 それは洪水、高潮、土砂災害など、“災害ごとに”作成されているということです。

 

 例えば、台風がやってきて大雨が降れば、大雨によって洪水や土砂災害が起こります。
 さらに満潮時と重なれば高潮災害も起こる可能性があります。
 現在の紙に描いてあるハザードマップは重ねて見ることができません。縮尺も違います。
 また内水(雨水が排水されずに低い土地にたまる災害)のハザードマップはありませんが、実際よく起こっています。
 これらを重ねて見ないと、よほど想像力のある人か、専門家でないと本当の意味での危険性は分かりません。

 

 実はそれを可能にする技術があります。
 「地理情報システム」(GIS: Geographic Information System)がそれです。
 これは一言で言いますと、地図をコンピュータで表すもので、異なる地図を何枚も重ねたり、透かしたり、色を着けたり、縮尺を変えてみる、などさまざまなことができます。
  国土地理院の標高を表す地図を使って内水の可能性のある場所を検討することもできます。

 

 宇部市にはハザードマップのほかに「宇部市防災マップ」が何種類かあって、過去の浸水域の地図などがあります。
 昭和17年周防灘台風の高潮や、平成16年以降の推定浸水域を表した図もあります。これらとハザードマップを重ねるとより現実的な防災対策ができるでしょう。

 

 また、学校の学習指導要領が全面的に改訂されて、小学校は今年度から、中学校は来年度から、高校は再来年度から新学習指導要領で教育が行われます。
 新学習指導要領の大きな特徴は、「防災」に関する教育をしっかりとすることが明記されていることです。
 例えば、地域の特色を調べるのに、防災という観点が強調されています。

 

 高校では新しい科目の「地理総合」、「地学基礎」が必修となり、その中では防災を地理情報システムを使って学ぶことになっています。
 そこではハザードマップを使うことが明記されています。
 小中学校の社会や理科の授業も高校の教育につながるような構成となっています。

 

 これからハザードマップはデジタル化の時代を迎えます。
 それによって、地域と学校教育が一緒になって、より分かりやすい防災対策ができるようになると思います。

 

 (このシリーズ終わり)

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