防災徒然日記

現在、宇部日報に連載中です。

記事一覧

 10月になりました。 あと3か月もすると、1995年1月17日の兵庫県南部地震(その震災名を阪神・淡路大震災といいます。以下、こちらを使います)から30年の節目の年がやってきます。 大阪でその強い揺れで目を覚ましました。 その日は開催したばかりの日米都市防災会議の幹事のため会場へ残りました。 しかしながら、結局その会議は吹っ飛び、テレビを見て一日を過ごしました。 翌日被災地へ入り、あまりにもひど...

 首都直下地震に対する東京都の取組みについて、第199段では備えに対する情報提供として、「東京くらし防災」と「東京防災」に少し触れました。 「東京くらし防災」は、誰もが日常生活の中で取り組める“防災行動”を提示するとともに、女性の視点のほか、高齢者、障害者、子ども、外国人、性的マイノリティ等、多様な視点での防災行動を提示し、以下の構成となっています。序章:発災時まず必要なこと、読むべき頁への誘導、...

 ついに防災徒然日記、二百段を迎えました。 9月7日には宇部日報社の20周年記念と私の「防災徒然日記」二百段連載の記念も併せて(少しフライイングでしたが)、防災シンポジウムが開催されました。 会場には250名を超える方に参加して頂きました。 テーマは「南海トラフ巨大地震に備える」ということで、私が前半で講演をさせて頂き、後半は脇宇部日報社会長の進行で、災害現場で様々な経験をお持ちの網木政江さん、山...

 8月8日に「南海トラフ地震臨時情報」が初めて出されたので、ここ数段そのことについて書いてきました。 今回からはその前に戻って、首都直下地震について引き続き書きます。 表は第193段の時にも使いましたが、東京都の地震被害想定結果です。 一の位まで数字があり、一見とても正確な被害想定のように見えます。 しかし以前お話しした通り被害想定には前提条件や仮定がたくさんあり、よくわからない所はエイヤッと割り...

 前段では内閣府が提供している「南海トラフ地震臨時情報」が出されたときの対応例を紹介しました。 繰り返しになりますが、もう一度書きます。“「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」が発表された場合は、日頃からの地震への備えの再確認に加え、地震が発生したらすぐに避難できる準備をする必要があります。 特に地震発生後の避難では間に合わない可能性のある人は1週間の事前避難を推奨しています。「南海トラフ地震...

 今回の「南海トラフ地震臨時情報『巨大地震注意』」情報とともに、「M7クラスの地震が発生した後1週間はM8クラス以上の大規模地震が発生する可能性が“相対的に高い”ので注意して下さい」という呼びかけがありました。 この“相対的に高い”ということ、まずお分かりにならないと思います。 具体的にはこういうことです。 1904年~2014年の111年間に世界で起こった地震のうち、M7以上の地震が発生してから...

 「南海トラフ地震臨時情報」のことを、第六十七~七十一段に書きましたが、それには理由があります。 2022年1月22日(土)の深夜、日向灘で地震がありました。 その時の地震のマグニチュードは6.6(以下、M)、結局「南海トラフ地震臨時情報」は出されませんでした。 もしMが6.8以上であったら、この時出されていたのです。 微妙な大きさだったのです。 なぜ6.8以上かというと、本来ならばM7以上で情報...

 前回まで東京都の被害想定のことを、それもかなり悲観的なことを書いてきました。 それに対して東京都がどのような対策を立てているか、をこれから書こうとしていた矢先、8月8日に日向灘で気象庁マグニチュード7.1 の地震が発生し、初めて「南海トラフ地震臨時情報『巨大地震注意』」が出されました。 多分ほとんどの人が初めて聞かれたのではないでしょうか。 テレビのニュースを見て、私に電話をかけてきた人がいます...

 先週、東京都の被害想定で死者が6,148人、これは少なすぎるのではないかということを書きました。 また、負傷者が9万人以上、避難者が最大約300万人、帰宅困難者も450万人以上。 エレベータの閉じ込め22,000台以上。また自力脱出困難者が3万人以上。 これらの人達は無事で済むのでしょうか、ということも書きました。 表はライフラインの被害想定結果です。 %で書いてあるので、分かりにくいのですが、...

 第191段で、首都直下地震(都心南部直下地震)が冬の深夜に起こった場合、人的被害、すなわち死者が約23,000人、負傷者が約113,000人という結果が国から発表されているということを書きました。 これと同じ時期に東京都も独自に地震被害想定を行っています。 約10年前のことでした。 それから10年、東京都はその後建物の耐震化や街の不燃化などが進んだ、その一方で高齢化が進んだなどの理由から、一昨年...

 現役中は月に2~3回、今でも月に1回程度東京へ出張しています。 東京へ出張すると、確かにいろいろと刺激は受けますが、住みたい、働きたいとは思いません。 首都直下地震のリスクもありますが、他の理由もあります。 その一つが「可処分所得」。 一見東京の方が給料は高そうですが(実際、額面は高いのですが)、山口県の方が自由に使える金額は多いのです。 地域連携担当の副学長を務めたときに、生活に必要な経費を計...

 首都直下地震に話題を戻します。 第百八十八段では最近関東地方でマグニチュード(以下M)5、M6クラスの地震が頻発していることを書きました。 そして私は東京へはサッと行ってサッと帰るということも。 よく関東の人は地震に慣れている、ということを聞きます。 私たちが驚くような地震でも、平気な顔をしている、とも。 確かにこれだけ地震が起こっていると、いちいち驚いてはられないのかもしれません。 しかしそこ...

 6月30日(日)の昼過ぎに予定されていたHⅢロケットの打ち上げは、悪天候のため翌7月1日に延期された。 その7月1日、ドキドキしながら打ち上げの時を待った。 12時過ぎ、白色に輝く炎を噴射しながらHⅢロケット3号機は徐々に宇宙に向かって加速。 やがて雲のかなたに消えて行った。 打ち上げ成功の瞬間だった。(図-1) 昨年3月、HⅢロケット1号機に搭載されていた地球観測衛星「だいち3号」はHⅢロケッ...

 先週、「だいち2号」の観測幅が50㎞に対して、「だいち4号」の観測幅は200㎞ということを書きました。 図は九州を例にその違いを示したものです。 観測幅が200㎞になると九州はほぼ1回の周回軌道(パス)で観測できることが分かります。 もし山口県に大きな災害が起こった時に県全域を観測するには、「だいち2号」では4~5回のパスで観測する必要がありましたが、「だいち4号」では1回のパスでほぼ県全域をカ...

 図-1は1995年以降、関東地方で起こったマグニチュード(以下M)5以上の地震です。 M5クラスの地震が13回、M6クラスの地震が21回、M7クラスの地震が1回(2008年5月8日)起こっています。 ただし、2011年3月11日~2012年3月末の間の地震は入れていません。 厳密に分離はできませんが、東日本大震災の余震と考えられるからです。 それにしてもたくさん地震が発生していることがお分かり頂...

 山口県地震・津波防止対策検討委員会の第1回委員会が4月22日に開かれました。 それを契機に、これまで被害想定とその対策、そして山口県は南海トラフ巨大地震に対して死傷者をゼロにできることを書いてきました。 その前提となっているのは、約10年前の地震・津波被害想定結果です。 これから3年にわたって被害想定の見直しをしますが、震度、津波の襲って来る時間や高さはそんなに変わらないと思います。 大きな変化...

 地震によって死傷者が出る原因は、①建物の倒壊(室内の家具や什器類の移動や転倒も含む)、②土砂災害、③火災、④津波、⑤その他(屋外のブロック塀や自動販売機の転倒、ビルの割れたガラスや看板の落下など)ということは前回書きました。 そして④の津波による死傷者をゼロにできることは既に説明、緊急地震速報が出されて強い揺れが来るまで40~50秒時間があることも書きました。 まず①ですが、図は宇部市周辺の震度...

 前回まで、津波による死傷者はゼロにできるということを書きました。 今回から津波以外の原因による死傷者をゼロにできる事を書きます。 南海トラフ巨大地震による人的被害の内容を第183段で示しました。 再度その表を示します。 この表より、④の津波以外で死傷者の出る原因は、①建物の倒壊(屋内収容物移動・転倒)、②土砂災害、③火災、⑤その他、となっています。 ①の屋内収容物移動・転倒というのは家具や什器類...

 地震が起こって、みんながすぐに避難すれば、犠牲者はゼロにできる、と先週書きました。 ただ読者の中には、津波が地震後すぐに来たら逃げる暇がないのではないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。 また、津波からの避難は、車の渋滞があるから歩いて避難しましょう、と言われています。 では寝たきりの人や足の不自由な人、赤ちゃんなど、自分で歩いて避難できない人はどうすればいいのか、と思われるでしょう。...

 これまで説明してきたような様々な前提条件や仮定(それも大胆な)を使って、南海トラフの巨大地震による人的被害を求めたところ、最悪のケース、死者614人、負傷者1477人という結果になりました。 これは前回(平成26年)の被害想定の結果で、マスコミにも「死者614人」と大きく取り上げられました。 しかし、これまでこのシリーズを読んでこられた皆さんは、これらの数字は本当に信用できるのか?と思われるでし...

 先週は様々な仮定(それも大胆な)を使って、震度分布を求める所まで説明しました。 震度分布が求まると、次にこの震度を用いて各地の被害を求めます。 例えば、図-1は、過去の震災調査を基に求められた計測震度と木造家屋の全壊率の関係です。 図には3本の曲線が描かれています。 ①旧築年、②中築年、③新築年の3本です。 ①旧築年は1961年以前に、②中築年は1962年~1981年の間に、③新築年は1982年...

 大胆な仮定のもとに震源となる断層を決めます、先週このことを書きました。 次は断層が破壊する(ずれる)ことによって地震波が発生しますが、これも大胆な仮定のもとに計算します。 図-1は簡単にその方法を説明したものです。まず大きな断層を小さなメッシュに分割します(図-1の右)。そしてある小さなメッシュから破壊が始まったとして(震源を仮定して)、その地震波を決めます。 この地震波の決め方は、理論的に決め...

 東日本大震災までは東海、東南海、南海地震と別々に考えていた地震を、南海トラフ巨大地震一つとして想定することが国の方針として決まりました。 そのために第4回目の被害想定を行うことになったことまで先週書きました。 図は、その東海、東南海、南海地震と、南海トラフ巨大地震の震源を比較して示したものです。 マグニチュード(以下M)は東海、東南海、南海地震がM=8~8.5でした。 これに対して南海トラフ巨大...

 先週22日(月曜日)午後、県庁で第1回山口県地震・津波防災対策検討委員会が開かれました。 テレビのニュースでも放映されたので、ご存じの方も多いと思います。 この検討委員会は、国が南海トラフ巨大地震の見直しをしていることにあわせて、また能登半島地震での教訓を山口県の地震防災対策に活かすことを目的に、防災・減災対策の検討、地震・津波被害想定の見直しを行うために設置されました。 山口県はこれまで4回地...

 現在私は三重県の志摩市に来ていますが、17日深夜11時14分、宇和島市沖の豊後水道を震源とするM6.6の大きな地震が起こったというニュースが飛び込んできました。 愛媛県と高知県で震度6弱の強い揺れを観測、山口県の東部でも震度4を各地で観測した、ということです。 18日朝5時の時点では、この地震によって愛媛県で5人、大分県で2人の合計7人がけがをしているとのこと、また高知県、愛媛県では土砂崩れ、水...

 4月3日に台湾東部で大きな地震が発生、死者は10人を超え、まだ不明者もいるとのことです。 台湾は、東南東から進んできたフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込み、その潜り込んだプレートの上のユーラシアプレートの端に形作られています。 すなわち西日本と同じよにプレート同士がぶつかり合って、その上に形作られているという環境にあります。 したがって、台湾も西日本と同様、フィリピン海プレート...

 この原稿を書こうと思っていた今朝のこと、台湾で大きな地震がありました。 環太平洋造山帯、太平洋沿岸をぐるっと囲んでいる地震や火山の帯ですが、最近非常に活発な気がしています。 東日本大震災もそうですし、今回の台湾の地震もその一環と考えられます。 相当エネルギーがたまっていると考えられます。 その意味でも南海トラフの巨大地震が着実に近づいているように感じられます。 さて、その南海トラフの巨大地震によ...

 先週示した宇部港と丸尾港の津波の時刻歴を図の左側に示します。 この図で注意が必要なのが、水位がT.P.ということです。 このT.P.というのは東京湾の平均海面高さ(Tokyo Peil)で、標高でもあります。 グラフをよく見ると、時間0分(地震が起こった時)の水位は0mではなく、2m弱となっています。 そしてそのままずっと満潮が続いている状態で、津波がやって来て海面が上下に変化している様子を示し...

 これまで揺れに対する備えについて書いてきました。 その前提となっているのは平成26年3月に県から公表された地震・津波被害想定結果です。 実は、現在国が南海トラフ巨大地震の被害想定の見直しを行っています。 国の「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」(平成26年3月28日中央防災会議決定)から10年が経ち、建築物の耐震化、津波防波堤や護岸など、揺れや津波に対するハード対策が進んだこと、その一方で高齢...

 南海トラフ巨大地震の場合、緊急地震速報が出されて強い揺れが来るまで、数十秒の時間があることを先週書きました。 南海トラフ巨大地震の強い揺れは3分以上続くことが予想されますから、とにかくその強くて長い揺れが来る前に身の安全を確保することが大事です。 起きているときは何とか対応できると思いますが、ぐっすり寝ているときに地震が起こると避難が間に合わないこともあり得ます。 ですから寝室には家具などできる...

 南海トラフ巨大地震が起こっても、幸い山口県は緊急地震速報が出されて強い揺れが来るまでに数十秒の時間的余裕があります。 その間に身の安全を確保すればいいということになりますが、どれくらい時間があるのでしょうか? 図-1はその例を説明したものです。 ここでは震源が山口県に非常に近いところであった場合を考えています。 地震は断層全てが同時に破壊するのではなく、ある一点から始まります。 その一点を震源と...

 先週の防災徒然日記を読んで、宇部日報に問い合わせがあったということです。 その問合せとは、「新耐震」が本文では“1986年以後”とあるが、図‐1には“1981年6月~”とある。どちらが正しいのか?というものです。(web上では記事を修正済みです。) この話を聞いて私は嬉しくなりました。 図-1の新耐震の年の字は本当に小さいのです。 そこまで読んで頂いたのか、と感謝の気持ちが起こりました。 まずご...

 先週、南海トラフの巨大地震が冬の深夜に起こると、山口県全体で家屋の倒壊等で死者37人、負傷者約1,350人が出るという想定結果になっていると書きました。 課題はこれをどうすればゼロにできるかです。 まずは生活している自宅、あるいは勤務先の建物に耐震性があるかどうかを調べる必要があります。 木造家屋は2000年以降に建てられたものであれば、よほどメンテナンスが悪くない限りまず大丈夫です。 その一方...

 先週、南海トラフの巨大地震が起こっても、これからしっかりと準備をすれば、物が壊れることはあっても、山口県は死傷者をゼロにできると書きました。 これから具体的にそのことを書きますが、これまでにこの防災徒然日記で書いてきたことと重複するところもあることはご了承ください。 図は南海トラフの巨大地震、マグニチュード9の地震が山口県にとって一番不利な状況で(震源が四国沖で山口県に近いところで)起ったときの...

 能登半島地震被害の状況は2月6日現在、死者240人、うち災害関連死15人、不明者11人、避難者1万3886人、うち2次避難所に避難している人は5248人、住宅家屋の被害は5万5千棟超となっています。 ライフライン関係は少しずつ復旧はしていますが、いまだに断水はおよそ3万7700戸、停電はおよそ1700戸。 道路は68区間で通行止めとなっています(NHKおよび内閣府)。 厳しい寒さの中での避難生活...

 相変わらず寒い日が続いています。 能登半島地震被害の概略は1月29日現在表‐1の通りです。 多分これを皆さんが読まれる頃は、残念ながら犠牲者の数は増えていることでしょう。 不明者、そして災害関連死の人が出てくるからです。 避難者の方が1万4千人強、そのうち暖かい旅館やホテルで避難している2次避難の方は4千人弱、ということはいまだに体育館などの避難所や被災した自宅で避難生活を送っている人が約1万人...

 日本列島は22日からこの冬一番の寒気が流れ込み、各地で大雪が降っています。 宇部も積雪し、JR宇部線も24日は一時運行を見合わせました。 新幹線も雪の影響で遅れが出て、関ヶ原を通る「のぞみ」は約30分の遅れ。 24日、広島に出張しましたが、幸い「のぞみ」以外の新幹線は数分の遅れで、私は影響をほとんど受けないで済みました。 さて、内閣府の「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」(1月24日...

 この原稿を書いている1月17日は、阪神・淡路大震災から29年目の日になります。 私は大阪でその日の朝早く、非常に強い揺れで目を覚ましました。 日米都市防災会議の初日、「次の地震に備えて」という国際シンポジウムを行う、まさにその日の朝に地震が襲ってきたのです。 私は他の幹事の先生方と会場に残って、被害の様子をテレビで見ていました。 翌日新聞社の車で神戸へ向かいましたが、すでに大渋滞で、西宮まで行く...

 連日寒い中、懸命の救助作業、救援活動が行われています。 1月1日の地震から10日が経過しました(この原稿は10日に書いています)。 先週(4日)の時点では73名だった犠牲者の数は206人に増え、安否不明者も52名と報道されています(NHKニュース)。 このままいけば、残念ながら犠牲者の数は250人を超えるおそれがあります。 さらには、25,700人を超える人たちが多くの避難所で厳しい生活を送って...

  元日、二日と新年早々衝撃的な映像が飛び込みました。 元日16時過ぎ、サッカー日本代表の強化試合が快勝に終わって、そのままテレビを見ていましたら、能登半島の地震のニュースが入り、画面の中で揺れによって手前の家の瓦がずれ、遠くでは家が倒壊したのか、砂煙がもうもうと立ち上がりました。 16時10分、とどめを刺すかのようにM7.6の地震。 石川県志賀町で震度7が観測。 また津波警報も出されました。 津...

 関東大震災を契機に大きな変化がたくさんあったと思いますが、その中から防災に関することを2点。 その1。 構造物の耐震設計が本格的に始まりました。 関東大震災の起こった大正末期は、旧来からの木造家屋(民家が主)、また文明開化といわれて西洋式建物の典型としてのレンガ造りのビル、さらには自身の経験のない外国の建設会社が建設した高層ビル、日本の研究者が独自に考案して耐震性を考慮したビルなど、さまざまな建...

 今回は関東大震災がいかに我が国にとって大変な出来事だったかを経済的な面から書きます。 表は令和5年版防災白書にある、関東大震災、阪神・淡路大震災、東日本大震災の被害の比較表に多少追加して作成したものです。 少し専門的になりますが、東日本大震災だけ地震規模が「モーメントマグニチュード」となっています。 単にマグニチュードとあるのは「気象庁マグニチュード」のことで、これは地震記録の振幅から求められま...

 関東大震災では、大規模な火災、社会インフラの壊滅、さらには情報の遮断でデマなど社会の混乱が発生、結果として10万5千人もの多くの人の命が奪われました。 実は、関東大震災の発生を予測し、備えるように警鐘を鳴らした人がいます。 当時東京帝国大学地震学教室の今村明恒助教授です(写真-1)。 今村助教授は、過去に江戸で起こった被害地震を詳細に研究して、1905 年(明治38 年)に雑誌「太陽」9月号に次...

 関東大震災では、電柱が倒れ、電線が切れ、電話や電報の通信手段がほとんど寸断しました。 このため被災地からの正確な情報が全く入らず、被災者や避難者の安否確認が非常に困難となりました。 当然ながら、政府や行政の対応もほとんどできず、初動対応の不備や組織の混乱があり、通信だけでなく道路、鉄道などの交通インフラも壊滅的な状況で、被災地域に十分な人的、物的な支援が届きませんでした。 すなわち被災者への食料...

 関東大震災では、ちょうど今から5年前に起こった北海道胆振東部地震と同様に、東京都、神奈川県、千葉県、山梨県、静岡県の山沿いの非常に多くの場所で斜面崩壊などの土砂災害が発生しました。 特筆すべき災害の例としては、神奈川県小田原市白糸川で起こった斜面崩壊が山津波(岩屑流)となって、小田原市根府川沿い集落の123戸中64戸を埋没させ、300人を超える犠牲者を出したものです。 この山津波は約6kmを5分...

 今週は「関東大震災」の被害について述べたいと思います。 表は各県ごとの死者行方不明者をまとめたものです。 この論文の著者の一人である武村雅之氏は、私と同年代(ほんの少し私より年下)で、研究分野も近かったので、学会などでよく一緒に話をしたり、飲んだりしました。 彼のライフワークが関東大震災で、非常に多くの素晴らしい研究成果を残しています。 昔の理科年表には、関東大震災の死者不明者は約14万人と記載...

 今年2023年は、1923年9月1日に起こった関東地震から100年になります。 地震の名前を「関東地震」、それによる災害の名前を「関東大震災」といいます。 さて、関東大震災から100年ということで、報道機関で様々な特集が行われ、次の南海トラフの巨大地震や首都直下地震に対する注意の喚起もなされました。 ここでは報道機関ではあまり取り上げられなかったことを紹介したいと思います。 図‐1に関東地震の震...

 先週は高さ1mの津波が、地震発生後10分以内に到達する地域は、断層の破壊開始場所や、大きく断層がすべる場所が変わってもほとんど変わらない、ということを書きました。 そしてそれらの場所は、東から「静岡県の駿河湾沿岸」、「静岡県の御前崎から和歌山県の日の岬沿岸」、「高知県室戸岬沿岸」、そして「高知県足摺岬沿岸」です。 被害想定では3mの津波の到達時間、5mの津波の到達時間、10mの津波の到達時間も求...

 先週、先々週は、国の南海トラフ巨大地震による津波想定結果(平成24年発表)で、どこにどれくらいの高さの津波が押し寄せるか、そして、黒潮町の34.4mばかりがクローズアップされたが、実は太平洋沿岸の各地で、20m、30mを超える津波が押し寄せる可能性のあることが想定されている、ということを書きました。 津波による被害に関しては、津波の高さとともに、地震発生後、どれくらいの時間で津波が押し寄せるか、...

 先週は、国の南海トラフ巨大地震による津波想定結果(平成24年発表)のうち、日本中に大きな衝撃を与えた、高知県の黒潮町で34.4mの津波高さのことを書きました。 被害想定では、南海トラフ巨大地震の断層の、どこで大きな滑りが起こるか、合計11ケースの想定が行なわれています。 断層面での滑りが大きいということは、それだけ海底の上下方向の動きが大きく、それに伴って海水面の上下方向の変化も大きいということ...

 国の南海トラフ巨大地震による津波想定結果(平成24年発表)は日本中に大きな衝撃を与えました。 死者最大32万人、その死因の多くは津波でした。 その津波の高さは、高知県の黒潮町で34.4m、他にも20mを超えるところが四国にはたくさんありました。 東日本大震災の時の津波の遡上高が最も高いところで約40mでした。 この津波の遡上高というのは、津波が陸上を駆け登っていく高さ(標高)です。 過去の例です...

 先週はパニック映画「ポセイドン・アドベンチャー」には、津波に関して大きな間違いがあることを書きました。 映画では津波が壁のようになって迫ってきましたが、そのようなことが起こるのは海岸近くでのこと。 津波の伝わる速さは非常に簡単な式で表されます。 中学校で平方根(√)を習ったら、すぐに計算できます。 津波の伝わる速さ=√ghという式です。 ここにgは重力の加速度で、9.8m/s2、hは水深(m)で...

 先々週、モロッコの地震について、そしてあわせて地中海の地震について少し触れました。 地中海周辺はユーラシアプレートとアフリカプレートがぶつかり合って、地震が多発するところですと。 地中海の地震で思い起こすのが、まだ私が20代のころ観た、「ポセイドン・アドベンチャー」という映画のことです。 この映画は豪華客船「ポセイドン号」が、地中海で大津波に襲われ転覆するという、当時はやりのパニック映画です。 ...

 連続テレビ小説「らんまん」、念願の植物図鑑の発行が神戸の若き資産家によって実現しようとしたまさにその直前、関東大震災が起こりました。 万太郎と寿恵子たちは倒壊した長屋から持てるだけの標本を持って必死の避難をします。 東京中が火災によって人々が逃げまどう中、万太郎の植物誌の印刷を助けるだけでなく仲人も務めてくれ大いに万太郎一家を支えてくれている大畑印刷所の大将が敢然と火に向かって消火を始めようとす...

 日本時間の9月9日 (土)午前7時11分頃、アフリカ北部のモロッコでマグニチュード6.8の地震がありました。  震央はモロッコ中部ハウズ州の山岳地帯で(図-1の円の場所)、震央近くでは日本の気象庁震度階6弱に相当する強い揺れが襲ったようです。 この地震で、これまでに約2900人が死亡、約2600人がけがをしたとの報道がありますが、この数は残念ながらさらに増えるでしょう。 今回の地震でこのように人...

 私はあまりテレビドラマは見ないのですが、二つだけは必ず見ています。 出張などで見れないときは録画をして、帰ってから見ています。 一つはNHKの朝ドラの「らんまん」。 植物学者牧野富太郎をモデルにした牧野万太郎の波乱に満ちた人生、やさしさで周りの人を笑顔にし、しかも毅然と自分の意志を通す生きかた。 毎朝のように感動し、元気をもらっています。 もう一つはNHK大河ドラマ「どうする家康」。 だいぶ脚色...

 先週の9月1日は1923年9月1日に起きた関東地震からちょうど100年目の日でした。 これを記念して、マスコミ等でも改めて関東大震災(地震の名前が「関東地震」、それに伴う震災が「関東大震災」です)が大きく取り上げられました。 そしてこれから起こる首都直下地震、南海トラフの巨大地震に対する備えなども報道されました。 この関東大震災、よく話題に出るのが、被服廠跡の大惨事で、避難してきたところに火災旋...

 今週は宇部市デジタルハザードマップの3次元表示をスマホで見る方法を。 図-1は3次元マップに土砂災害のハザードマップを重ねた図です。 この図を表示するには、まず左の帯の中の『3Dマップ』のボタンをクリックします。 パソコンではマウスを上下に動かすと見える角度が変わりましたが、スマホでは指2本を使います。 指2本(多くの人は人差し指と中指でしょうね)を横に並べて、上下に動かします。 上に動かすと低...

 宇部市デジタルハザードマップはスマホでも見ることができます。 スマホですといつでもどこでも手軽に使えて、慣れるとむしろこちらの方がよく使われるかもしれません。 ただ画面が小さいので、その辺は少し不便かも知れませんが。 図-1はスマホでデジタルハザードマップを見たときの最初の画面です。 パソコンの画面と比べるとボタンの配置が違います。 各種ハザードマップのボタンは画面左手の帯(おび)の中にあります...

 今回は宇部市デジタルハザードマップの3次元表示について説明します。 図-1は宇部駅およびその北方を示したものです。 左図は土砂災害のハザードマップを3次元の地形図の上に重ねたもの、右図はそれに厚東川の洪水ハザードマップを重ねたものです。 図の上部にはスカイライン(山の輪郭線)を見ることができ、地表面の凹凸が分かります。 土砂災害警戒区域(イエローゾーンやレッドゾーン)がどんな地形のところにあるか...

 図は宇部市デジタルハザードマップのハザードマップを重ねた画面の例です。 内容の説明は最後にまわし、まずは基本的な操作を説明します。 画面の左上隅に「宇部市デジタルハザードマップ」という文字があり、その下にたくさんの四角の枠が並んでいます。 この四角の枠のうち、押す(クリックする)と画面が変わるものをここでは“ボタン”と呼び、『 』で表します。 単なる表示は「 」で表します。 まず『3Dマップ』ボ...

 今年の梅雨明け、16日の週に「中国地方、近畿地方、東海地方は梅雨が明けたとみられます…」というニュースがあったその日の夕方のNHK山口の番組では、「梅雨明けは来週になるでしょう」と言う天気予報。 「え、山口県は中国地方ではないの?」と不思議に思いました。 そして25日、気象庁は「九州北部 (山口県を含む)が梅雨明けしたとみられる」と発表しました。 ふーん、山口県は北九州の一部なんだ(少なくとも気...

 6月下旬から7月上旬にかけては九州・山口で、7月上旬からは秋田県を中心に東北地方で線線状降水帯が次々に現れ、大きな災害が生じています(図)。 先日の報道では、今年になってすでに45回も線状降水帯が発生したとのことです。 今日(19日)鵜の島小学校で、4、5、6年生の児童約70人に対して防災授業を防災ネットワークうべが行ったのですが、そのとき「線状降水帯」を知っているかとの問に、ほとんどの児童が「...

 現在(7月12日)私はフィリピンのマニラに出張しています。 マニラは今雨期です。 ただ雨季といっても日本の梅雨のように雨が降り続くのではなく、一日の大半は晴れていて、夕方から夜にかけて激しい雨が降る、というそんな日々です。 ここ数日、日本は、特に九州・山口は連日大雨で、被害も相当出ているということで、大変心配しています。 実は、マニラのホテルのテレビでNHKのニュースを見ようとしたのですが、BB...

 6月30日から7月1日にかけて、大変な雨が九州そして山口県内に降りました。 宇部市からは何度も「警戒レベル3高齢者等避難」、「警戒レベル4避難指示」などの警戒情報が出されました。 大きな音で深夜にも出され、それだけ状況が切迫していた、ということです。 県のホームページ「防災やまぐち」の「被害状況一覧」を見ますと、7月5日19時現在、表に示すような被害が出ています。 残念ながら死者1人(山口市)、...

 高潮ハザードマップをどのように使うか、先週に続いて今週も具体的に説明します。 地震と違って、風水害は天気予報などの情報をきちんと入手していれば事前に予測可能です。 特に高潮は台風によって引き起こされますから、数日前から注意をすることができます。 そこで今週は情報の入手方法について。 高潮ハザードマップの冊子の7ページには、宇部市から、あるいはインターネット・報道機関等からの情報の入手先が分かりや...

 高潮ハザードマップをどのように使うか、今週と来週で具体的に説明します。 図は高潮ハザードマップの冊子の3ページの上半分の「あなたがとるべき避難行動」のところの図です。 図には以下の説明のために番号①~⑦を付けました。①【自宅やよく行く場所は、ハザードマップで色が塗られていますか?(災害の危険はありますか?)】 ここで、よく行く場所とは、学校や勤務先など、多くの時間を過ごす場所です。 この質問に「...

 先週は、宇部市がかつて高潮で大きな被害を受けた2つの台風による被害を比較してみました。 その2つの台風とは、昭和17(1942)年の周防灘台風と平成11(1999)年の台風18号です。 周防灘台風の気圧が950hPa、台風18号のそれが960hPaですから、今回想定している台風の気圧が910hPaということは、気圧の低下だけでも海面が40~50㎝高くなり(1hPaの気圧低下で約1㎝海面が上昇しま...

 先週は、今年4月市から各家庭に配られた高潮ハザードマップについて、平成21年に配布された前回の高潮ハザードマップとの違いについて説明しました。 想定した台風の中心気圧は前回が935hPa、今回が910hPaです。 これらの台風がどれくらい強烈なのか、宇部市がかつて大きな被害を受けた2つの台風と比較してみましょう。 その2つの台風とは、昭和17(1942)年の周防灘台風と平成11(1999)年の台...

 4月になって市から「宇部市高潮ハザードマップ」が各家庭に配られました。 そしてその説明会も5月に西岐波ふれあいセンター、厚南市民センター、総合福祉会館の3か所で行われました。 市から今回ハザードマップが改訂された背景、そしてその内容などの紹介があった後、私からも今回のハザードマップの前提条件、使い方など少し詳しく説明させていただきました。 今年も早くも非常に強い台風2号が日本に接近中です。 台風...

 引き続きゴールデンウィーク中の6、7日の大雨が降った時の「気象庁、キキクル」を見ていきます。 実は土砂災害のことが非常に気になっていました。 というのは、その直前の5日午後2時半ころ能登半島で地震が起こり、半島先端の珠洲(すず)市では震度6強が観測されていたからです。 図-1はキキクルを開いた時のページで、ここの『土砂災害警戒情報』をクリックしたときの画面が図-2の『土砂キキクル』です。 この図...

 引き続きゴールデンウィーク中の6、7日の大雨が降った時の「気象庁、キキクル」を見ていきます。 図-1は先週も使った図で、先週は『今後の雨』をクリックしましたが、今週は『大雨警報』をクリックしてみます。 そうすると「浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)」の画面が現れます。 そこには以下の様な説明があります。「浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)」は、短時間強雨による浸水害発生の...

 大雨や台風が近づいているとき、気象庁のキキクルを見て、積極的に情報の収集をして、早め、早めの準備を、ということを先週書きました。 インターネットで、「気象庁、キキクル」などのキーワードを入力して検索をすると、図-1に示す画面が出てきます。 「今後の雨」、「大雨警報」、などのキーワードが並んでいます。 これらのキーワードをクリックするとそれぞれの最新の情報を見ることができます。 気象関係は基本的に...

 ここしばらく、地震に関することを書いてきましたが、もうしばらくすると梅雨入りし、また早ければ台風もやって来るシーズンになります。 そこでこれからは風水害への備えについて書こうと思います。 地震と風水害の大きな違いは、地震は突然やって来るのに対して、豪雨や台風は事前に迫っていることを知ることができます。 物の被害は避けられないことがありますが、人的被害、すなわちケガをしない、ましてや命を落とさない...

 先週は日本建築学会が、熊本県地震で被害の大きかった益城町周辺の全家屋の被害状況を調査した結果、以下のことが分かったことを紹介しました。①1981年の耐震設計基準の改定前に建てられた木造家屋、いわゆる「旧耐震」で建てられた木造家屋の「倒壊、崩壊」率は28.2%と非常に高かった。②1982年以降、改定後の新耐震設計基準(「新耐震」)で建てられた木造家屋のうち、2000年前に建てられた家屋の「倒壊、崩...

 今から7年前の2016年(平成28年)4月14日、その2日後の4月16日、熊本県で2回も震度7の地震が起こり、地下を活断層が走っている益城町を中心に大きな被害が生じました。 日本建築学会はこの益城町周辺の全家屋の被害状況を調査しました。 その被害調査結果を、国土技術政策総合研究所に設置された「建築構造基準委員会」と建築研究所に設置された「建築研究所熊本地震建築物被害調査検討委員会」(長い名前です...

 シリアとの国境近くで起こった地震の被害がなぜあのように大きくなったか、その理由として、①世界最大級の内陸直下地震で、地震の揺れが非常に強かった、②建築物が脆弱であった、そして③トルコとシリアの国境付近は政治的、民族的な複雑性を抱えており、これが迅速で安全な救助・救援活動を困難にした、ということを書きました。 この震災は日本から遠く離れたところで起こった災害ですが、日本にも大きな教訓があります。 ...

 シリアとの国境に近いトルコの東部での地震、大災害になった一つ目の理由が強烈な地震の揺れであったということ、二つ目の理由が建物が脆かったということ、これらについて先々週、先週書きました。 そして今回は三つ目の理由を書きます。 図はトルコとシリアの国境付近の現状ですが、ここは世界でも有数の政治的、民族的な複雑さを持つ地域です。 まずシリアですが、ご存じのように、アサド政権が非常に独裁的な政治を行って...

 シリアとの国境に近いトルコの東部での地震、大災害になった理由の一つが強烈な地震動だったということは先週書きました。 大災害になった大きな理由は他にも最低二つはあります。 その一つ、それは建物が脆かったということです。 テレビの画面に倒壊したビルが大写しになりました。 鉄筋が細くて、しかも量が非常に少ないことに多くの人が気づかれたと思います。 また壁や柱がレンガを積んで出来ていることも建物を脆くし...

 先月2月6日、シリアとの国境に近いトルコの東部で地震がおこり、大災害になりました。 その時の最初のM7.8の地震のエネルギーは、わが国で起こった熊本地震の約16倍、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の約22倍という非常に大きなものであった、ということは先週書きました。 図-1は今回のトルコの地震と、わが国で起こった地震で記録された速度と加速度を比較したものです。 図中、〇が今回のトルコの地震、□...

 先月2月6日、シリアとの国境に近いトルコの東部でマグニチュード(M)7.8の大きな地震がおこり、その9時間後にもM7.5の地震が発生、その後M6程度の余震が続きました。 ビルが完全にぺっしゃんこになる、いわゆるパンケーキクラッシュした多くのビルの、衝撃的な映像がニュース等で流されました。 犠牲者は、トルコ、シリアあわせて約52,000人にも上るといわれています。 これから数回、今回のトルコの地震...

 鈍感力を強みとし、72年も生きていると、少々のことでは驚かなく、またショックも受けなくなるのですが、この度だけは大きなショックを受けました。 3月7日、JAXAのH3ロケットの打ち上げ失敗です。 H3ロケットは、JAXAのこれまでのH-Ⅱロケットをさらにパワーアップし、経済性も追求した、日本のこれからの宇宙開発になくてはならないロケットなのです。 ですからその打ち上げ失敗は関係者に大きなショック...

 緊急地震速報が出されて、被害をもたらす強い揺れのS波が宇部に来るまでに50秒近くの時間がある、そしてこの時間内に身を守る行動をとればいい、と先週書きました。 地震によってケガをしたり命を落としたりする理由は、大きく分けて3つです。 3つであれば、だいぶ物覚えが悪くなった私の同年輩の方でも、まず覚えられますよね。 その1、すでに書きましたが、津波。 海岸、あるいは河口付近にいて地震の揺れを感じて、...

 今週から、南海トラフの巨大地震による強くて長い揺れから身を守るには、緊急地震速報が非常に重要になる、と言うことを書きます。 まずは、簡単に緊急地震速報の原理の説明を。 地震波には、大別して速く伝わるP波(最初の、と言う意味の英語、PrimaryのP)とそれより少し遅く伝わるS波(2番目の、と言う意味の英語、SecondaryのS)があります。 P波の速度は秒速6~7㎞、S波の速度は秒速3.5~4...

 これまで津波に対して、死傷者がゼロにできるということを書いてきました。 これから数回にわたって、強くて長い揺れに対してどう備えるかについて書きます。 南海トラフの巨大地震が起こったときに、宇部市周辺で想定されている震度は、図-1に示す通りです。 市の広い範囲が「震度5弱」、空港周辺や西岐波、東岐波の川の河口付近の地盤の柔らかいところで「震度5強」、市の北部や霜降り山周辺、山陽小野田市との境界周辺...

 宇部市の津波ハザードマップのうち、広い範囲が浸水する可能性のある厚南平野、藤山地域を例にとって図に示します。 詳しく見たい人、他の地域を見たい人は是非宇部市のホームページへアクセスして直接見て下さい。 「宇部市津波ハザードマップ」と入力すれば津波ハザードマップの画面に行きます。 図を拡大して見ることもできます。 さて、この津波ハザードマップですが、以下の様な前提条件があります。①国が津波のシミュ...

 先週は、南海トラフ巨大地震が起こった時に山口県に到達する津波そのものの高さは1m前後であること、そして、高潮災害の多い山口県では高潮対策のために、これ以上の高さに堤防が整備されていること、したがって一見高さ的には津波の心配はいらないように思えるが、実はそうならないところが災害の難しいところがある、と言うことを書きました。 図は阪神・淡路大震災の時に神戸港で記録された地震記録(正確には加速度記録)...

 先週は南海トラフ巨大地震が起こったのち、どれくらいの時間で津波が襲って来るかについて説明しました。 そしてみんなで助け合って誰もが被災しない時間が十分にあることを説明しました。 今週は先週と同じ図を使って津波の高さについて説明します。 図は上から順に宇部港、小野田港、秋穂漁港における津波の想定時刻歴です。 宇部港のピークは地震発生後約6時間半後、ただし約4時間後にほぼ同じ高さの第一波が、小野田港...

 先週は宇部市、山陽小野田市、山口市の人的被害について紹介しました。 これら3市の死因は津波であること、そして地震の発生する季節や時間によって犠牲者の数がかわり、宇部市で13~29人、山陽小野田市で45~77人、山口市で21~23人と予測されていることを書きました。 今週からはこれらの数をゼロに出来ることを説明します。 まず先週示した犠牲者の数は、地震が起こってすぐ避難する人の割合が20%、しばら...

 今週は県による、南海トラフ巨大地震による地震・津波被害想定結果(平成26年3月公表)のうち、宇部市、山陽小野田市、山口市の人的被害について紹介します。 表-1は死者、表-2は負傷者の想定結果を原因別にまとめたものです。 表には比較のために県内で最も人的被害の多い岩国市の結果も示しました。 3段のうち、上段は冬の夕方6時。 暖房や夕食の準備などで最も火を使っている時間帯、また通勤などで多くの人が移...

 新年明けましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 昨年は10月から年末までの約3か月間にわたって、首都直下地震の被害想定について書きました。 ただ、それに対してどうしたらよいかという対策については、あまり書いていません。 脅しっぱなしでは無責任のそしりは免れませんので、そのことについてはいずれ書くことにして、新年になって、改めて直接私たちに関係がある南海トラフ巨大地震...

 首都直下地震、特にその中で被害が最大になると想定されている首都直下南部地震の被害想定に関するお話は、今週で一応終わりとしたいと思います。 図は首都直下南部地震の震源となる断層の位置と大きさ、および震度分布です。 地震のマグニチュードは7.3、ちょうど阪神・淡路大震災と同じマグニチュードです。 強い地震が揺れ続ける時間(継続時間と言います)は阪神・淡路大震災の時が約13秒。 一方、東京湾は地下の深...

 図は都心南部直下地震による焼失家屋数の分布を示したものです。 先週の図である全壊家屋数の分布とよく似ています。 高い分布をしまして入る所は木造家屋が多く、しかも密集しています。 地盤が柔らかいのでよく揺れる、したがって全壊家屋数も多いし、火災が発生しても消火活動が困難、したがって焼失家屋数も多い、ということになります。 火災発生件数は最も多いケースである冬の夕方、風速8m/秒で、915件、焼失家...

 都心南部直下地震が起こった時の被害について書いていますが、実はこの被害、東京都内どこも一様ということではなく、被害の大きい所とそうでない所があります。 そのことを知っているので、東京へ出張するときには、私はなるべく山手線の外に行かないようにしています。 仕事もだいたい山の手線の内側で済みますので。 基本は「すぐ宇部に帰る」ですが、仕事の関係で宿泊しなければならないときには、多少値段は高くなります...

 今週も引き続き「都心南部地震」による被害の話を書きます。 表‐1は先週も示しました人的被害ですが、先週に比べて要因を3つに簡単にしています。 この死者数は地震発生直後の数と思ってください。 自力脱出困難者は家屋の倒壊によって閉じ込められてしまう人のことです。 その数は冬の早朝がもっとも多く、約35,000人と想定されています。 このほか、避難者数が最大で約300万人(地震後4日~1週間)、帰宅困...

 今週も引き続き首都直下地震のうち、最も被害が大きいとされる「都心南部地震」による被害の話を書きます。 表-1は先週も掲載しました全壊・焼失家屋の数です。 表-2は人的被害、ここでは死者数を要因別(死因別)にまとめたものです。 この死者数は地震発生直後の数と思ってください。 この2つの表を見比べてください。 地震が起こると約8万2000戸の家が揺れや液状化で壊れるのに対して、大半の人が寝ている早朝...

 表は首都直下地震のうち、これまで対象としてきた最も被害が大きい「都心南部地震」による全壊・焼失家屋の数です。 ケースとして、「冬の早朝」:みんな寝ている時間帯、「冬の昼」:多くの人が仕事などで活動している時間帯、「冬の夕方」:多くの家庭が火を使っている時間帯です。 さて、この表を見て、皆さんどのような感想を持たれますか? 数字が大きいか少ないか、というよりも1の位まで、すなわち有効数字6桁まで求...

 この5月25日に東京都が公表した都の被害想定結果を再掲します。 被害想定には多くの前提条件と限界があるということを前回書きました。 私自身山口県の地震被害想定の委員長として、その時点での最新の研究成果、データを活用して想定精度を高めることに最善を尽くしました。 しかしながら、地震の発生(断層面上の一点で破壊が始まります)が想定した断層のどこから始まって(震源の位置)、破壊(断層のずれ)がどのよう...

 これまで3回にわたって、中央防災会議、首都直下地震対策検討ワーキンググループが公表した地震被害想定結果について説明してきました。 実は、この5月25日に東京都が都の被害想定を公表しています。 前者が東京都とその周辺を含む首都圏を対象としているのに対して、後者は東京都だけが対象です。 都は今回の公表にあたって、『東日本大震災を踏まえ、平成24(2012)年に「首都直下地震等による東京の被害想定」を...

 中央防災会議、首都直下地震対策検討ワーキンググループが公表した地震被害想定結果は、先週示したように大変な被害を想定しています。 最も大きい被害が「首都南部直下地震」ですが、その被害想定は建物の全壊戸数約24~61万戸、死者数5,000~23,000人、閉じ込められるなどして救助を要する人54,000~72,000人、さらには帰宅困難者640~800万人、避難者約720万人となっています。 100...

 関東周辺は図-1に示すように、東から太平洋プレートが年間約8~10㎝のスピードで日本海溝、伊豆・小笠原海溝から北米プレート、フィリピン海プレートの下に潜り込んでいます。 また南からはフィリピン海プレートが年間約4~6㎝のスピードで相模トラフ、南海トラフから北米プレート、ユーラシアプレート(大陸プレート)の下に潜り込んでいます。 それに対して北米プレート、ユーラシアプレートががっしりと受け止めてい...

 先週お約束したとおり、これから数回にわたって、首都直下地震の被害想定について書きたいと思います。 その理由は首都直下地震が近づいているからです。 宇部空港から1時間半の遠い(近い?)首都圏のことで、宇部あたりに住んでいる私たちには関係のないこと、と思ってはいけません。 読者の皆さんの中には首都圏に家族の方が、親戚の方が、あるいは友人、知人がたくさんおられるとことと思います。 それだけではありませ...

 早いもので、この防災徒然日記の第1回を一昨年(2020年)年10月12日に書いて、今回で100回となります。 私が地震工学の研究者としての第一歩を踏み出した昭和51年のころは、我が国は地震の静穏期、風水害もあまりひどいものは無く、私が所属していた宇治にある京都大学防災研究所は割とのんびりしていて、同じ敷地内にある他の4研究所との間での野球のリーグ戦、研究室対抗のソフトボール大会、夏は水泳大会など...

 台風14号が過ぎ去った20日早朝、常盤公園の周遊園路を歩くと、強風で折れた木の枝や葉が路上に敷き詰められていました。 思わず清少納言の枕草子「野分(のわき)のまたの日こそ」を思い浮かべました。「野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。~略~大きなる木どもも倒れ、枝など吹きおられたるが、萩・女郎花(おみなえし)などの上によころばい伏せる、いと思わずなり。」 倒れた大きな木や萩・女郎花は見る...

 台風14号の被害はいかがでしたでしょうか? 台風14号は、18日19時頃に中心気圧935hPa、非常に強い勢力で鹿児島市付近に上陸し、その後19日午前中山口県を直撃する形で進みました。 宇部市防災危機管理課から「警戒レベル3、高齢者等避難」、「警戒レベル4、避難指示」の通報が何度も私のスマートフォンに入ってきました。 昨年秋から腰痛のため、朝起きて1時間ほど歩いています。 自宅から常盤公園まで約...

 台風11号の後、次々に台風が発生し、天気予報から目が離せない日が続いています。 図-1は15日朝の日本近海の天気図ですが、これを見ると台風14号が日本列島を直撃する可能性があります。 台風による被害は、強風による被害、高潮による被害、降雨による土砂災害などがあります。 図-2は過去宇部に大きな被害をもたらした台風です。 このうち①の昭和17年の「周防灘台風」、そして④の平成11年の台風18号は大...

 のんびりと50年前の札幌での思い出を書いている間に、大変な台風がやってきました。 台風11号です。 大型で強い台風、マスコミ、行政は厳重な注意を呼びかけました。 JR西日本も早々と6日の始発から博多~広島間の新幹線の運転取りやめを決定。 これには困りました。 と言うのは、6日早朝の新幹線で広島へ、そして広島空港から仙台へ飛ぶ予定でした。 広島の会社の人と一緒に、仙台にある建設系の会社を訪問、東日...

 札幌の北海道開発局での実験補助、毎日毎日石狩川の模型を使って洪水の実験をしていました。 写真-1は模型の横でのワンショットです。 セピア色が時代の流れを感じさせてくれます。 三日月湖という言葉がありますが、かつての石狩川の流域には三日月湖がたくさんありました。 石狩川が洪水のたびに流れを変えて、その名残として残っていたのですが、今は開発が進み、宅地等になっています。 これらのもと三日月湖を埋め立...

 引き続き札幌での話を。 この年1972年は冬季オリンピックが札幌で開催され、まだ街のいたるところにその余韻が残っていました。 尻もちをついても笑顔で演技を続け、見事銅メダルに輝いたフィギア・スケートのジャネット・リン。 愛くるしい笑顔のポスターが沢山ありました。 70m級で金、銀、銅を独占した笠谷選手をはじめとする日本ジャンプ陣の写真も。 朝起きると徒歩で中の島にある(あの中の島ブルースの舞台で...

 「線状降水帯」が次々に現れて東北、北海道地方に大雨を降らしています。 各地で大きな被害が出ています。 今は前線が南下し、ここ宇部も昨日から時々大粒の雨が降っています。 かつては、北海道にはこのようなひどい雨は降っていなかったのではないかと思います。 ふと、ちょうど50年前の夏休みを思い出しました。 当時大学3年生だった私は、今でいえばインターンシップ、当時の言葉では学外実習で、北海道でひと夏を過...

 「線状降水帯」の予測情報が、九州・山口に7月15、18日に相次いで発表されました。 気象庁が6月1日に予測情報を発表する運用を始めてから初のケースです。 15日午前10時半、山口を含む九州北部と南部に「15日夜から16日午前中にかけて線状降水帯が発生して、大雨災害の危険度が急激に高まる可能性がある」と発表しました。 が、結果的に線状降水帯は発生しませんでした。 一方、18日の午後4時46分、気象...

 この原稿を書いている8月3日、本当に暑い日でした。 広島に出張したのですが、あまりの暑さにボーっとしていて、バスに乗るところを路面電車に乗ってしまい、最寄りの駅から目的地まで歩道の猛烈な照り返しの中、結構な距離を歩くことになってしまいました。 宇部も暑かったですね。 そんな西日本の暑さとは対照的に、東北地方は大変な雨が降っていて、NHKのNEWS WEBを見ると、山形県に大雨特別警報が出され、「...

 観測史上最も早く梅雨が明けたかと思うと、再び梅雨のような天気が続き、ここ数日はかつての梅雨の末期のような豪雨が全国各地を襲い、被害が続出しています。 山口県にも先週「線状降水帯予測」が出され、最大限の注意が呼びかけられました。 「線状降水帯」という言葉は最近ではすっかりポピュラーになりましたが、線状降水帯の“予測”がこの6月1日から気象庁より出されることになりました。 これはすごいことと思います...

 家庭の防災計画、家庭継続計画(Home Continuity Plan: HCP)、について具体的に我が家を例に作成してみたいと思います。 プライバシーのこともありますので、これから書くことは全て我が家のことを正直に書いていないところがありますので、その辺はご了承下さい。 ただし、HCPの本質は外さないようにしています。 「A検討体制の確立」、「B被害想定」をまず記入して行きます。 以下にその考...

 いよいよ今週はHCP最後の「D訓練と点検」です。 正直にいいますと、このHCPシリーズ、読み返してもあまり面白くないんですね。 書いている本人がそうですから、多分読まれている方もあまり面白くないでしょう。 でもそうはいっても、南海トラフの巨大地震が近づいている、あるいは毎年のように“観測記録第1位”という冠のついた豪雨や、非常に大きく強い勢力の台風が過去のルートとは違うルートを通ってやって来る、...

 今週は「C.計画策定」の続き、「C-4重要な連絡先」、「C-5備蓄品」、「C-6災害対応」について。 以下、表を参考にして下さい。 「C-4-1災害発生直後に連絡すべき相手先一覧」は家族全員がそれぞれリストアップし、表を作成、共有します。 我が家は私の勤務関係、母の通っている介護施設、親戚、子供たちの家庭では、勤務関係の他に学校、幼稚園があります。 一応、我が家だけでなく子供たちの家庭の連絡先も...

 我が家の家庭継続計画(Home Continuity Plan: HCP)の策定を続けます。 先々週、先週で「A.検討体制の確立」、「B.被害想定」を終えました。 今週は「C.計画策定」のうち「C-1家族の安否確認方法」、「C-2費用のかからない対策」、「C-3避難所、避難場所」について。 以下、表を参考にして下さい。「C-1家族の安否確認方法」から。 家族の携帯電話番号、LINEを全員が共有し...

 我が家の家庭継続計画(Home Continuity Plan: HCP)の策定を続けます。「B-1-3建物の耐震性に関する状況把握」から。 私の家は建ててから28年経ちます。 軽量鉄骨の2階建てで、基礎そのものの耐震性を考え「べた基礎」に、そして基礎と柱の固定は特に注意しました。 地震や津波の被害で、基礎は残っていてもその上がすっかり壊れているということがよくあるからです。 建物は切土の上に。...

 家庭の防災計画、家庭継続計画(Home Continuity Plan: HCP)、今週から数回に分けて具体的に我が家を例に作成してみたいと思います。 プライバシーのこともありますので、これから書くことは全て我が家のことを正直に書いていないところがありますので、その辺はご了承下さい。 ただし、HCPの本質は外さないようにしています。 今週は先週紹介したHCP全体の表のうち「A検討体制の確立」、「...

 家庭の防災計画、家庭継続計画(Home Continuity Plan: HCP)の中身の例を表に示します。 これは中小企業庁、中国地方整備局、厚生労働省のホームページにあるBCPの書式やハザードマップ等に書いてあることを表にまとめたものです。 この表は私の家庭を念頭において作成したものですから、皆さんはこれを参考にご自分の家庭の実情に合わせて修正されればよいと思います。 今回は紙面の都合で全体...

 ここ数回、南海トラフの巨大地震が目の前に迫っている、と書いてきました。 私は事実を述べているだけなのですが、取り方によっては脅しているようにも受け止めることができるでしょう。 このことで、ふと昔のことを思い出しました。 それは教え子の結婚式に呼ばれたときのことです。 彼は非常に優秀かついい男(顔ではなく心が)で、非常に親しくしていましたから、公私にわたっていろいろなエピソードを知っていました。 ...

 前回、「南海トラフの地震活動の長期評価」(2013年5月発表)には非常に重要なことが述べてある、ともったいぶったことを書いて終わりました。 今回はその“非常に重要なこと”を書きたいと思います。 実は、南海トラフで巨大な地震が起こると、場所によって地盤が沈下したり隆起したりします。 高知市は沈下する場所で、昭和21年の南海地震の時には市街地全体が約1~1.5m沈下しました。 その様子を図-1に示し...

 この3月25日に政府・地震研究推進本部から「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価」(第二版)が発表され、それに関連して日向灘や奄美、沖縄諸島周辺の地震が起こる可能性、そして先週、先々週はそれに関連して「安芸灘~伊予灘」の地震の可能性について書きました。 実は“南海トラフ“の地震活動の長期評価は2013年5月に発表されています。 この“長期評価”には非常に重要なことが述べてあるのですが、...

 先週M7クラスの安芸灘~伊予灘の地震がいつ起こってもおかしくない、そして宇部市の震度は、市の大半が震度4、沿岸部の一部で震度5弱が想定されるということを書きました。 少し前になりますが(第七十段)、南海トラフのM8クラスの巨大地震もいつ起こってもおかしくなく、その場合、市の大半が震度5弱、沿岸部の一部で震度5強、北部から山陽小野田市との境界にかけて震度4が想定されている、とも書きました。 では、...

 前回、山口県にとって、「安芸灘~伊予灘」のM7クラスの地震と、「南海トラフ」のM8クラスの地震はいつ起こってもおかしくないので備えておく必要がある、と書きました。 今回は「安芸灘~伊予灘」のM7クラスの地震についてもう少し詳しく説明します。 図-1はこの「防災徒然日記」第六段の図-2でも紹介した図ですが、この海域で記録が残っている最も古い地震は1649年、現在の伊予市と大洲市の沖合で起こったM7...

 今回も前回に引き続いて、政府・地震研究推進本部:日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動長期評価(第二版)のうち、図の「安芸灘~伊予灘~豊後水道」、「九州中央部」、「南西諸島北西沖」の評価結果を紹介します。 まず山口県に最も影響のある「安芸灘~伊予灘~豊後水道」から。 この海域では1600年以降の422年間にM6.7以上の被害地震が7回発生しています。 422÷7=60.3ということから、発生頻度を...

 第七十五段の最初に少し触れましたが、この3月25日、政府・地震研究推進本部から「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価」(第二版)が公表されました。 今週と来週はその内容について紹介したいと思います。 この調査評価は、日本及びその周辺の海域をいくつかのブロックに分けて、そのブロックごとにそこで起こった過去の地震を調査し、今後どの程度の大きさ(マグニチュードM)の地震がどれくらいの確率で起...

 先週は1771年(明和8年)に発生した八重山地震によって引き起こされた巨大津波「明和の大津波」の痕跡が石垣島のいたるところで見られ、陸に打ち上げられた巨大な石(津波大石(つなみうふいし)を紹介しました。 その津波の遡上高が二十八丈二尺(現在の高さにすると85.4mというとんでもない高さ)という記録が残っているので、実際にどのような地形でそのような遡上が起こったのか金折先生と石垣島を車でめぐりまし...

 先月25日、政府・地震研究推進本部から「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価」(第二版)が発表されました。 この長期評価は、図に示すように、「日向灘」、「南西諸島周辺」など6つの領域の地下で将来起こる可能性のある地震の規模(マグニチュード)と、その発生する確率を示したものです。 この領域の地下ではフィリピン海プレートがユーラシアプレート(大陸プレート)の下に潜り込んでいて、その境界付近...

 先月25日、政府・地震研究推進本部から「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価」(第二版)が発表されました。 この長期評価は、図に示すように、「日向灘」、「南西諸島周辺」、「与那国島周辺」、「安芸灘~伊予灘~豊後水道」、「九州中央部」、南西諸島北西沖」の6つの領域の地下で将来起こる地震の規模(マグニチュード)とその発生する確率がどの程度なのかを示したものです。 この領域の地下ではフィリピ...

 東北地方太平洋沖地震の津波で一面がれきの原となった仙台空港周辺を3月9日に訪問、11年後の現在の様子を第七十二段で書きました。 その間の3月16日の深夜、福島県沖を震源とする地震が起こり、宮城県と福島県の4市1町(登米市、蔵王町、相馬市、南相馬市、国見町)で震度6強が観測されました。 震源の深さは57キロ、マグニチュード(以下、M)は7.4、津波もあり、宮城県の石巻港で0.3m、仙台港で0.2m...

 3月11日前後の報道を目にしたり耳にしたりして、地震の名前と震災の名前の区別をはっきりした方が良いのではないか、と、最近思うようになりました。 多くではありませんが、東日本大震災を過去の出来事のように扱っている報道がだんだん増えているように感じたからです。 2011年3月11日に起こった地震は「東北地方太平洋沖地震」。 これは確かに11年前に起こった過去の出来事。 しかしながらその地震による災害...

 南海トラフで大きな地震が発生、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」(以下「巨大地震警戒」)が、あるいは「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」(以下「巨大地震注意」)出された場合、引き続きM=8クラスの地震が起こる可能性があるので、その時私たちはどうすれば良いのか、ということを先週書きました。 この2月22日、大きな被害が予測されている高知県が「南海トラフ地震臨時情報について」という情報...

 南海トラフで起こる地震には様々なパターンがあり、典型的なものとしては、想定震源域の半分くらいでまず地震が起こり、しばらくして残り半分で地震が起こるパターン(半割れ)、あるいは一部でまず地震が起こり、その後また残りのどこかで地震が起こるパターン(一部割れ)、といったものが考えられています。 相手は自然ですからそのほかのパターンも考えられます。 このような場合には、M=8クラスの地震が起こったとして...

 今週も引き続き「南海トラフ地震臨時情報」について書きます。この「南海トラフ地震臨時情報」の発表の手順は以下の通りです。①南海トラフ巨大地震の想定震源域の中でマグニチュード(以下、M)6.8以上の地震が起こるか、この想定震源域内の大陸プレート(ユーラシア・プレートとも言います)とフィリピン海プレートの境界で地震ではなく滑る「ゆっくりすべり」が起こったら、気象庁が「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」...

 今週は、多分皆さんあまり聞きなれない「南海トラフ地震臨時情報」について書きたいと思います。 2019年5月、気象庁は南海トラフ沿いで大規模な地震が起こる可能性が平常時と比べて高まったと考えられる場合には、この「南海トラフ地震臨時情報」を発表することにしました。 ここで、「大規模な地震が起こる可能性が平常時と比べて高まったと考えられる場合」とは、1月22日の地震のように比較的大きな地震が起こったと...

 去る1月22日(土)深夜、たまたまこの時起きていて、緊急地震速報が鳴り、数秒後に揺れがやってきました。 揺れは10秒くらい続いたでしょうか。 すぐに時間を測れなかったのは残念でしたが、少なくとも宇部は大したことはない、と直感。 寝ている家族を起こして安全な行動をとるまでもない、また気になっている南海トラフの地震でもない、と思い、テレビのスイッチを入れました。 時間とともに情報が入ってきて、震源は...

 今回のトンガ王国の火山の大噴火で気になるもう一つのこと、それは火山の噴火が気温の低下をもたらすのいではないか、と言うことです。 1991年6月、フィリピン・ルソン島の首都マニラの北東約100㎞にあるピナツボ火山が大噴火を起こしました。 その規模と激しさは20世紀最大級と言われています。 噴火前に1745mあった標高は、噴火後に1486mになるというすさまじいものでした。 その噴火によって大量の微...

 1月22日(土)の午前1時ころ目が覚めて、しばらく眠れそうになかったので居間のソファーに座って、瞑想でもするか、と思っていたら突然緊急地震速報が鳴りました。 すぐにテレビをつけてニュースを。 震源は日向灘の海底で、深さは約40km、地震の規模(M)は6.4(その後6.6に修正)、大分県と宮崎県で最大震度5強を観測しました。 最近このコラムで“イヤーな地震”と言う言葉をたびたび使っていますが、今回...

 14日、15日、17日と立て続けにトンガ王国で火山が大噴火し、その影響で8,000㎞離れた我が国にも津波が押し寄せてきました。 津波の高さそのものは1m前後でしたが、多くの船が転覆したり、牡蠣などの養殖いかだに大きな被害を与えたりするなど、改めて津波の脅威を感じました。 今回の津波ですが、どうも特殊な原因で起こったようです。 通常、津波は地震によって海底が上下に動き、海水もそれに従って上下に動き...

 新年明けましておめでとうございます。 昨年12月21日、政府は日本海溝・千島海溝における巨大地震の可能性を発表しました。 その人的被害は最大19万9千人、経済被害は31兆円以上ということです。 南海トラフ巨大地震の人的被害は最悪の場合32万人、経済被害は200兆円超、首都直下地震のそれらはそれぞれ2万3千人、100兆円超ということです。 新年早々こういう話ですみません。 政府はこのように被害想定...

 テレビでの放映は終わったのに、相変わらず「日本沈没」にこだわっているようですが、ドラマ「日本沈没」の中で、“スロースリップ”と言う言葉がたびたび出てきました。 “スロースリップ” とは、その英語の意味する通り、“ゆっくりすべり”と言う意味です。 “スロースリップ”が日本各地で観測され、ゆっくりと(でもなかったですが)日本列島が太平洋に沈んでいく、という意味合いで使われました。 実はこの“スロース...

 日曜日のテレビドラマ「日本沈没」の最終回では、北海道と九州を残してリアルタイムで日本列島が沈んでいく様子を見ることができました。 ただ、どうして見ることができるんだろうと、私は不思議に思って見ていたのですが・・・。 日本各地に設置した様々なセンサーからのデータをコンピュータでシミュレーションしたのならわかるのですが。 しかしその場合もセンサーからの情報がどうしてコンピュータへ届くんだろう、とまた...

 先週はJAXAが今年度中に打ち上げ予定の「だいち3号」が南海トラフ巨大地震の観測を念頭に置いて、一度の軌跡(パス)で非常に広い範囲の観測、すなわち南海トラフの巨大地震で被害が大きい太平洋沿岸の広い範囲を撮影できるように設計されていることを書きました。 あわせて、空間解像度が80㎝ということも書きました。 空間解像度が80㎝ということはどのくらいかということを図に示します。 図の左が「だいち」の画...

 先週は人工衛星で地球を観測するセンサーには二種類あることを説明しました。 一つは「光学センサー」といって、太陽光の反射波のうち可視光、すなわちR(赤)G(緑)B(青)と言われている光の三原色、および赤外線を観測するセンサー、もう一つは「マイクロ波センサー」といって、人工衛星自身がマイクロ波を地上に向けて照射し、その反射波を観測するものです。 それぞれ長所と短所があり、実際にはこれらを組み合わせて...

 日曜日の夜のTV番組「日本沈没」に触れ、日本及びその近海には、国の省庁、研究機関、大学が非常に多くの地震をはじめとする各種の観測ネットワークを展開していて、多くの研究者が観測に関わっており、一人の研究者だけに情報が集中するということはあり得ない、と書きました。これから少し具体的に観測に関する最前線のお話を。 まず宇宙から。 この防災徒然日記にすでに衛星データの防災への利用について、そして山口県へ...

 日曜日の夜の「日本沈没」、すごい展開ですね。 第一波だけで関東沈没は終了。 早速復旧復興に取りかかり始めた矢先、例の変わった地震学者の先生から、今度は名古屋方面が沈没、いよいよ日本沈没に・・・。 日本の政府がたった一人の学者の関東沈没終息宣言、新たな日本沈没の宣言に振り回される、全く現実にはあり得ないことですね。と、相変わらずブチブチ言いながら見ています。 日本及びその近海には、国の省庁、研究機...

 日曜日の夜、「日本沈没」というドラマをやっていて、ぶちぶち言いながら見ています。 地球物理学的にも、現在の地球観測システムとその運用に関しても、あまりにもあり得ないことがベースになっているからです。 SF(Science Fiction)ではなく、人間の確執ドラマですね。 それにしても各省庁の代表者が非常に頼りなく描かれています。 私の知っている限り、各省庁の代表ともなろう人たちは非常にしっかり...

 先週は、首都直下地震のうち最も被害が大きいと想定されている「都心南部直下地震」の人的被害について説明しました。今週も引き続きその話をします。 この地震が「冬・深夜」、「夏・昼」、「冬・夕」の3つの時間帯に起こった時の死亡の原因ごとにまとめられた表を今週も示します。表 都心南部直下地震における人的被害 この表より、「冬・夕」に地震が起これば、最悪の場合23,000人の死者が出るという結果になってい...

 先週は、今月7日の夜10時過ぎに関東地方で起こった地震がイヤーな、本当にイヤーな地震だということを書きました。 その原因である首都直下地震についてこれから数回にわたって書いてみたいと思います。 首都直下地震の被害想定は、過去何度も行われています。 これからお話しする内容は平成25年(2013年)12月に、国の中央防災会議の中の「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」が取りまとめた『首都直下地震...

 真鍋淑郎氏がノーベル物理学賞を受賞され、大いに喜ぶとともに、驚きも感じました。 正直、「え、こんな研究がノーベル賞の対象に!?」という驚きです。 ノーベル物理学賞と言えば、物質を構成している素粒子のそのまた元となる超超極微の世界の究明とか、宇宙の誕生に迫る何百光年という想像もできないスケールの中のこれもまた超超極微の物質の運動など、巨大な装置やお金をかけたビッグサイエンスでないととてもできない、...

 私は60年近きにわたってカープファンで、「巨人・大鵬・卵焼き」と言われた時代、男の子はみんな「G」の野球帽をかぶっていたのに、私にはかぶる帽子がありませんでした。 ちなみに相撲は柏戸ファンで、よく大鵬に負かされました。 それと同様に、カープもジャイアンツによく負かされていました。 一番強いものをなんとなく好きになれない、私はちょっと変わった少年でした。 それがなんということでしょう、今や「カープ...

 早いもので、このシリーズも50回目になりました。 ある時これを読んでいただいている方から、やはり240回くらい続けられるのですか?と聞かれました。 すぐにはその意図が分からず、「いいえ、書けるだけ、脇社長から『もういい』と言われるまで書く予定です」、とお答えしたのですが、その方と別れた直後、吉田兼好の徒然草は確か二百数十段(正確には244段)なので、そのことだったのか、と気が付きました。 思わぬ...

 前回では多目的ダムと利水ダムの水位調整の図を用いて、『予備放流』と『事前放流』の違いを説明しました。今回も同じ図を用いて「事前放流」がそう簡単ではないことを説明します。 その前に、図の補足説明を。 ダム本体の上方に「非常用洪水吐(ひじょうようこうずいばき)」と書いていますが、この位置にある洪水吐(通常複数のゲートがあります)は、一部のゲートを「常用洪水吐」に使い、残りのゲートを「非常用洪水吐」に...

 「事前放流」がそう簡単ではないことを書きたいと思いますが、実は「事前放流」そのものを理解することもそう簡単ではないのです。 そこでまずはダムの基礎知識から。 ダムには洪水から流域を守る「治水」、水を利用するための「利水」、さらに最近は「環境保全」もこれらに加わって3つの目的があります。 そしてダムは大別して「多目的ダム」と「利水ダム」に分けられます。 多目的ダムは水道水用、工業用水用、灌漑用、発...

 引き続き「山口県土木防災情報システム」の見方ですが、今週は「ダム情報」について説明します。 雨が降り続くと状況によっては厚東川ダムの放流が行われ、下流の水位に影響を及ぼします。 「山口県土木防災情報システム」の「ダム情報」には「ダムマップ」と「ダム観測局一覧」のボタンがあり、「ダムマップ」をクリックすると県が管理する県内全ダムに流れ込む水の量の状況が■で図示されます。 赤い■は洪水量以上、黄色い...

 今週は「山口県土木防災情報システム」の「土砂災害」の見方を紹介したいと思います。 同システムトップページの「土砂災害」のボタンの「土砂災害ポータル」をクリックすると、図-1が現れます。 左上に「山口県土砂災害警戒区域等マップ」と「山口県土砂災害警戒情報システム」という2つのボタンがあります。 上のボタン「山口県土砂災害警戒区域等マップ」をクリックすると、県内の土砂災害の危険な区域、すなわち「警戒...

 第四十二段で「山口県土木防災情報システム」ホームページのトップページを使って、このシステムによってどのような情報が提供されるかを簡単に紹介し、第四十三段で具体的に「潮位情報」の紹介をしました。 台風9号の後、九州に始まり日本各地の広い範囲で、しかも盆前から先週初めまでの長期間にわたって大雨が続きました。その結果、今年も豪雨によって大変な被害が出ました。 そこで今週は「山口県土木防災情報システム」...

 台風9号の後は、盆前から梅雨前線のように大雨をもたらず前線が停滞、あるいは緩やかに移動して、九州から始まって日本の非常に広い範囲が豪雨災害に見舞われています。 このような時にはテレビやラジオ、新聞でも大きく気象情報や被害の様子が報道されます。 しかしこれらの報道は被災地が中心で、自分の住んでいるところの情報は、被災地であれば別ですが、まず報道されません。 このようなときに大事なことは、自分で積極...

 今月(2021年8月)の7日~9日の3連休、台風9号が西日本を襲いました。 8日九州へ上陸、山口県の東部をかすめて広島県に上陸、その後中国地方を斜めに横断して日本海へ抜け温帯低気圧へと変わりました。 山口県への最接近は9日の深夜でした。 私は8日の午後から、「山口県土木防災情報システム」を見始めました。 まずは「台風情報」で台風の進路とおおよその時間を確認、そして先週書いたように「潮位情報」を見...

 災害が起こりそうなとき、あるいは起こった後も情報の入手は非常に重要です。 そこでこれから数回にわたって情報の入手方法について、実際に私が使っている方法を紹介したいと思います。 これから台風シーズンを迎えます。 台風の進路に山口県がかかりそうなときには、まず私が見るのが「山口県土木防災情報システム」です。 図は「山口県土木防災情報システム」のホームページです(8月4日現在のトップページ)。 簡単に...

 先週、「率先避難体制づくり」について触れました。 今週はこのことについて少し具体的に書きたいと思います。 図は県が作成した「率先避難体制づくり」のイメージ図に、私が少し加筆したものです。 これは土砂災害の危険性のある地域“土砂災害警戒区域”、通称“イエロー・ゾーン”にある地域を対象に「率先避難モデル地域」を考えたものです。 このモデル地域(通常、自治会ごとに体制を作るといいでしょう)をいくつかの...

 前回、平成30年7月の豪雨では山口県内でも土砂災害で3人の方が亡くなり、いずれもレッドゾーン、イエローゾーンに住んでおられる高齢の方たちだったということを書きました。 図にその3人の方が亡くなった場所を示します。 被災現場は×印で示しています(山口県防災会議、防災対策専門部会資料。当時私は部会長を務めていました)。 いずれも光市、周南市、岩国市を流れる島田川の上流で、岩国市周東町上須通、岩国市周...

 土砂災害には、大別して、土石流、急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)、地滑りの3種類があります。 もちろんこれらは明確に区別されるものではなく、これらの中間的な現象が発生したり、同時に起こることもあります。 図‐1は土砂災害の起こりやすい地形をまとめたものです(防災科学技術研究所、自然災害情報室、自然災害について学ぼう、15.斜面崩壊・地滑りより引用)。 大雨によって斜面崩壊が発生しやすい所は、地形では斜...

 例年よりかなり早く梅雨入りしたものの、あまり雨も降らず今年は空梅雨かなと思い、のんびりと思い出話を書いていましたら、衝撃的な映像が飛び込んできました。 熱海市を襲った土石流です。 何度も何度も繰り返し放映されたので、皆さんもご覧になったと思います。 NHKのニュースの画面を撮影したものが図-1です。 ものすごい勢いで土石流が流下しています。 これまで毎年のように日本各地で豪雨災害があり、洪水や土...

 多くの関係された皆さんの悲喜こもごものエピソードを生みながら、無事JAXAの衛星データが山口県へ来ることが決まり、平成28年(2016年)9月14日、県庁でJAXA、山口県、山口大学の三者協定の調印式が行われました。 協定は、「人工衛星による衛星データの応用研究や利用促進に相互に協力して取り組むことにより、防災分野等における衛星リモートセンシング技術の利用を推進すること」を目的としています。 写...

 山口県へJAXA(宇宙航空研究開発機構)の衛星データが来ることになった経緯をお話していますが、少し補足説明を。 まずアンテナの直径の話から。 山口市仁保にあるKDDIのアンテナ(直径が30m以上あります)が有名なので、皆さん、衛星データを受信するというと、あのアンテナを思い浮かべられると思います。 ところが産業技術センターに設置されたJAXAのアンテナの直径はわずか1.1m(写真)。産業技術セン...

 いよいよ神風のお話を。 その神風とは、「地方創生」の一環として、政府が打ち出した中央省庁や独立行政法人などを地方に移転する、という国の一大事業。 平成27年(2015年)初めのこと。 これに山口県は3機関の移転を要望。 幸いにもその中の一つにJAXAの衛星データのバックアップ機能を、というのを入れて頂いた。 最終的に決定されるのがその年度末。 決定まで1年しかない。 それから県の担当の方たちとの...

 神風が吹いたお話をする前にもう一人、重要な役割を果たして下さった方のお話を。 当時JAXAの地球観測担当の理事を務めておられた山本静夫さんです。 以前お話した田中佐(たすく)先生のJAXA時代の同僚で、田中先生から紹介いただきました。 物静かな方で、私よりはるかに学究肌の方でした。 田中佐先生は「邪魔者は蹴散らしてでも大事なことは実現せんといかん(ご本人から何度か聞いた言葉)」という、いわば織田...

 図は現在のJAXAの国内の事業所・施設です。この図の他に「東京事務所」(お茶の水)、本社・調布航空宇宙センター(調布)があります。図 JAXAの事業所・施設 図にもありますように、現在は宇部市に「西日本衛星防災利用研究センター」がありますが、以前はありませんでした。 衛星データは今はこの「西日本衛星防災利用研究センター」にもありますが、以前は関東のセンターにしかありませんでした。「衛星データを西...

 今週は、少々乱暴なはなしを。 現在JAXAが打ち上げて地球の観測を行っている地球観測衛星「だいち2号」クラスになると、設計、製作、打ち上げ、運用で、大体500億円かかります。 これを高いと思うか、安いと思うか、皆さんはどう思われますか? 防災の観点から言うと、私は“安い”と思っています。 先週書いたように、災害直後の被災状況をすぐに国(首相官邸、内閣府防災など)、県、国土交通省、自衛隊、消防、警...

 先週、陸前高田市の津波による被害の範囲を、衛星データを使ってほぼ求めることができ、衛星データが防災に使えるという確信を得た、と書きました。 話は前後しますが、その後何度も気仙沼市の防災危機管理課長で、のちに防災監を務められた佐藤健一さんを訪ね、被災状況のこと、その後の対応のことなどを聞きました。 佐藤さんの話によると、被災直後は津波による山のようながれきで状況把握をするために外へ出ることもできず...

 衛星データを防災に使う研究を始めたのが2008~2009年のこと。 ちょうどそのころ、2009年7月に「平成21年中国・九州北部豪雨」が起こり、防府市、山口市を中心に土砂災害や洪水災害が起こりました。 早速JAXAに「だいち」の衛星データを提供して頂き、防府市の土砂災害の解析を「光学センサー」と「マイクロ波センサー」を用いて試みました。 土砂災害が起こった場所を衛星データを使って見つけることがで...

 私が“衛星データが防災に使える”と考えるようになったときは、ちょうど学部長も終わり、学科の所属がそれまでの「知能情報システム工学科」から新しくできた(というより作った)「循環環境工学科」へ移るタイミングでもありました。 「循環環境工学科」は私が学部長時代に文部科学省との折衝や予算の獲得にずいぶん奔走したので、あたかも自分の子供のように愛着があり、何とか成功させないといけないという強い思いがあり、...

「東北は、私たちが頑張って何とかします。西日本にもいずれ大きな地震がきますね。先生はこれと同じような悲劇が再び起こらないように、しっかりと準備の研究をして下さい。」 当時気仙沼市防災危機管理課長の佐藤健一さんのこの一言が、のちにJAXAの衛星データを山口に誘致することにつながったのです、と第24段で書きました。 今回からその辺のお話しをしたいと思います。 平成18(2006)年度から21(2009...

 気仙沼市杉の下地区の近くに、熱心に防災教育に取り組んでいた市立階上(はしかみ)中学校があります。 同級生1人が死亡、2人が行方不明という状況で開かれた、その年の階上中学校の卒業式での卒業生代表梶原裕太君の答辞、時々講演会で紹介しますが、今読んでも胸が締め付けられ、うまく読めません。 梶原君はその後地元の高専に進学、卒業後防災に関係する仕事がしたいということで、地元のコンサルタントで頑張っているそ...

 児童、先生計84人が犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校をはじめとして、東日本大震災のあと各地で訴訟が起こりました。 大川小学校の訴訟のことはまた別の機会に書くことにして、先週書いた気仙沼市杉之下地区を訪れた報道関係者がそこの町内会長さんに聞きました。「ここは訴訟を起こさないんですか?」 それに対する町内会長さんの答。「私たちは市と何度も検討を重ね、あの小高い丘の上を避難場所と決めました。責任は...

 気仙沼市の震災当時の防災危機管理課長佐藤健一さんの一言が、のちにJAXAの衛星データを山口に誘致するきっかけになった、と前回の終わり書きましたが、その話は別の機会に譲ることにして、引き続き気仙沼市でのお話を。  「釜石の軌跡」という言葉がよく言われました。 釜石市ほぼ全部の小・中学生が津波から見事に逃げ切りました。 その背景には学校の防災教育がありました。 その一方で、大人は1000人を超える犠...

 東日本震災前、気仙沼市主催の津波に対する備えの研究会に参加していた、また震災の半年前に三陸各地を訪ねて津波の被害を後世に残すために建てられた多くの石碑の写真を撮って回った、と先週書きました。 震災後気仙沼市や三陸のことがずっと気がかりで、一刻も早く訪ねて行きたいと思っていましたが、結局震災後初めて気仙沼市を訪ずれたのはその年の6月でした。 研究会で一緒だった、市の防災危機管理課長(当時)をされて...

 東日本大震災から10年が経ちました。 テレビや新聞等、多くの特集を行っています。 それらを見て率直に感じるのは、この十年、被災された方々がいかに大変であったか、まだまだ復興への道のりは遠い、といった論調のものが多く(これはこれで大切なことです)、迫りくる次の大災害、首都直下地震や南海トラフ巨大地震へどう備えるか、さらには最近頻発している豪雨災害、土砂災害へどう備えるか、といった「これから」につな...

 先々週は「レベル1地震動」、「レベル2地震動」について、先週は「レベル1津波」、「レベル2津波」の考え方について書きました。 今週は洪水を起こす雨量の「レベル1」、「レベル2」について書きます。 実際には「レベル1津波」、「レベル2津波」という言い方がないように、「レベル1雨量」、「レベル2雨量」という言い方はありません。 しかしながら、言葉はないものの、その考えは洪水ハザードマップに反映されて...

 今週は「レベル1津波」、「レベル2津波」の考え方について書きます。 実際には「レベル1津波」、「レベル2津波」という言葉は使われず、「レベル2津波」は「最大クラスの津波」と言われています。 「レベル1津波」には特に言い方はないようです。 東日本大震災後、平成23年7月に国土交通省が「津波防災まちづくりの考え方」の緊急提言を行っています。 その概要は以下の通りです。1.津波災害に対しては、今回のよ...

 今週は「レベル1地震動」、「レベル2地震動」と『揺れやすさマップ』の関係について書きたいと思います。 以前、この連載の前に「ハザードマップを読む」を連載していましたが、「その14、15、16」で宇部市の揺れやすさマップについて説明しました。 図-1は「その15」でも紹介した揺れやすさマップの作り方です。図-1 宇部市のハザードマップの作り方 この揺れやすさマップは、宇部市周辺の活断層①~⑧が動い...

 阪神・淡路大震災以後、構造物の耐震設計には、地震によって構造物に働く力(地震力)を「レベル1震動」と「レベル2地震動」の2段階の地震(地震動)で考えることになった、と先週書きました。 鉄筋コンクリート造の建物や橋、ダムなどの土木構造物は大体50~100年使うことが前提になっています。 この使用期間中に数回起こるような地震に対しては、無被害か、被害があったとしても軽微で修理がすぐできて、地震後もす...

 日本は地震国で、地震に対してどのように構造物を設計したらよいか、ということが、すなわち耐震設計法が、明治以降ずっと考えられてきて、地震で被害が起こるたびに設計法が改訂されてきています。 前回、阪神・淡路大震災がその耐震設計の考え方を大きく変えることになった、と書きました。 耐震設計は簡単に言うと、その構造物の重さの何%が地震による力(地震力といいます)として、構造物に水平に作用するかを考え、その...

 実は阪神・淡路大震災の起こった1995年1月17日のちょうど1年前の1994年1月17日(アメリカ西海岸の時間で)、ロサンゼルス北東部で地震が起こりました。 テレビや映画でよく山の斜面に白い文字「HOLLYWOOD(ハリウッド)」の看板を見ることがありますが、地震はその山の北側、サンフェルナンド・バレー(バレーとは渓谷という意味で、確かに遠く山に囲まれていますが、とても広い平野で日本人の感覚では...

 1995年1月17日の未明、激しい揺れで目が覚めました。 揺れが収まるとすぐテレビのNHKにスイッチを入れました。 阪神地方で激しい地震が起こったという第一報があったのち、しばらくは詳しい情報は報道されなかったのではないかと記憶しています。 そのうち朝の7時過ぎになり、朝食の時間がやってきました。一階のレストランに行こうと思ったら、エレベーターは動いていませんでした。 激しい揺れが原因だったので...

 1995年1月17日の未明、激しい揺れで目が覚めました。 大阪のホテルの6階の部屋だったと思います。 それは本当にすごい揺れで、まるで激しい乱気流に巻き込まれた飛行機に乗っているようでした。 日ごろ講義や講演会などで偉そうに言っている自分が地震で怪我をしたら笑われる、などと思いながら、天井や壁から落ちてくるものはないか、倒れてくるものはないか、テレビなど飛んでくるものはないか、身の回りを確認しな...

 この日曜日の1月17日は阪神・淡路大震災が26年前に起こった日でした。 もう26年経ったのか、という一種の感慨を覚えます。 というのは、阪神・淡路大震災を大阪で体験したからです。 この経緯はまた別の機会に書くことにして、翌18日、私は京都新聞の記者と一緒に大阪から西宮市へと被害の様子を見に行きました。本当は神戸まで行きたかったのですが、周辺の被害が激しかったことと、ひどい渋滞でとても西宮市から先...

 前回、山口県が行った地震被害想定のうち、南海トラフの巨大地震が起こった時の山口県の震度分布、宇部市の震度分布について書きました。 宇部市の広い範囲で震度5弱、北部から西部の山陽小野田市との市の境界周辺で震度4、逆に市の南部の空港周辺から西岐波、東岐波の海岸沿いの一部で震度5強となっています。 では、震度4、5弱、5強とはどのような揺れ方なのでしょうか? 気象庁が平成21年3月31日に改訂した「気...

 数週間、過去の津波にまつわる話を書きましたが、話を南海トラフ巨大地震にもどし、今週は「震度」の話を書きます。 この「震度」という言葉、実は構造物の耐震設計にも全く違う意味で使われます。 従ってそれとの違いをはっきりさせるために、正式には「気象庁震度階」と言いますが、この徒然日記では一般に使われている「震度」を使っています。 さて、図-1は南海トラフ巨大地震が発生したときの山口県の震度分布です(平...

先週アラスカ州の州都ジュノーの西方約200kmにあるリツヤ湾の奥で大規模な山体崩落(斜面崩壊)が起こり、それによって海中になだれ込んだ大量の土砂や氷塊により湾内で巨大な水しぶきが発生、対岸に津波が押し寄せた。その津波の高さは524mに及び、これが世界最高の津波遡上高、ということを書きました。 これほどの高さではありませんが、地震によって山の斜面が大規模に崩壊、その大量の土砂が海になだれ込んで津波を...

 今週も津波にまつわる話を。 1970年代初め、ポセイドンアドベンチャーという映画が大ヒットしました。豪華客船が大津波に襲われて転覆、船底へ移動した数人だけが最終的には救助されるというハラハラドキドキの映画でした。 当時学生だった私は気が付かなかったのですが、後になって地震工学の研究を始めてその映画の大ウソに気が付きました。 映画では津波は30mを超す水の壁となって襲ってきます。しかし現実にはその...

 前回、津波防災のバイブルと紹介した「稲むらの火」は、原作はラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「Living God」で、当時和歌山県の小学校教諭だった中井常蔵先生が日本語に翻訳されたものです。 多分、中井先生の名訳がなければ、これほど「稲むらの火」は有名にはならなかったでしょう。 稲むらの火の舞台は和歌山県の広村、現在の広川町で、対象となった地震は安政元年11月5日(太陽暦では、1854年12月...

 この“日記”で南海トラフ巨大地震による津波について書いていたころの11月5日は、実は「津波防災の日」だったのです。 東日本大震災の起こった3か月後の平成23(2011)年6月に、津波対策を総合的かつ効果的に推進することを目的として、「津波対策の推進に関する法律」が制定されました。 この法律では、津波対策に関する観測体制の強化、連携協力体制の整備をはじめとする防災対策の実施などが規定されています。...

 山口県、広島県、愛媛県、大分県に囲まれる瀬戸内海の安芸灘・伊予灘の海底にはマグニチュード(M)7クラスの地震エネルギーがたまっていて、いつ地震が起こってもおかしくない状況にある、したがって、南海トラフ巨大地震と同様、安芸灘・伊予灘の地震に対しても十分備えをしておく必要がある、と先週書きました。 この安芸灘・伊予灘の地震に対しても山口県は被害想定を行っています。 図は安芸灘・伊予灘で地震が起こった...

 山口県に大きな被害をもたらす地震で、南海トラフの巨大地震と同じくいつ起こってもおかしくない地震がもう一つあります。 安芸灘・伊予灘の地震がそれです。 山口、広島、愛媛、大分の4県に囲まれた海域では過去繰り返し大きな地震が起こっています。図-1はそれら地震の震央を示したものです。大きな丸はM7クラス、小さい丸はM6クラスの地震です。図-1 1649年以降安芸灘・伊予灘で起こった地震の震央 この海域...

 さて、先週は南海トラフ巨大地震が起こった時には、まず間違いなく緊急地震速報が出され、緊急地震速報が出されて宇部に強い揺れが来るまでに少なくとも30秒は時間がある、その間に命を守るための行動をとること、すなわち火を使っていたら慌てずに火を消すこと、倒れてくるもの・落ちてくるものなどがない所へ避難することが大切、ということを書きました。 地震による死傷の原因は、大きく分けて3つです。 一つ目が火災、...

 先週の第三段で、山口県の地震被害想定の中から南海トラフ巨大地震による想定死者数をまとめた表を示しました。 読者の中には気づかれた方もいらっしゃると思います。“風速によって火災の延焼範囲が異なり、それによって被害も異なる、と書いてあるのに、犠牲者数は風速3m/秒も15m/秒も全く同じではないか”と。 確かに死者数については、たまたま風速の違いによって違いはありません。しかしながら負傷者数、重傷者数...

 南海トラフ巨大地震は近い将来必ず起こります。 従って、それに備えなければなりません。地震は昔から、『地震、雷、火事、親父』と、怖いものの筆頭に挙げられ、確かに怖いものです(家長制度のなくなった今は、親父はもはや怖い存在ではありません。そのかわり・・・)。 その一方で、『幽霊の正体見たり枯れ尾花』ということわざもあります。 ただやみくもに恐れ、混乱しては、何の解決にもなりません。孫氏の兵法にも『敵...

 前回、“首都直下地震、南海トラフ巨大地震が近い将来必ず起こる。今後30年以内に起こる確率は首都直下地震、南海トラフ地震ともに70%程度と、内閣府が公表している”と書きました。 特に南海トラフ(トラフとは溝の意味。ここでは海溝)で起こる巨大地震は、過去、数十年から百数十年に一度、繰り返し起こっています。 これは西日本の南の海底のフィリピン海プレート(大きな岩の板)が年4~6㎝の速さで北上し、日本列...

 “つれづれなるまゝに、夜な夜なパソコンに向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、災いのことなどあやしうこそ物狂ほしけれ” 「ハザードマップを読む」を書きながら、いろいろと防災について考えるにつけて、様々なことが頭をよぎって、社長の脇さんと相談した結果、このようなタイトルで、思いつくままに防災に関して書かせて頂くことになりました。 来年3月11日で東日本大震災から10年に...

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