防災マップ深読み

記事一覧

1.はじめに 最近の雨の降り方は尋常ではありません。毎年のように洪水や土砂災害が発生し、多くの犠牲者が出ています。ここ防府市も今から12年前の平成21年(2009年)7月に豪雨により大規模な土砂災害が発生しています。 また台風も大きく、強くなり、台風による災害も多発しています。 さらに西日本は今、地震の活動期に入っています。 いずれ近い将来南海トラフの巨大地震が起こります。まさに日本は災害多発時代...

1.防災マップの作り方 防災マップは前回書いたように、多くの前提条件や仮定を設けて作成されています。 すなわち、過去発生した災害例やその土地の地形、気象条件などを用いて、コンピュータを使って被害の起こる場所やその程度を推定します。 これをシミュレーションといいます。 このコンピュータによるシミュレーションは基本的に山口県が行い、その結果(データ)が県内の各市町に提供されます。 各市町は県から提供さ...

1. 高潮ハザードマップ 図は防府市の「高潮浸水予測図」です。図 高潮ハザードマップ「高潮浸水予測図」(防府市ホームページより) これによると、東は牟礼地区から西は横曽根川、佐波川河口付近までの市街地の南部の広い範囲にわたって浸水する可能性のあることが分かります。 浸水の深い所は佐波川河口で5mを超える所がありますが、幸いここには住宅はないようです。 市街地でも場所によっては4m(2階の軒下まで)...

1.高潮を起こす原因 高潮を起こす主な原因は2つあります。「吸い上げ効果」と「吹き寄せ効果」と呼ばれるものです。 図-1は「吸い上げ効果」を示したものです。図-1 高潮が起こる原因①:吸い上げ効果 台風の中心気圧は周辺部より低いため、周辺部の大気が中心部より強く海面を押し付けるので、あたかも中心付近の大気が海面を“吸い上げる”ように働くため、台風の中心付近の海面が上昇します。この「吸い上げ効果」は...

1.防災マップ高潮編の想定条件 前回は高潮が起こる条件(起きる仕組み)を説明しました。 今回は防災マップ高潮編の想定条件について説明します。 防府市防災マップ高潮編の「高潮危険度マップ・学習編」をご覧ください。 お持ちでない方は、下記の防府市のホームページで見ることができます。 https://www.city.hofu.yamaguchi.jp/uploaded/attachment/42831...

1.想定海面上昇 今回はまずどの程度の海面の上昇を想定しているかを説明します。 図は高潮ハザードマップを作成するにあたって、想定した水位です。図 高潮ハザードマップの作成で想定された水位 この図の説明にあるように、①天文潮位による変化:大潮時の満潮位の平均②台風による潮位変化:潮位偏差と呼ばれるもの③波浪(高波):台風の強風で起こる波の高さ④洪水による川の水位の上昇 これらのすべてが同じタイミング...

1.防府市の洪水ハザードマップ 防府市には、佐波川、柳川、馬刀川のハザードマップがあります。 これらハザードマップは各家庭に配布されていると思ますが、市のホームページにもあります(https://www.city.hofu.yamaguchi.jp/soshiki/2/hazardmap.html)。 これらハザードマップを見て、我が家、あるいは職場や学校などの洪水に対する危険性を確認し、いざとい...

1.山口県の洪水ハザードマップ山口県には県が管理する河川が474あります。いわゆる2級河川です。国が直接管理する河川は1級河川といい、県内では前回説明した佐波川と、広島県との県境を流れる小瀬川の2河川だけです。2級河川が多いのが山口県の特徴です。2級河川の洪水浸水想定区域図やハザードマップの作成対象は64河川あり、すでにシミュレーションは終わり順次洪水浸水想定区域図の指定・公表がおこなわれ、防府市...

1.家屋倒壊等氾濫想定区域とは先週は、洪水防災マップの前提となっている降雨量について、その考え方を説明しました。今週は新たに導入された『家屋倒壊等氾濫想定区域』について説明します。図は佐波川洪水編の情報面の一部を抜粋したものです。図 浸水の深さと避難行動 (佐波川洪水編の情報面の一部)浸水の深さと避難行動(避難先)の関係が示してあります。この中に浸水の深さ3m以上のところに『家屋倒壊等氾濫想定区域...

1.土砂災害の3つのパターン今週から土砂災害のハザードマップについて説明します。土砂災害は複雑な災害ですが、一応3つのパターンに分けられます。図は土砂災害のハザードマップに必ず載っている、その3つのパターンです。図1 急傾斜地の崩壊 (がけ崩れ)一つ目は急傾斜地の崩壊 (がけ崩れ)(図1)、図2 土石流二つ目が土石流(図2)、図3 地すべり三つ目が地すべり(図3)です。図には警戒区域(イエローゾー...

1.地下水が悪さをする先週、土砂災害には水が大きな“悪さ”をする、と書きました。その悪さをする水の中でも特にタチの悪いのが地下水です。地下水がどこにどれくらいあるかは当然ハザードマップを作る時には分かりません。ましてや降雨によって地下水の量がどれくらい増えたか、また地下水の流れがどう変わったかなども分かりません。それには地質や地下構造、さらには地上の植生も関係します。当然ながらこれらはハザードマッ...

1. 「土砂災害警戒情報」とは大雨が降り、あるいは降る可能性があるときには「大雨警報」が出され、さらに土砂災害のおそれがある時には、県と下関地方気象台から市町ごとに「土砂災害警戒情報」が発表されます。この「土砂災害警戒情報」は、地下にどれくらい水がたまったか、ということを判断の一つにしています。その量は、その時間までそこにどれくらい雨が降ったか、またこれからどれくらい降りそうか、さらには過去の災害...

1.「ゆれやすさマップ」の対象となっている断層今週から地震に関する防災マップについて説明をします。地震に関連しては、震度と津波がありますが、まずは震度に関する「ゆれやすさマップ」から。「ゆれやすさマップ」は防府市の直下、または近くで地震が起こったときの地表面の震度を示したものです。具体的には図に示すように、「佐波川断層」と「防府沖海底断層」を対象に、これらの断層が動いた時の地表面の震度の分布を図示...

1.二つの「ゆれやすさマップ」 図は防府市がその対象としている二つの活断層、「佐波川断層」と「防府沖海底断層」が動いた時の地表面の震度分布を図示したものです。 地震が起こった時に放出されるエネルギーであるマグニチュードは、前者が7.4、後者が7.6です。 断層の位置と長さは先週の図を見てください。 「佐波川断層」はその名の示す通り、防府市内を北東から南西に流れる佐波川沿いにある断層です。 逆にいえ...

1.いつ起こってもおかしくない二つの地震 今週は山口県が行った近い将来必ず起こる2つの地震の震度想定について説明します。 1つ目が「南海トラフの巨大地震」、2つ目が「安芸灘・伊予灘の地震」です。2.南海トラフ巨大地震 伊豆半島から四国沖の南海トラフでおこる地震は、大きく分けて“東海沖”(東海地震)、“紀伊半島沖”(東南海地震)、“四国沖”(南海地震)と震源域が3つに分かれていて、地震は過去別々に、...

1.二つの地震の震度分布 先週、近い将来必ず起こる二つの地震、南海トラフの巨大地震と安芸灘・伊予灘の地震が起こった時の防府市内の震度分布をお見せしました。 もう一度お見せします。 南海トラフ巨大地震が起こった時の震度分布は、市街地の大半が震度5弱、東部の沿岸部で震度5強、山地で震度4となっています。 一方の安芸灘・伊予灘の地震の震度分布は、市の大半が震度5弱、山地で震度4となっています。 そして、...

1.緊急地震速報とは 地震が起こり、強い揺れが考えらえるときには気象庁から緊急地震速報が出されます。 2016年4月に震度7を2回記録した熊本地震、あの時は山口県にも緊急地震速報がだされました。 2回とも夜でしたが、突然携帯電話が鳴ってびっくりしました。 皆さんも覚えていらっしゃる方が多いと思います。 この緊急地震速報ですが、気象庁は、最大震度が5弱以上と予想された場合に、震度4以上が予想される地...

1.南海トラフ巨大地震の人的被害 先週は、南海トラフ巨大地震が起こって、緊急地震速報が発表されてから大きな揺れが防府市に到達するまでに、少なく見積もっても30秒くらいは時間があり、この間に身の安全を守る行動をとることが非常に大切、と書きました。 では、どのように身の安全を守るか、ということになりますが、それには山口県が被害想定を行って公表していますので、それが参考になります。 この被害想定は単にど...

1.防府市の防災マップ津波編 防府市の防災マップ津波編は、平成25年に山口県が発表した、将来発生する可能性が大きい「南海トラフ巨大地震」と「周防灘断層群主部の地震」(防府市の沖合の活断層)による津波浸水想定を基に作成されています。 防府市の防災マップ津波編は全体図と5地域の詳細図(中関・新田・向島地域、西浦・華城地域、大道・右田地域、勝間・華浦・牟礼地域、富海・野島地域)、および啓発面(情報面)か...

1.二つの地震の津波 防府市の防災マップ津波編は、「南海トラフ巨大地震」と「周防灘断層群主部の地震」(防府市の沖合の活断層)による津波浸水想定を基に作成されていることを先週書きました。 それぞれの地震の震源を図‐1、図‐2に示します。 先週示した津波ハザードマップは両方の津波による浸水の深い方を図示したものですが、実はこの二つの地震による津波の最高水位は多少は違いますが、大体同じで、どちらの地震に...

1.二つの地震による津波の時刻歴 先週、南海トラフ巨大地震、周防灘断層群主部の地震による津波の時刻歴を示しましたが、再度図‐1、図‐2に示します。 これらの図から以下のことが言えます。・南海トラフ巨大地震による津波の最高水位は、地震発生後およそ5時間後になる。その水位はおよそ2.6m。しかしその前のおよそ2時間後にも約2.5mの第1波が襲ってくる。・その後、何度も2.5m程度の波が繰り返し襲ってく...

1.今の防災マップの限界 2月9日の第1回以来、防災マップ(防府市は『防災マップ』と呼んでいますが、『ハザードマップ』と呼んでいるところもたくさんあります)はどのように作られているのか、そして防災マップには必ず前提条件があって、限界があることを理解したうえでどのように活用するか、といったことを書いてきました。 実際に目の前で起こりつつある気象現象、たとえば雨の降り方や、台風であれば進路や風雨の強さ...

1.地理情報システム(GIS)を使った防災マップの例 現在の防災マップの欠点を補う「地理情報システム」(GIS: Geographic Information System)という技術がある、ということを前回書きました。 図はGISを用いて、防災マップを重ねている様子を示したものです。 1番上は海岸線、河川、道路、鉄道、避難所などを表した図です。 2番目は土砂災害編、3番目は洪水編、4番目は高潮編...

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