5 土砂災害①
今週から土砂災害のハザードマップについて説明します。
土砂災害は複雑な災害ですが、一応3つのパターンに分けられます。図は土砂災害のハザードマップに必ず載っている、その3つのパターンです。一つ目は急傾斜地の崩壊 (がけ崩れ)(図-1)、二つ目が土石流(図-2)、三つ目が地すべり(図-3)です。
図には警戒区域(イエローゾーン)、特別警戒区域(レッドゾーン)があり、イエローゾーンの定義が書いてあります。ただ、レッドゾーンの定義は明確には書いてありません。イエローゾーンの中で、特に危険なところがレッドゾーン、という理解をしておけばいいと思います。
さて、このイエローゾーンがどう決められたか、ですが、おおよそ以下の通りです。まず、2500分の1の地形図を用いて、被害の恐れのある地形(図に書いてある定義を参考に)を求め、土地利用を参考に(人が住んでいなくても道路や線路があると災害後の生活に甚大な影響がありますね)、場合によっては現地を訪れて判断します。これには大変な作業が伴います。
県がこの土砂災害のハザードマップを作成することを検討する委員会を立ち上げ、私もその委員として参加しながら、このように言うのはいかがと思いながらあえて言いますと、「イエローゾーン、レッドゾーンの範囲を過信してはいけません」、ということです。
なぜか。土砂災害には、水が大きな“悪さ”をします。その悪さをする水は雨によってもたらされます(もちろん地震によっても土砂災害は起こりますが)。その雨が何ミリ降ったら土砂災害が起こるか、というシミュレーションは行われていません。先に書いたように、主に地形から決められているのです。これは洪水のハザードマップがシミュレーションに基づいて作られているのとは大きく異なります。
しかも“悪さを”する水の中でも特にタチの悪いのが地下水です。地下水の存在や量は当然ハザードマップを作る時には分かりません。ましてや降雨によって地下水がどれくらい増えたか、また流れがどう変わったかなども分かりません。それには地質や地下構造、地上の植生も関係します。そしてこれらもハザードマップ作成には考慮できません。
したがって、イエロ―ゾーン、レッドゾーンは土砂災害が起こる可能性のあるところ、と考え、その中に住んでいる人は当然のこと、その周辺に住んでいる人も(特に下流)十分注意が必要なのです。
「過信するな」というだけでは無責任なので、ではどう注意するかを、来週書きましょう。
(土砂災害続く)
図-1 急傾斜地の崩壊 (がけ崩れ) 図-2 土石流
図-3 地滑り
2020年6月11日