17 揺れやすさマップ④
宇部市の揺れやすさマップは、“まずは起こりえない状況が前提となっています”と書きました。これには3つの理由があります。先々週のこの欄の図か、宇部市のホームページの「揺れやすさマップ」を見ながら読んでください。
理由の1つ目は、その表示の仕方です。
宇部市に影響があると考えられる地震は9つ考えられています。それら9つの地震が起こると、市内各地はそれぞれの地震に対して違う揺れ方をします。すなわち各地点ごとに9通りの震度があります。
その9つの震度の中の最大の震度を、宇部市全体に対して図示したものが「揺れやすさマップ」です。ですから図は現実には起こりえない震度の分布となっています(9つの地震が一度に起これば別ですが!)。
2つ目は9番目の宇部市役所直下の地震です。
確かに「地震はいつどこで起こるか分かりません」。だからと言って、市役所の真下に活断層を想定する、というのはいかがかなと思います。地表に活断層が現れていないところでも過去に地震は確かに起こっています。ただ、どこでも、ということではなく、ある程度地震が起こる地域は想定されます。
この市町村役場の真下の地震のマグニチュード(M)は一律に6.9とされます。それはMが7以上だとだいたい地表に断層面が現れるはずで、現れていないから6.9にしよう、という理由です。
問題は、このようにあいまいな根拠の地震に対して、宇部市の揺れやすさマップの震度が決定的になっている(最大の震度となっている)ことです。
3つ目は、国の地震調査研究推進本部が活断層と公表している①~⑧番目の活断層です。
実はこれらの活断層のうち、山口県が調査に基づいて確実に活断層と判断して被害想定を行ったものと一致するのは、①菊川断層、④周防灘断層群主部、⑦才ヶ峠断層、⑧宇部東部断層-下郷断層の4つだけです。
これまで国が発表した活断層と、山口県が調査した結果が一致しないことがあり、2度にわたって質問状を県から国に出しています(委員長の私の名前で)。残念ながら必ずしも納得いく回答は得られていません。
これをもって、国を悪く言うつもりはありません。国は全国を対象に、航空写真や論文を基に、断層の可能性があるところを公表しているわけで、山口県のように現場をすべて調査している訳ではないからです。また宇部市も国の方針に従って「揺れやすさマップ」を作成しているわけで、これもごく当然のことなのです。
ただ、私が強調したいのは、活断層による地震は数千年から数万年に1回起こるかどうか、という性質の地震です。
これに対して先週書いた、「南海トラフ地震」や「安芸灘~伊予灘の地震」は数十年~百数十年ごとに繰り返し起こっている地震で、我々の一生のうちにまず確実に体験する大きな地震です。しかも近い将来に迫っています。
この2つの地震は西日本の地下にもぐり込んでいるフィリピン海プレートが動きを止めない限り、将来もずっと繰り返し起こる地震です。まずはこれらの地震に対してこそ、しっかりと備えをする必要がある、ということです。