ハザードマップを読む

宇部日報に連載していた記事です。

記事一覧

宇部市のハザードマップ 宇部市には、以下の6種類のハザードマップがあります。  ①洪水ハザードマップ  ②高潮ハザードマップ  ③土砂災害ハザードマップ  ④揺れやすさマップ(地震による震度の分布)  ⑤ため池ハザードマップ  ⑥津波ハザードマップ 詳しくは https://www.city.ube.yamaguchi.jp/kurashi/bousai/map/index.html をご覧くださ...

 今週から3回にわたって、洪水ハザードマップについて説明します。今週は概略説明、来週、再来週はその前提条件など、少し踏み込んで説明します。宇部市には、厚東川、中川、有帆川、真締川の4河川のハザードマップがあります。このうち、厚東川、中川の2河川がこの4月に更新されました。今回は、厚東川のハザードマップを中心に説明します。更新厚東川ハザードマップ 今回の更新は、最近の豪雨災害の頻発により、平成27年...

 県内には県が管理する河川が108水系474河川あります。いわゆる2級河川がほとんどを占めます。国が直接管理する河川は1級河川といい、山口県を流れる1級河川は佐波川と、広島県との県境を流れる小瀬川の2水系だけです。2級河川が多いのが山口県の特徴です。 この474河川のうち、洪水浸水想定区域図やハザードマップの作成対象は64河川あり、県では、すでに34河川の洪水シミュレーションと洪水浸水想定区域図の...

 先週は、洪水ザードマップの前提となっている降雨量について、確率・統計の“落とし穴”を含めて考え方を説明しました。もう一点、今回更新された洪水ハザードマップの『家屋倒壊等氾濫想定区域』について説明します。 下図はハザードマップの凡例ですが、『家屋倒壊等氾濫想定区域』はこの中央下半分に説明があります。そこには、「洪水時に家屋の倒壊や流出をもたらすような激しい氾濫流や河岸浸食の恐れのある地域です」。そ...

 今週から土砂災害のハザードマップについて説明します。 土砂災害は複雑な災害ですが、一応3つのパターンに分けられます。図は土砂災害のハザードマップに必ず載っている、その3つのパターンです。一つ目は急傾斜地の崩壊 (がけ崩れ)(図-1)、二つ目が土石流(図-2)、三つ目が地すべり(図-3)です。 図には警戒区域(イエローゾーン)、特別警戒区域(レッドゾーン)があり、イエローゾーンの定義が書いてありま...

 先週土砂災害の起こる可能性がある区域として、ハザードマップには、警戒区域(イエローゾーン)、その中でも特に危険な区域として特別警戒区域(レッドゾーン)が指定してあるが、これらの指定範囲を過信してはいけない、ということを書きました。 その理由は、過去実際に土砂災害が起こった場所とハザードマップのイエローゾーンが完全に一致していないからです。これは気まぐれな自然を相手に、過去の観測と科学的な理論をも...

 前2回は雨による土砂災害について書きました。今回は地震による土砂災害について少し触れます。地震によっても土砂災害が起こることは、2018年(平成30年)の北海道胆振(いぶり)東部地震で大規模、そしておびただしい数の斜面崩壊が映像とともに報道されたので、記憶されている方も多いのではないかと思います。写真は厚真町吉野地区の斜面崩壊ですが、これを見たときには衝撃を受けました。写真 厚真町吉野地区の斜面...

 今回からため池ハザードマップです。 ため池ハザードマップは、大雨や地震などにより、ため池の堤防(堤体と言います)が決壊しそうになるなど危険な状態になった時に、ため池の周辺に住んでいる人の自主的な避難行動を支援し、被害の未然防止や軽減を図ることを目的として作成された地図です。 宇部市には、800近いため池があり、約160の「防災重点ため池」があります。この「防災重点ため池」とは、ため池が決壊した時...

 『宇部市には、800近いため池があり、約160の「防災重点ため池」がある。宇部市は現時点で「防災重点ため池」のうち69か所を対象にため池ハザードマップを作成して公表。残りの「防災重点ため池」についても、今後ハザードマップの作成を行う予定とのこと。ということは、現在のため池ハザードマップが作られている69のため池以外のため池も浸水が起こる可能性があるので、自宅の上流にため池がある人は十分注意が必要...

 昨年は、1999年(平成11年)台風18号(以下、台風9918号と呼びます)の高潮災害から20周年の節目の年でした。「NPO法人防災ネットワークうべ」はこの高潮災害をきっかけに、翌2000年11月に設立、活動を始めました。今年が設立20周年ということになります。昨年は宇部市と共催で高潮災害20周年の記念シンポジウムを宇部市多世代交流センター(旧シルバーふれあいセンター)で開催しました。 私にとっ...

 前回は中心市街地の例を挙げて、高潮による浸水深が4、5㍍以上になる場所が広い範囲であることを書きました。今回はその前提条件について説明します。 宇部市高潮ハザードマップの冊子(お持ちでない方は、宇部市のホームページで見ることができます。「宇部市高潮ハザードマップ」で検索して下さい。)の5ページの「3.高潮浸水予測の条件」に概略説明があります。 その最初に、『高潮浸水予測(平成18年山口県実施)は...

 今回はそもそもなぜ高潮が発生するかから説明します。 高潮を起こす主な原因は2つあります。「吸い上げ効果」と「吹き寄せ効果」と呼ばれるものです。 図-1は「吸い上げ効果」を示したものです。台風の中心気圧は周辺部より低いため、周辺部の大気は中心部より強く海面を押し付けます。すなわちあたかも中心付近の大気は海面を吸い上げるように働きます。その結果、台風の中心付近の海面が上昇します。この「吸い上げ効果」...

 これまで、高潮ハザードマップの前提条件などを説明してきました。今回はその結果、どの程度の海水面の上昇を想定しているかを説明します。これによって過去の災害との比較で、危険性をある程度想定できるのではないかと思います。 図-1はハザードマップを作成するにあたって、想定した水位です。この図の説明にあるように、①天文潮位による変化:大潮時の満潮位の平均②台風による潮位変化:潮位偏差と呼ばれるもの③波浪(...

 今週から地震に関するハザードマップについて説明をします。 地震に関連しては、「宇部市ゆれやすさマップ」と「宇部市津波ハザードマップ」がありますが、まずは「宇部市ゆれやすさマップ」から。 「宇部市ゆれやすさマップ」は宇部市の直下、または近くで地震が起こったときの地表面の震度を示したものです。「宇部市ゆれやすさマップ」の作成方法は次回に譲ることにして、今回は震度について説明します。 一般に使われてい...

 今週は「宇部市ゆれやすさマップ」について説明します。 図-1に中心市街地を含む市の南部のゆれやすさマップの一部を示します。これを見て、まずほとんどの方が驚かれると思います。市街地の大半が震度6強。特に埋め立て地の工場地帯は軒並み赤色の、震度7に近い震度6強。興産大橋西側の西沖の山はじめ震度7の場所が市内各地に。(市全体、あるいは詳細は宇部市のホームページ“宇部市ゆれやすさマップ”をご覧ください。...

 先週、山口県が防災計画を立てるために独自に山口大学と数年かけて活断層調査を行って被害想定を行っており、その震度分布が分かっているので、それを説明する、と書きました。 そのうち、近い将来必ず起こる地震が2つの意地震について説明します。 1つ目が「南海トラフの巨大地震」、2つ目が「安芸灘・伊予灘の地震」です。 「南海トラフ巨大地震」は、大きく分けて「東海」、「東南海」、「南海」沖に震源域が3つに分か...

 宇部市の揺れやすさマップは、“まずは起こりえない状況が前提となっています”と書きました。これには3つの理由があります。先々週のこの欄の図か、宇部市のホームページの「揺れやすさマップ」を見ながら読んでください。 理由の1つ目は、その表示の仕方です。 宇部市に影響があると考えられる地震は9つ考えられています。それら9つの地震が起こると、市内各地はそれぞれの地震に対して違う揺れ方をします。すなわち各地...

 今週と来週は津波のハザードマップについて書きます。 宇部市の津波ハザードマップは、平成25年に山口県が発表した、将来発生する可能性が大きい「南海トラフ巨大地震」・「周防灘断層群主部の地震」による津波浸水想定を基に作成されました。 宇部市ハザードマップは全体図と3枚の詳細図(東部、中央部、西部)、さらに詳細な22の地域の拡大図もあります。是非宇部市のホームページをご覧ください(「宇部市津波ハザード...

 宇部市の津波ハザードマップは、「南海トラフ巨大地震」、「周防灘断層群主部の地震」の2つの地震による津波の浸水想定図であることを書きました。 先週の津波ハザードマップは両方の津波による浸水の深い方を図示したものですが、実はこの2つの地震による津波の最高水位あまり変わりません。従って、どちらの地震による津波も大体あのようになります。 しかしながら、両者の津波の特徴には大きな違いがあります。それは震源...

 5月14日の第1回以来、ハザードマップはどのように作られているのか、そしてハザードマップには必ず前提条件があって、限界があるので過信してはいけない、といったことを書いてきました。 実際に目の前で起こりつつある気象現象、たとえば雨の降り方や、台風であれば進路や強さなど、地震であれば震源の位置やマグニチュードなどがハザードマップの前提条件と異なれば、その結果起こる災害は、ハザードマップに記載してある...

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