その134. 山口県地震・津波防災対策検討委員会⑤
様々な前提条件や仮定(それも大胆な)を使って、南海トラフの巨大地震による人的被害を求めたところ、最悪のケース、死者614人、負傷者1477人という結果になりました。
前回(平成26年)の被害想定の結果で、マスコミにも「死者614人」と大きく取り上げられました。
しかし、これまでこのシリーズを読んでこられた皆さんは、これらの数字は本当に信用できるのか?と思われるでしょう。
その通りです。
委員長を務めた私自身が、実際に南海トラフ巨大地震が起こったら、この数字は倍半分、あるいはそれ以上に異なる可能性があると思っているのですから。
被害想定で一番重要なことは、どれくらいの被害が出るか、という最後の数字ではなく、その被害が出るプロセスを明らかにし、被害の元を断つための資料にすることなのです。
それが県、あるいは市の防災計画に反映されます。
表は、人的被害の内容を原因ごとに、また条件ごとにまとめたものです。
上段が死者数、下段が負傷者数です。
原因としては「建物倒壊(屋内収容物移動・転倒)」、「土砂災害」、「火災」、「津波」、「その他(屋外でブロック塀の下敷きになるなど)」です。
一方の条件は、「風速3m毎秒」、「風速15m毎秒」それぞれに対して、地震の発生時刻が「冬の深夜」、「夏の12時」、「冬の18時」の計6ケースです。
この中で最も犠牲者が多いのが、夏の12時の死者614人、負傷者は冬の深夜の1477人です。
この表から様々なことが考えられます。
今回は最も死者の多い夏の12時の津波について説明します。
夏の12時は、昼食のために多くの人が家の中にいる、多くの人が海水浴を楽しんでいる、という前提です。
それら津波に襲われる可能性のある人数に、すぐ避難する人の割合20%、しばらくして避難する人の割合50%、避難しない人の割合30%を掛けてこの数字は出ています。
この割合は過去の実績から出されています。
過去の避難の実績はどうであれ、みんながすぐに避難すれば、犠牲者はゼロにできるのでは、と思われるでしょうね。
そうなんです。
ゼロにできるのです。