19 津波ハザードマップ②

 宇部市の津波ハザードマップは、「南海トラフ巨大地震」、「周防灘断層群主部の地震」の2つの地震による津波の浸水想定図であることを書きました。
 先週の津波ハザードマップは両方の津波による浸水の深い方を図示したものですが、実はこの2つの地震による津波の最高水位あまり変わりません。従って、どちらの地震による津波も大体あのようになります。

 

 しかしながら、両者の津波の特徴には大きな違いがあります。それは震源までの距離による違いです。
 「南海トラフ巨大地震」の震源は四国沖はるか、「周防灘断層群主部の地震」の震源は防府市・周南市の沖から国東半島の西側の北東-南西の方向に想定されています(断層の位置は宇部市のホームページ、『津波ハザードマップ』をご覧ください)。
 この距離の違いによって、地震が発生して津波が宇部に到達するまでの時間に大きな差が生じます。

 

19 津波ハザードマップ②

図-1 南海トラフ巨大地震による津波の時刻歴(宇部港)

 

19 津波ハザードマップ②

図-2 南海トラフ巨大地震による津波の時刻歴(丸尾港)

 

19 津波ハザードマップ②

図-3 周防灘断層群主部の地震による津波の時刻歴(宇部港)

 

 

 図-1は宇部港における南海トラフ巨大地震による津波の時間的変化(時刻歴)、図-2は丸尾港における時刻歴です。図-3は宇部港における周防灘断層群主部の地震による津波の時刻歴です(横軸の時間が違うことに注意。図は山口県地震・津波防災対策検討委員会資料より(委員長:私))。

 

 これらの図から以下のことが分かります。
①南海トラフ巨大地震による津波は、まず潮が引く(水位が下がる)のに対して、周防灘断層群主部の地震による津波は、いきなり水位が上昇する。
②南海トラフ巨大地震による最高水位は、宇部港で389分(約6時間半)後、丸尾港で306分(約5時間)後であるのに対して、周防灘断層群主部の地震による最高水位は約35分後である。
③同じ南海トラフ巨大地震でも時刻歴は港によってずいぶん異なる。
④そして最高水位は必ずしも第1波ではない。宇部港の南海トラフ巨大地震による水位は約240分(4時間)後に、また丸尾港では155分(約2時間半)後に最高水位とほぼ同じ水位の第1波が押し寄せる。

 

 以上から、次のようなことが言えます。
①近い将来必ず起こる南海トラフ巨大地震では、宇部の海岸に津波が押し寄せるには2時間以上の時間がある。従って、慌てずに避難すれば大丈夫。
②このシミュレーション結果は、長さが約900㎞ある南海トラフでも、山口県に一番近い場所で地震が発生したケースなので、実際に起こる地震ではもっと時間に余裕があることが考えられる。
③周防灘断層群主部の地震では津波の到達にあまり時間がないので、すぐに避難する必要がある。活断層なので、発生する確率は南海トラフ巨大地震よりもかなり低いが、万一のことも考えておく必要がある。

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