その22 これからのハザードマップ①

1.今の防災マップの限界

 

 2月9日の第1回以来、防災マップ(防府市は『防災マップ』と呼んでいますが、『ハザードマップ』と呼んでいるところもたくさんあります)はどのように作られているのか、そして防災マップには必ず前提条件があって、限界があることを理解したうえでどのように活用するか、といったことを書いてきました。

 

 実際に目の前で起こりつつある気象現象、たとえば雨の降り方や、台風であれば進路や風雨の強さなど、地震であれば震源の位置やマグニチュードなどが防災マップの前提条件と異なれば、その結果として起こる災害は、防災マップに記載してある予測とは違ったものになる、ということです。

 

 このような観点から、防府市が公表している5つの防災マップ、①高潮編、②洪水編、③土砂災害編、④地震編、⑤津波編のそれぞれについて、前提条件や読むときに注意すべき点、活用法を書いてきました。

 

 防災マップには限界があるので過信してはいけないとはいえ、自分の身を守る、家庭の防災を考える、企業の防災計画や事業継続計画を立てるときには、防災マップはなくてはならないものです。
 非常に多くの情報がちりばめられています。
 防災マップは地図を「眺めるもの」ではなく、しっかりと「読みこむもの」なのです。

 

 できれば、前提条件を理解したうえで、その前提条件が変われば、その結果は防災マップの予測とどう異なってくるか、そこまで読み込んでいただけると、防災マップをマスターしたといえるでしょう。
 そこまでいかなくても、防災マップが防災上必要不可欠なもの、ということはいくら強調しても強調しすぎることはないのですが、残念ながら大きな欠点がありますそれは洪水、高潮、土砂災害など、“災害ごとに”マップが作成され、紙に印刷して配布されているということです。

 

 

2.これからの防災マップ

 

 例えば、台風がやってきて大雨が降れば、大雨によって洪水や土砂災害が起こります。
 さらに満潮時と重なれば高潮災害も起こる可能性があります。
 現在の紙に描いてある防災マップは重ねて見ることができません。
 縮尺も違います。
 また内水(雨水が排水されずに低い土地にたまる災害)の防災マップはありませんが、実際よく起こっています。
 これらを重ねて見ないと、よほど想像力のある人か、専門家でないと本当の意味での危険性は分かりません。

 

 実はそれを可能にする技術があります。
 「地理情報システム」(GIS: Geographic Information System)がそれです
 これは一言で言いますと、地図をコンピュータで表すもので、異なる地図を何枚も重ねたり、透かしたり、色を着けたり、縮尺を変えてみる、などさまざまなことができます。
 国土地理院の標高を表す地図を使って内水の可能性のある場所を検討することもできます。

 

 次回、最終回にGISを使ったハザードマップの例とその可能性を説明したいと思います。

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