その21. 海底でいち早く地震と津波をキャッチ③
これまで2回にわたって、海洋研究開発機構が開発と設置をし、防災科学技術研究所が運用を行っている「DONET1」と「DONET2」という地震と津波の海底観測システムの紹介をしてきました。
15日を中心にトンガ王国で大規模な火山噴火が起こり世界を驚かしましたが、この噴火によって我が国にも津波が押し寄せてきました。
津波の高さそのものは1m前後でしたが、多くの船が転覆したり、養殖いかだに大きな被害を与えるなど、改めて津波の脅威を感じました。
通常、津波は地震によって海底が上下に動き、海水もそれに従って上下に動き、それが波となって周辺に伝わっていく、あるいは地震や火山の噴火によって山の斜面が大崩落を起こし、その大量の土砂が海に滑り落ちて波を起こしてそれが伝わっていく、などして起こります。
ところが今回は火山の大噴火によって空気が衝撃波となって伝わり、その衝撃波が海面を押して波を起こしたようです。
詳しいメカニズムはこれからの研究になると思いますが、通常の津波よりも早く伝わったり、周期が短かったり、といった特徴を持っていたようです。
図は防災科学研究所のホームページにある図に私が少し加筆したもので、15日の日本の太平洋側の海底の水圧計の記録を示したものです。
「DONET1」、「DONET2」が見事に圧力の変化、すなわち今回の津波をキャッチしていることが分かります。
図には、「S1」~「S5」」の記録もあります。これらは防災科学技術研究所が日本海溝、千島海溝に設置した観測システムです。
この図より、「DONET1」、「DONET2」、「S1」というトンガ王国に近い南側の観測点の水圧にまず変化が起こり(20時少し前)、その変化がS2、S3、S4、S5と北になるにしたがって遅れて起こっていることが分かります。
このことはトンガ王国から伝わってきた津波がだんだん北上して行ったことを意味します。
今後研究が進んで、この水圧の変化が津波の予報に使われるのではないかと期待しています。