その133. 山口県地震・津波防災対策検討委員会④
先週は様々な仮定(それも大胆な)を使って、震度分布を求める所まで説明しました。
震度分布が求まると、次にこの震度を用いて各地の被害を求めます。
例えば、図-1は、過去の震災調査を基に求められた計測震度と木造家屋の全壊率の関係です。
図には、①旧築年、②中築年、③新築年の3本の曲線が描かれています。
①旧築年は1961年以前に、②中築年は1962年~1981年の間に、③新築年は1982年以降に建てられた木造家屋の全壊率です。
1961年に耐震基準が改訂され、1981年には大幅に耐震基準が改訂されています。
以下具体的に3本の曲線を用いて全壊家屋数を計算する方法を説明します。
ある地区(正確には250m×250mのメッシュ)の計測震度が6.5だったとします。
図には分かりやすくするために6.5の所に縦の線を引いています。
図より、①旧築年の全壊率は0.8、②中築年の全壊率は0.6、③新築年の全壊率は0.15です。
この地区に①旧築年の家屋が50戸、②中築年1962~1981年の家屋が100戸、③新築年の家屋が100戸あるとします。
全壊家屋は、50戸×0.8+100戸×0.6+100戸×0.15=40+60+15=115戸となります。
このような計算を山口県全域について計算します。
このように書くと実に精密な計算を行っているように見えます。
確かに計算は精密なのですが、その前提がまた大胆なのです。
図では分かりにくいのですが、3本の曲線の周りには実際に調査した一戸一戸の点が分布しています。
相当なばらつきがありますが、平均的なところをエイヤっと3本の曲線で表しているのです。
このような曲線を被害関数と言います。
実際の被害は被害関数の倍、半分くらいのばらつきはあります。
実はこのようにして求めた全壊家屋から、火災の発生数、負傷者数、死亡者数などを計算します。
その時は横軸に全壊率を取って、縦軸に火災発生率、あるいは負傷者率を取って、同様に被害関数をエイヤっと決めて、火災発生数、負傷者数、死者数などを計算します。
以上説明してきたように被害想定は何重にも大胆な仮定のもとに計算されていますから、最後に出てきた数にはかなり幅があると考えなければなりません。
そんなに幅がある、信頼性の低い結果を出して意味があるのか、という問いが当然出てくると思います。
実は、それが大いに意味があるのです。
そのことは次回に。