その70. 南海トラフ巨大地震に備える⑤
先週は、南海トラフ巨大地震が起こった時に山口県に到達する津波そのものの高さは1m前後であること、そして、高潮災害の多い山口県では高潮対策のために、これ以上の高さに堤防が整備されていること、したがって一見高さ的には津波の心配はいらないように思えるが、実はそうならないところが災害の難しいところがある。
ということを書きました。
図は阪神・淡路大震災の時に神戸港で記録された地震記録(正確には加速度記録)と東日本大震災の時に仙台港で記録された地震記録です。
十数秒で終わっているのが阪神・淡路大震災の記録、180秒以上続いているのが東日本大震災の記録です。
阪神・淡路大震災のマグニチュード(M)が7.3、東日本大震災はM9.0でした。
両者の大きな違いは揺れの長さ(継続時間と言います)です。
実は、Mが大きくなると、振幅はあまり大きくなりませんが、継続時間は長くなります。
特に今度起こると考えられている南海トラフ巨大地震のMが9程度ですと、その継続時間は東日本大震災の時と同じか、むしろ長くなると想定されています。
すなわち強い揺れがずっと続きます。
繰り返し、繰り返し、東西方向、南北方向、上下方向に不規則に地面が揺れます。
そうすると地盤の柔らかいところ、すなわち埋め立て地や干拓地、むかし川や池だったところでは液状化が起こります。
液状化が起こると、地面が泥水のようにドロドロになるわけですから、もはや重い堤防などの構造物を支えることができなくなります。
すなわち、堤防が沈んだり傾いたりし、もはや堤防としての機能を果たすことができなくなります。
実は、継続時間の短かった阪神・淡路大震災の時も非常に広い範囲で液状化が起こり、神戸港や六甲アイランド、ポートアイランドの堤防が大きな被害を受けました。
阪神・淡路大震災でもそうでしたから、その何倍も揺れが続く南海トラフ巨大地震では、さらに液状化による堤防の被害が考えられるのです。
この点は十分な警戒と備えをしなければなりません。