その23. 火山噴火と飢饉
今回のトンガの火山の大噴火で気になることがあります。
それは火山の噴火が気温の低下をもたらすのいではないか、と言うことです。
1991年6月、フィリピン・ルソン島のピナツボ火山が大噴火を起こしました。
その規模と激しさは20世紀最大級と言われています。
その噴火によって大量の微粒子が成層圏に放出され、硫酸エアロゾル層を形成し、何か月間も残留しました。
この硫酸エアルゾルは太陽光を吸収する作用を持っていて、そのため地球の気温が約0.5℃下がったといわれています。
図は日本のある北緯30~40度における硫酸エアルゾル濃度と気温偏差(平年の気温との差)を示したものです。
この図からわかるように、ピナツボ火山が噴火した直後から硫酸エアロゾルの濃度が急上昇し、時を同じくして気温が低下しています。
この緯度では0.6°Cの低下となっています。
噴火の2年後、日本は冷夏のため米が凶作、大量の米を海外から輸入することになりました。
覚えている方もいらっしゃることと思います。
火山の噴火と凶作、あるいは飢饉という話は実は日本の火山の噴火でもあるのです。
天明3年7月8日(西暦1783年8月5日)、浅間山が大噴火を起こしました。
このとき発生した火砕流で現在の群馬県吾妻郡嬬恋(つまごい)村鎌原(かんばら)では一村152戸が一瞬のうちに飲み込まれて483名が死亡、日本のポンペイとも呼ばれています。
この年は岩木山も大噴火を起こし、両火山の噴火は、火山灰などの直接的な被害だけでなく、日射量低下による冷害をももたらすこととなり、農作物には壊滅的な被害が生じました。
このため翌年から深刻な飢饉状態(天明の飢饉)となったのです。
今回のトンガ王国の大噴火によっても気温の低下が懸念されます。
が、その一方で、海底火山だったので、大気中に放出されたエアロゾルの量は海水に吸収され、ピナツボ火山の50分の一という速報もあります。
いずれにせよ、注意をしておく必要があります。