その31. 東日本大震災その後・東北新幹線の脱線
3月16日の地震で私が驚いたのは、新幹線(東北新幹線「やまびこ223号」)が脱線したことです。
それも17両中16両が脱線、しかも高架橋にも被害が生じていたことです。
今回の地震よりはるかにエネルギーの大きい(約250倍)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の時には新幹線は脱線しませんでしたし、高架橋も被害はありませんでした。
東北新幹線には図に示すように、主な地震対策が3つあります。
一つ目は①地震早期感知システム、すなわち地震を感知するとブレーキをかけて速度を落とす仕組み、二つ目が②耐震性の高い高架橋、そして三つ目が③脱線防止対策(逸脱防止ガイド)です。
実は1978年の宮城県沖地震の時、東北新幹線は建設中でした。
その高架橋に被害が生じたため、急遽耐震性を高めて建設されました。
脱線防止対策は、2004年の新潟県中越地震で上越新幹線「とき325号」が脱線、これを教訓に設置されるようになりました。
東北地方太平洋沖地震のときはこれらの対策がうまく働き、一両も脱線しませんでした。
ところが今回は②の耐震性が高いはずの高架橋に被害が生じ、③の脱線防止対策も結果的に機能しませんでした。
①に関しては機能はしましたが、新幹線が駅の手前で速度が低かったということもあるようです。
地震の波には個性があって、上下動が強い波、横揺れが強い波、さらにはその地震波に最も多く含まれている波の周期、卓越周期といいますが、これも大きな個性の一つで、これと、構造物が最も揺れやすい周期、固有周期といいますが、これら卓越周期と固有周期が近いと共振現象を起こし、構造物は大きく揺れ、場合によっては被害が生じます。
詳細は今後の研究を待つ必要がありますが、上下動やこの共振現象も被害や脱線の原因の一つではないかと思っています。
いずれにしても今後の研究成果を活かして、さらなる安全性を実現してほしいと願っています。