その82. トルコの地震の教訓③
先週は日本建築学会が、熊本県地震で被害の大きかった益城町周辺の全家屋の被害状況を調査した結果、以下のことが分かったことを紹介しました。
①1981年の耐震設計基準の改定前に建てられた木造家屋、いわゆる「旧耐震」で建てられた木造家屋の「倒壊、崩壊」率は28.2%と非常に高かった。
②1982年以降、改定後の新耐震設計基準(「新耐震」)で建てられた木造家屋のうち、2000年前に建てられた家屋の「倒壊、崩壊」は8.7%であったのに対して、2000年以降に建てられた家屋の「倒壊、崩壊」率はわずか2.2%であった。
③逆に、「無被害」の割合は、旧耐震が5.1%と非常にわずかであったのに対して、新耐震の2000年前は20.4%、新耐震の2000年後は61.4%にも上っている。
では、このように被害に大きな差を生じた2000年基準ではどのようなことが変わったのでしょうか?
木造家屋では土台と柱、あるいは柱とはり、筋交い(すじかい)との接合部が、重要な役割を果たします。
図-1(a)は接合部が釘などで固定されているだけですが、これでは地震の揺れに対して十分ではありません。
そこで2000年基準では、図-1(b)に示すように、接合部を金具で固定することになりました。
また壁の強さのバランスを考えることが導入されました。
具体的には図-2に示すように、壁面ごとに、(窓のない壁の長さ)÷(壁の長さ)が0.3以上になるように求めています。
図(a)はC面がNGの例で、図(b)は全ての面が0.3以上でO.K.の例です。
このほかに、基礎に「ぬの基礎」や「ベタ基礎」などの十分鉄筋の入った強い基礎にするといったことも導入されました。
最近の木造家屋はこれらのことは満足して建てられているはずですが、手入れが悪い、あるいは湿気の多い地盤ですと早く土台や柱などが朽ちてしまう、といったことがありますので、一度異常はないかチェックをお勧めします。