第五十三段:首都直下地震が近い ~平成25年中央防災会議の地震被害想定~
先週は、今月7日の夜10時過ぎに関東地方で起こった地震がイヤーな、本当にイヤーな地震だということを書きました。
その原因である首都直下地震についてこれから数回にわたって書いてみたいと思います。
首都直下地震の被害想定は、過去何度も行われています。
これからお話しする内容は平成25年(2013年)12月に、国の中央防災会議の中の「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」が取りまとめた『首都直下地震の被害想定と対策について』(最終報告)にあるものです。
この報告書はホームページにもありますので、どなたでも見ることができます。
このワーキンググループは、1600年以降の過去に関東地方で起こった地震を詳細に調べ、今後起こる可能性の考えられるマグニチュード(M)7クラスの地震を19こ想定し、それぞれに対して震度分布や想定される被害を算出しています。
1600年以降、と言うのは江戸時代が始まって以降、ということで、それ以前はあまり詳しい記録がないからです。
それら19の地震の中で最も被害が大きいのが、「都心南部直下地震」で、その震度分布と震源となる断層の位置を示したのが付図です。
これによると地盤の柔らかい東京湾の沿岸部、そして荒川水系や多摩川水系周辺では内陸の方まで高い震度が分布しています。
図 都心南部地震による震度分布と震源断層の位置
この地震が「冬・深夜」(多くの人が寝ている時間帯)、「夏・昼」(多くの人が町中にいる)、「冬・夕」(火を多くの場所で使っている)の3つの時間帯に起こったとして、死亡の原因ごとにまとめたのが付表です。
表 都心南部直下地震における人的被害
建物の倒壊等による死者は「冬・深夜」が、急傾斜地崩壊による死者も「冬・深夜」が最も多く、火災による死者は「冬・夕方」が最も多くなっています。
火災による死者は風速によって延焼範囲が違いますので、風速が大きい方が沢山の人が亡くなることになります。
そのほかブロック塀や自動販売機の転倒なども「冬・夕」が最も多くなっています。
これらを合計した数字は、「冬・夕」で、最悪の場合、23,000人という結果になっています。
ここで注意が必要なのは、表の一番下の欄で、壊れた建物に閉じ込められ、自力で脱出できない人の数です。
冬の深夜は72,000人と想定されています。
救助が進まない場合、残念ながらこの数字は死者の数字に加算されます。
死者数合計の数字にこの自力脱出困難者の数を加えると、場合によっては、「冬・深夜」で約90,000人、「冬・夕」で約81,000人、最も少ない「夏・昼」でも約60,000人以上となります。
この数字を皆さんはどう思われますか?