第十七段:阪神・淡路大震災から26年 ~その一年前のノースリッジ地震と阪神・淡路大震災~
実は阪神・淡路大震災の起こった1995年1月17日のちょうど1年前の1994年1月17日(アメリカ西海岸の時間で)、ロサンゼルス北東部で地震が起こりました。
テレビや映画でよく山の斜面に白い文字「HOLLYWOOD(ハリウッド)」の看板を見ることがありますが、地震はその山の北側、サンフェルナンド・バレー(バレーとは渓谷という意味で、確かに遠く山に囲まれていますが、とても広い平野で日本人の感覚ではとても渓谷、という感じがしません)にあるノースリッジというところが震央だったので、ノースリッジ地震と名づけられました。
マグニチュードは6.7。阪神・淡路大震災より0.6マグニチュードが小さな地震でした。
マグニチュードが0.2違うとエネルギーは約2倍違います。0.6違うということは、0.2の3倍、すなわちエネルギーは、2倍を3回かけ合わせて、2倍x2倍x2倍=8倍違う、すなわち、ノースリッジ地震のエネルギーは阪神・淡路大震災の約8分の1ということになります。
ノースリッジ地震の震源は阪神・淡路大震災と同様、活断層が動いて起こった地震で、震源の深さは約15㎞と浅い所でした。
死者61名、負傷者5400人という多くの犠牲者がでました。
この地震の被害の特徴は、電機、ガス、水道などのいわゆるライフラインの被害、そしてマスコミなどで大きく報道された高速道路の高架橋の落橋や崩壊などでした。
これら高架橋の被害を見て、橋の耐震を専門とする日本の研究者が「日本ではこのような被害は起こらない」と言い、マスコミにも取り上げられました。知人のコメントを私もテレビで見ました。
実は、私もこの地震の被害調査に学会の調査団の一人として、地震発生から2か月後の3月に現地を訪れました。私の調査の担当は上水道と下水道施設の被害でしたが、当然高架橋の被害の様子も見ることができました。
写真 ノースリッジ地震で倒壊した高速道路(Free way)
第一印象は、柱(橋脚)は細い、鉄筋量が少ない、といったことで、正直、私もこれでは被害が出てもおかしくない、そして件(くだん)の橋の耐震の専門家と同様、日本ではこんな橋の被害は起こらないだろう、と思ったのです。
ところがちょうど1年後に神戸で同様に高架橋の倒壊が起きました。
まさか、というのが実感でした。
その後の調査で、耐震設計に使った地震力をはるかに超える地震力が高架橋をはじめ多くの建造物に作用したことが徐々に明らかになっていきました。
これはその後の耐震設計の考え方を根本から大きく変えることになりました。