第百二十三段:トルコの地震②
先月2月6日、シリアとの国境に近いトルコの東部で地震がおこり、大災害になりました。
その時の最初のM7.8の地震のエネルギーは、わが国で起こった熊本地震の約16倍、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の約22倍という非常に大きなものであった、ということは先週書きました。
図-1は今回のトルコの地震と、わが国で起こった地震で記録された速度と加速度を比較したものです。
図中、〇が今回のトルコの地震、□がわが国で起った直下地震(熊本地震、兵庫県南部地震、中越地震、中越沖地震)、そして×が東北地方太平洋域地震(東日本大震災)で観測された記録です。
縦軸が最大速度(cm/s、以下カイン)、横軸が最大加速度(cm/m/m、以下ガル)です。
この図より最大速度は100カインを超えた所がたくさんあり、200カインを超えた所もあります。
日本の直下地震のカインと同等かそれ以上です。
一方の最大加速度も1800ガルに近い記録もあり、日本の直下地震と同等、東北地方太平洋沖地震の最大加速度にも匹敵しています。
ニュース等では最大加速度“ガル”が良く取り上げられます。
これは加速度αに質量mをかけると力fになる、式で書くとf=mαですが、要は構造物にかかる地震の力fは加速度αに比例する、という所から来ています。
加速度に比例して地震力も大きくなる、ということです。
一方で、構造物の被害は加速度よりもむしろ速度の方がキクということが分かっています。
それは少し難しくなりますが、構造物に作用する力の継続時間に関係します。
一瞬ポンと力がかかるよりも、ずっと力がかかっている方が壊れやすくなるわけです。
図-2は断層近くで観測された速度記録で、左の列は地表面がどのように動いたか(縦が南北、横が東西)、右の列が時刻歴です。
時刻歴を見ると、100~200カインのパルスのような波形があります。
この継続時間が1~2秒、これが構造物の倒壊に大きな働きをしたと考えられます。
トドメを刺す、と言う意味で“キラーパルス”と呼ばれます。
このように地震波そのものが非常に大きかったということも大災害になった理由の一つですが、他にも大きな理由があります。
それは次回以降に。