第二百八段:地震直前予知への挑戦⑥
閑話休題
少し時間が空きましたが、これまで地震の直前予知に取り組んでこられた弘原海先生、池谷先生、早川先生たちの研究を紹介してきました。
今回は東京大学名誉教授の村井俊治先生(写真-1)の研究を紹介します。
村井先生は人工衛星による地球観測、すなわち、衛星リモートセンシングに日本で最初に取り組まれた先生です。
そのご縁で親しくお話をさせて頂きました。
ですから村井先生もいわゆる伝統的な地球物理、地震学の研究者ではありません。
しかしながら人工衛星からのデータを扱っておられますから、衛星から送られてくる電波に着目、やはり地震の直前には電離層の異常などによって衛星からの電波に変化が現れることをキャッチして地震の直前予知に使うことを試みておられます。
村井先生と早川先生の違いは、早川先生が独自の観測網を展開されているのに対して、村井先生はGPSの人工衛星や日本版GPSといわれている「みちびき」からの電波を受信する電子基準点(写真-2)を使っておられることです。
この電子基準点とは国土地理院が地表の動きを観測するために、全国に約1300か所設置しているものです。
ですから観測網は日本全国にかなりの密度であるということになります。
村井先生はそのほかの現象、例えば地殻の異常な変動(これを観測するのが電子基準点の本来の目的)、低周波の観測など(図-1)さまざまな現象を総合的に判断して予知を試みられています。
その結果、8月8日に起こった日向灘の地震については、8月7日に「エリア:九州地方、時期:9月4日まで、規模:M6±0.5、と予測して公表されています。
結果はご存知の通り、エリア:宮崎県沖、時期:8月8日、規模:M7.1とほぼ合っています。
村井先生は「『地震の予知ができない』は、もはや過去の常識?」とも言われています。
ただ、欲を言うと、もう少し高い精度が欲しいというのが実感ではないでしょうか。
その期待に応える研究成果が最近出始めています。
このことは次回以降に。
さて、弘原海先生、早川先生、村井先生の共通点は、自分で会社を興して費用を工面されていることです。
本来ならばこのような重要なことは国が予算をきちんとつけて進めるべきではないかと私は思うのです。