第九十二段:線状降水帯予測③

 「線状降水帯」の予測情報が、九州・山口に7月15、18日に相次いで発表されました。
 気象庁が6月1日に予測情報を発表する運用を始めてから初のケースです。

 

 15日午前10時半、山口を含む九州北部と南部に「15日夜から16日午前中にかけて線状降水帯が発生して、大雨災害の危険度が急激に高まる可能性がある」と発表しました。
 が、結果的に線状降水帯は発生しませんでした。

 

 一方、18日の午後4時46分、気象庁は再び山口と九州北部・南部に19日午前にかけての予測情報を発表しました。
 今度は、18日深夜から19日明け方にかけて、山口、福岡、佐賀、大分で相次いで線状降水帯が発生しました。

 

 ここ数日(この原稿を書いている10日前後)、東北地方、北海道で豪雨が続いています。
 線状降水帯が発生していますが、予測情報は発表されていないようです。

 

 予測技術の開発には、先週も書いたように大気中の水蒸気を正確に観測することがカギとなります。
 そのために水蒸気を観測するマイクロ波放射計を新たに設置し、既存の気象レーダーやアメダスの整備などの陸上観測を強化するとともに、これまで観測地点がなかった海上は、人工衛星を使った観測システムの運用を始めています。
 そしてこれらの膨大なデータを世界トップクラスのスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」を用いて解析、天候のシミュレーションが行われています(写真)。

 

第九十二段:線状降水帯予測③

 

 この手法で2019年から21年に発生した線状降水帯をもとに検証したところ、予測の的中率は25%であったとのことです。(以上、気象庁のホームページを参考)
 75%は大手マスコミの好きな言葉「空振り」ということです。

 

 「精度はまだ高いとは言えませんが、大雨の危険性が高まっていることを知らせる意味のある情報。
 気象情報に注視して、気をつけるきっかけになる情報だと思っていただきたい」
と気象予報士の斉田季実治氏(NHK)もおっしゃっています。
 私も全くそう思います。

 

 京都大学防災研究所の矢守先生も非常にいいことを言っておられます。
 「『空振り』ではなく『素振り』と言いましょう」と。
 今甲子園で熱戦が繰り広げられています。
 バッターボックスに入る前に選手は素振りをしっかりとしています。
 半世紀以上前に高校球児だった私も、今はバットをゴルフクラブに持ち替えて素振りをしています。
 ちなみに私の高校時代の打率も2割5程度。
 気象庁に親しみを感じます。
 頑張れ気象庁!

 

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