第六十二段:大規模災害に備える ~日本海溝・千島海溝における巨大地震の可能性~
新年明けましておめでとうございます。
昨年12月21日、政府は日本海溝・千島海溝における巨大地震の可能性を発表しました。
その人的被害は最大19万9千人、経済被害は31兆円以上ということです。
南海トラフ巨大地震の人的被害は最悪の場合32万人、経済被害は200兆円超、首都直下地震のそれらはそれぞれ2万3千人、100兆円超ということです。
新年早々こういう話ですみません。
政府はこのように被害想定を公表していますが、単に被害想定をするだけでなく、これを被害を最小限に食い止めるための重要な情報と位置付けています。
すなわち敵の姿を明らかにしている、ということなのです。
実は一番の問題は国民があまり危機感を持っていないことのように思えます。
それは大手のマスコミにも責任があるような気がします。
政府が発表するとニュースとしては流しますが、それで終わり。
この危機をどう日本全体で克服するか、という論調はまずありません。
これだけの危機に面しているわけですから、マスコミはしつこく、しつこくその危機を説明し、国民が準備をするように報道を続ける役割があると私は思うのですが。
国は被害想定をするだけでなく、その対策として国(国の研究機関や大学等)がどのような準備をしているのか、JAXAの衛星データの利活用もそうですが、海底地震・津波観測システムの展開もそうです。
これから数回にわたって海底からの観測について紹介します。
図は日本海溝から千島海溝に至る東日本太平洋沖に設置されている地震・津波観測ネットワークです。
このネットワークは、「日本海溝海底地震津波観測網」という名称で、通称S-netと呼ばれています。英語ではSeafloor observation Network for Earthquakes and Tsunamis along the Japan Trenchという名前です。
地震計と津波計(水圧計)が一体となった観測装置を光海底ケーブルで結び、この海域で地震が起こると即座にその観測データを地上に送り、一刻も早い人々の安全行動へと結びつけようというものです。
観測装置は150か所、ケーブルの総延長は5,500㎞に及びます。平成29年度から、国立研究開発法人・防災科学技術研究所がこれらを管理・運営をしています。
S-netは場所が東日本なので我々の生活圏から少し離れていますが、いずれにしても私たちはこれらの情報をうまく活用し、身の安全を確保するということが非常に重要です。