第百五十八段:関東大震災から100年③土砂災害、津波による被害
関東大震災では、ちょうど今から5年前に起こった北海道胆振東部地震と同様に、東京都、神奈川県、千葉県、山梨県、静岡県の山沿いの非常に多くの場所で斜面崩壊などの土砂災害が発生しました。
特筆すべき災害の例としては、神奈川県小田原市白糸川で起こった斜面崩壊が山津波(岩屑流)となって、小田原市根府川沿い集落の123戸中64戸を埋没させ、300人を超える犠牲者を出したものです。
この山津波は約6kmを5分程度(時速70㎞以上)で流下するというものすごい速さでした。
これとは別に、やはり小田原市の根府川駅では、そのときちょうど通りかかっていた列車が駅舎・ホームもろとも土石流により海中に転落し、100人以上(一説では200人以上)の死者が出ました。
写真‐1はかろうじて海中に転落せず、斜面の途中に残った列車です。
更に、9月12日から9月15日の大雨によって 166箇所の土砂災害、12箇所の河道閉塞が発生し、土砂災害による死者は1,000人以上、建物約500戸に被害が及んだということです。
津波も発生しています(写真‐2)。
その高さは静岡県熱海市で 6m、千葉県相浜(現在の館山市)で 9.3m、洲崎で8m、神奈川県三浦で6m。
鎌倉市由比ケ浜では局地的に9mに達したと言われています。
関東大震災では建物の倒壊と火災による被害が甚大で、津波と地震動や土砂災害の被害を分離することが困難なため、津波に関する報告の全体像は明確になっていません。
それでも鎌倉の由比ケ浜では300人の行方不明者が出たということです。(Wikipedia:関東大震災津波被害)
関東大震災による強い揺れ、度重なる強い余震、大規模な火災、また今回紹介した広範囲にわたる土砂災害、そして高い津波によって、家屋はもとより、電気、水道、ガス、道路、鉄道、通信といったライフラインも壊滅的な被害を受けました。
これが人々の安否確認を不可能にし、行政の対応をも不可能にしました。