第三十六段:衛星データを防災に活かす ~神風が吹く、JAXAの衛星データが山口県へ~
山口県へJAXA(宇宙航空研究開発機構)の衛星データが来ることになった経緯をお話していますが、少し補足説明を。
まずアンテナの直径の話から。
山口市仁保にあるKDDIのアンテナ(直径が30m以上あります)が有名なので、皆さん、衛星データを受信するというと、あのアンテナを思い浮かべられると思います。
ところが産業技術センターに設置されたJAXAのアンテナの直径はわずか1.1m(写真)。
産業技術センターに設置された直径1.1mのアンテナ
実は現在運用中の地球観測衛星「だいち2号」から地上に送られるデータは、非常に大量なので、データ圧縮という技術を使って、ピンポイントでつくばにあるJAXA宇宙センターに送信されています。
このピンポイントで、ということで「だいち2号」から直接山口県は受信できないのです。
そこで、つくばが使えないといった非常時には、通信衛星「きずな」を経由して、「きずな」から山口県へデータを降ろすということになりました。
「きずな」からのデータも圧縮して送られるので、1.1mで大丈夫、ということなのです。
ただ、「きずな」の役割も終わり、現在は1.1mのアンテナはなくなりました。
次は文部科学省の女性担当副課長さん。
なかなかの美形で、私は勝手に「Cold Beauty(冷たい美人)」と呼んで、いかにCold Beautyを説得するか、想定問答をしながらいろいろと考えました。
ほどなく彼女も応援する一人になって下さいました。
JAXAの衛星データが山口県に来るタイミングで、大学内に新しく「応用衛星リモートセンシング研究センター」を立ち上げました。
それまでの経緯で、私が初代センター長を務めることになりましたが、すぐにセンター主催の国際シンポジウムを開催しました。
彼女は前日から宇部に出張して、翌朝の開会式でお祝いの挨拶をして下さいました。
そして「大きく育ててくださいね」とも。
山口市内で開かれたあるパーティーで、県の元総務部長さんとお話をする機会がありました。
元部長さんが気さくな人柄ということや、酔った勢いも手伝って、こう言いました。
「私は、県にだいぶ貸しがある。JAXAのデータを山口県に誘致するとき、県の人と一緒にずいぶん東京へ行ったが、自分の旅費は全部自分が出した。本来県が出張旅費を出してくれるべきではないの?」
間髪を入れず、元部長さん、
「三浦先生の夢の実現に県はお手伝いしたんですから、先生の旅費は先生が出して当たり前ですよ」
なんという鋭い切り返し。
さすが総務部長を務められただけのことはある、と私私はすっかり感心してしまいました。
現在、JAXA、山口県、山口大学の間で三者協定が結ばれています。
その協定には、山口県と山口大学は「だいち2号」およびその後継機のデータは、防災、教育、研究開発の目的であれば無料で使ってよい、という項目があります。
三者協定の締結には当時県の総合企画部審議官だった福田浩治さんが主にJAXAと交渉されたのですが、「およびその後継機」という文章を入れて頂いたことで、私たちはほぼ未来永劫にJAXAのデータが無料で使えることになったのです。
福田さんはのちに商工労働部長を務め、現在はやまぐち産業振興財団の副理事長を務めておられます。
県には人材がそろっています。