第百二十五段:トルコの地震④

 シリアとの国境に近いトルコの東部での地震、大災害になった一つ目の理由が強烈な地震の揺れであったということ、二つ目の理由が建物が脆かったということ、これらについて先々週、先週書きました。
 そして今回は三つ目の理由を書きます。

 

第百二十五段:トルコの地震④

 

 図はトルコとシリアの国境付近の現状ですが、ここは世界でも有数の政治的、民族的な複雑さを持つ地域です。

 

 まずシリアですが、ご存じのように、アサド政権が非常に独裁的な政治を行っており、これに反発する反体制派によって内戦状態が続いています。
 反体制派をトルコが支援していて、多くのシリア内戦の難民がトルコへ移住しています。

 

 国境の東部ではクルド人がトルコからの独立を求めて、こちらも紛争状態が続いています。
 この辺りは石油が産出され、以前は石油の利権がらみでアメリカも首を突っ込み、非常に複雑な情勢が今も続いています。
 これとシリア民主軍とが複雑に絡み合っています。

 

 このような背景から、今回地震が起こった地域は政情が非常に不安定で、さらには民族が入り乱れていることも重なって、震災の救助、救援活動をしようにも安全が確保できない、という状況にあります。
 更にはもともと脆弱だった道路をはじめとするインフラが地震によって被災、寸断され、人の動きも物流も思うようにならないという現実が重なりました。

 

 これらのことが、災害を大きくした三つ目の理由と言えます。
 ただでさえ災害が起こると治安が乱れます。
 東日本大震災の時も、マスコミにはほとんど報道されませんでしたが、犯罪は結構起こっています。
 治安のいい日本でさえもそうですから、もともと複雑な事情を抱えるこの地域の治安は想像をはるかに超えるものがあるのではないでしょうか。
 それによって海外からの救援・救助活動が思うように進まず、多くの助かる命が失われるということは、本当に悲しいことです。

 

 


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