第百十段:首都直下地震⑩
図は都心南部直下地震による焼失家屋数の分布を示したものです。
先週の図である全壊家屋数の分布とよく似ています。
高い分布をしまして入る所は木造家屋が多く、しかも密集しています。
地盤が柔らかいのでよく揺れる、したがって全壊家屋数も多いし、火災が発生しても消火活動が困難、したがって焼失家屋数も多い、ということになります。
火災発生件数は最も多いケースである冬の夕方、風速8m/秒で、915件、焼失家屋数は118,734棟となっています。
余談になりますが、学校の数学で“有効桁数”という概念を習いました。
焼失家屋数の想定結果に6桁の精度があるかと言うと、ありません。
ただコンピュータで計算しますので、小数点以下何桁でも出そうと思えば出すことはできます。
いえることは10万棟を超える家が焼失することが想定される、と言ったところでしょう。
ここで、阪神・淡路大震災との比較をしてみます。
表がその比較結果です。
まず火災発生件数は都心南部直下地震の方が阪神・淡路大震災の3.2倍、焼失家屋数は15.7倍になっています。
阪神・淡路大震災の時はほとんど無風状態でした。
それに対して都心南部直下地震は風速8m/秒ですから、相当延焼することが考えられます。
次に火災による死者数を比較すると4.4倍、焼失家屋数の15.7倍に対してかなり少ない倍数になっています。
さらに全死者数は0.96倍と、都心南部直下地震の方が少ない数になっています。
犠牲者数は少ないにこしたことはありませんが、火災による死者数、全死者数ともに少ないのではないか、と、何となく感じるのは私だけでしょうか。
もう一点、通常風速の想定は山口県の想定でもそうですが、風の弱い時の3m/秒と強風時の15m/秒が一般的です。
ところが東京都の想定では強風時の想定が8m/秒となっています。
以前の想定では強風時として東京都も15m/秒に対して想定が行われていたのですが。