第三十一段:衛星データを防災に活かす ~衛星データを災害対応に使う~
先週、陸前高田市の津波による被害の範囲を、衛星データを使ってほぼ求めることができ、衛星データが防災に使えるという確信を得た、と書きました。
話は前後しますが、その後何度も気仙沼市の防災危機管理課長で、のちに防災監を務められた佐藤健一さんを訪ね、被災状況のこと、その後の対応のことなどを聞きました。
佐藤さんの話によると、被災直後は津波による山のようながれきで状況把握をするために外へ出ることもできず、通信も途絶え、全く情報が入らず、何をして良いかわからなかった、そこで考えつくことをとにかく行った、ということですが、もし被災状況の全容が概略でもよいから分かれば、その後の対応がずいぶん変わっただろう、多くの人の命を救うことができたかもしれない、ということでした。
図 災害時に必要な情報の精度と時間の関係
図は、その時の話を基に作ったものです。
すなわち、大規模な災害が起こった時には、細かい情報は後回しでも(情報の精度は低くても)、まずは被災状況の全容を掴むことが重要、その情報があればそれを基に次に打つ手を考えることができる、従ってまずはできるだけ早く被害の全体像を防災関連機関に提供することが求められる、そしてその全体像を把握するには衛星データが非常に有効である、ということです。
衛星データには光学センサーによるものとマイクロ波センサー(SARセンサー)によるものがあり、それぞれ一長一短がありますが、これらセンサーのお互いの短所を補い合いながら衛星データを使うと全体像把握は可能となります。
近い将来必ず起こる南海トラフ巨大地震や首都直下地震、場合によっては富士山の噴火も可能性がありますが、これらが起こった時に衛星データをすぐ使える体制を整えておくことが極めて重要になります。それによって何千人、場合によっては何万人の命を救うことができると思うのです。
そんなことをJAXAの皆さんとたびたび話すことになりました。
そんなある日、ふと気がつきました。
JAXAの衛星データは全てつくば周辺にあるのです。
「これはまずい、もし首都直下地震、あるいはほかの災害でつくばが機能しなくなったら、せっかく何万人もの人命を救うことができる衛星データが使えない・・・」
それから「JAXAの衛星データを西日本にも、できれば山口県に」、と言い始めたのです。