第三十二段:衛星データを防災に活かす ~JAXAの衛星データを山口県へ~
今週は、少々乱暴なはなしを。
現在JAXAが打ち上げて地球の観測を行っている地球観測衛星「だいち2号」クラスになると、設計、製作、打ち上げ、運用で、大体500億円かかります。
これを高いと思うか、安いと思うか、皆さんはどう思われますか?
防災の観点から言うと、私は“安い”と思っています。
先週書いたように、災害直後の被災状況をすぐに国(首相官邸、内閣府防災など)、県、国土交通省、自衛隊、消防、警察、医療関係などの防災関連機関に提供できれば、非常に多くの人命を救うことができます。
人命一人一億円としましょう。
かつて、人一人の命は地球よりも重い、と言った我が国の首相がおられます。
あるいは人の命はお金には代えられない、ともよく言われます。
とは言いながら、交通事故などで死亡した場合には、保険料が数千万円~数億円支払われます。
裁判では人命がお金に換えられています。
そのようなことをいろいろ考えて、乱暴なはなし、「一人一億円」と・・・。
話を防災に戻します。
間違いなく近い将来起こる南海トラフ巨大地震、今起こったら、最悪の場合30万人以上の人命が失われるという想定が出ています。
限界はあるものの、この数字は対策をすることでずいぶん少なくすることができます。
その有効な一つが、人工衛星を用いて被災状況を早期に把握することです。
これによって、500人の命が救われれば、500億円の価値は十分あることになります。
これは私の直感ですが、数万人の命を救うことができるのではないかと思っています。
1万人であれは1兆円の価値があることになります。 ちなみに1兆円はおおよそ瀬戸大橋(児島-坂出ルート)の値段です。
さて、それだけの価値がある衛星データがつくば周辺にだけあるということは、首都直下地震など大規模な災害が関東で起こった時に使えなくなる、すなわち500億円がパーになる、ということになります。
そこで衛星データのバックアップ機能を山口県に、という図を作って関係する人々を口説き始めました。
残念ながらこの図のように「山口受信局」は技術上の問題(だいち2号の機能)で実現できませんでした。
ただ、結果的にはデータは山口県に来ることになり、当初の目的は達成できました。
図 衛星データのバックアップ機能のイメージ図