第二百五段:地震直前予知への挑戦④
これまで弘原海先生、池谷先生の研究を紹介してきました。
残念ながらこのお二人は他界されています。
今週と来週は大学を退職後も会社を興して地震の直前予知に取り組んでいるお二人の先生を紹介します。
まず電気通信大学名誉教授の早川正先生です。
早川先生は池谷先生と同様、電離層の異常に着目、自ら電離層の異常を観測するシステムを立ち上げ、今も観測されています。
実は私が工学部長を終えてしばらくしたころ、たまたま先生の研究の話を知り、電気通信大学に先生を訪問、先生から研究のお話を聞きました。
その時に頂いたのが図-1の本です。
パワーポイントも一式頂きました。
理解して頂ける人を増やすために自由に使ってもいいと。
まだまだ地震の直前予知はできないと思い込んでいる人が多いからです。
何度か私の講演の時に先生のパワーポイントを引用させて頂きました。
あれだけ予算をつぎ込んで長い時間をかけて地震予知の研究がされてきたにもかかわらず、阪神・淡路大震災も、東日本大震災も従来の方法では予知できませんでした。
国も地震の予知はできません、というスタンスです。
地震が予知できる原理は図-2に示す通りです。
地震の直前、震源上空の電離層に異常が現れます(電離層が数km下降する)。
そうすると電波の伝わる時間がいつもより短くなります(早く到達する)。
2011年3月11日の東日本大震災の直前にもこの異常が観測されていました。
早川先生のお話によると、まだまだ観測点が少ない。
もっと観測点を増やせば精度が上がる、とのこと。
そこで私は工学部に帰って早速大学と相談して、先生の研究に協力すべく工学部の建物の屋上に観測用のアンテナを設置しました。
早川先生は今も電気通信大学認定のベンチャー企業、株式会社早川地震電磁研究所を設立し、直前予知に取り組んでおられます。
先生の思いは、図-1の本のオビに書いてあります。
「知りたいのは、地震発生のメカニズムではない!『地震は予知できない』とする、従来の地震学は、なぜこの予知研究を異端視するのか?」