第百二十四段:トルコの地震③
シリアとの国境に近いトルコの東部での地震、大災害になった理由の一つが強烈な地震動だったということは先週書きました。
大災害になった大きな理由は他にも最低二つはあります。
その一つ、それは建物が脆かったということです。
テレビの画面に倒壊したビルが大写しになりました。
鉄筋が細くて、しかも量が非常に少ないことに多くの人が気づかれたと思います。
また壁や柱がレンガを積んで出来ていることも建物を脆くしている大きな理由です。
写真は今回の地震でよく見られたビルの破壊のパターンで、パンケーキが重なったように壊れているので、パンケーキ・クラッシュとよばれています。
JICAの短期専門家としてアンカラに滞在中、多くの建築中のビルを見ました。
まず一階部分の柱を建てて、その上に一階の天井兼二階の床のコンクリート版を敷設します。
そしてそこからまた二階部分の柱を立てて、その上に二階部分の天井兼三階の床のコンクリート版を重ねる。
順次こんな調子で高層まで積み上げていっていました。
柱と天井兼床のコンクリート版の間に壁ができるわけですが、そこにはレンガやブロックを埋め込んでいました。
大男が本気で喧嘩をして勢い余って体が壁にぶつかったら壊れて突き抜けるのではないかと心配したほどでした。
日本のように柱が一階から(地階があれば地階から)最上階まで一気通貫していないのです。
全ての階で重ね足されているのです。
しかも鉄筋量も少ない、これでは地震に対してひとたまりもありません。
残念ですが、壊れるべくして壊れたと言っていいでしょう。
トルコの研究レベルは決して低くありません。
立派な地震工学の大学の先生もたくさんおられます。
また耐震設計基準もそんなに悪くありません。
ではなぜ研究成果、それに基づく耐震設計基準が実現されないのか、その最大の原因は経済力だと私は思います。
多くの鉄筋を使い、強いコンクリートを使って、頑丈なビルを建てる、それにはやはり経済力が必要です。
また設計基準を守って施工されているかどうかを監視する行政のチェック機能も非常に重要になります。