第六十三段:大規模災害に備える ~海底に津波計を設置し直接計測~

 先週、日本海溝から千島海溝に至る東日本太平洋沖に設置されている地震・津波観測ネットワークS-netを取り上げ、地震計と津波計(水圧計)が一体となった観測装置を海底に150カ所設置し、これらを総延長5,500キロに及び海底ケーブルで結んでいることを紹介しました。
 これらの海溝で地震が起こると、いち早くキャッチして、緊急地震速報や津波警報が出されます。

 

 実は東日本大震災では、気象庁は非常に悔しい思いをしています。
 というのは、最初に発表したマグニチュード、津波の高さが実際に起こったものよりもずっと小さかったからです。
 これは気象庁がミスをしたというのではなく、東日本大震災がそれまでの地震観測からマグニチュードを出す方法(アルゴリズムと言います)、津波の高さを予測する方法の適応範囲をはるかに超える地震だったからです。

 

 少し専門的になりますが、気象庁は地震のマグニチュードを地震波の振幅から求めています。
 これを気象庁マグニチュードと言って、Mjと書きます。

 

 マグニチュード8くらいまではそれまでのアルゴリズムで大丈夫だったのですが、東日本大震災はマグニチュード9でした。
 マグニチュード9はモーメントマグニチュードと言って、断層が壊れた面積と直接関係があり、Mwと書きます。

 

 実はマグニチュードが8を超えると地震波の振幅はほとんどそれ以上大きくなりません。
 では何が違うかというと、地震で揺れる時間(継続時間と言います)が違ってきます。
 その例を図に示します。

 

 

 

 図は阪神・淡路大震災の時に神戸港で観測された地震波と東日本大震災の時に仙台港で観測された地震波です。

 

 阪神・淡路大震災のMwは7.3、東日本大震災のMwは9.0です。
 両者の振幅はあまり違いませんが、継続時間は全く違うことがお分かりと思います。

 

 実は津波の高さはMjから決められていたのです。
 東日本大震災が起こったときは振幅から求めるMjを使って津波の高さを推定するしかなかったのです。

 

 記憶がもう曖昧になっていますが、最初に気象庁が発表したマグニチュード(Mj)は7.8前後ではなかったかと思います。
 それは図のように振幅があまり大きくなかったからです。
 したがって、津波の高さもそれに応じて小さく推定された、というわけです。

 

 東日本大震災以後、この問題を解決するために海底に津波計(水圧計)を設置して、沖合での津波の高さを直接測る、ということになってきたのです。

 

 

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