第八十一段:安芸灘-伊予灘の地震、南海トラフ巨大地震に備える ~南海トラフ巨大地震が迫っているわけ~
この3月25日に政府・地震研究推進本部から「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価」(第二版)が発表され、それに関連して日向灘や奄美、沖縄諸島周辺の地震が起こる可能性、そして先週、先々週はそれに関連して「安芸灘~伊予灘」の地震の可能性について書きました。
実は“南海トラフ“の地震活動の長期評価は2013年5月に発表されています。
この“長期評価”には非常に重要なことが述べてあるのですが、東日本大震災から2年後で、まだ報道機関は東日本大震災の報道に追われ、あまり大きく報道されなかったように思います。
図-1は南海トラフで起こった過去の地震です。
これに似た図は第六十九段でも紹介していますので、覚えていらっしゃる方も多いと思います。
発生した年が古い地震については、歴史資料の不足により見落としている可能性がありますが、この図からわかることは、南海トラフで繰り返し地震が起こっていること、しかしながらその震源域の広がり方に多様性があるということです。
一方、海底堆積物や津波堆積物のボーリング調査などから、歴史資料からはわからなかった白鳳(天武)地震(684年)より前にも南海トラフで大地震が繰り返し起きていたことも分かってきました。
例えば高知県の蟹ヶ池で見つかった津波堆積物の痕跡より、約2,000年前に、四国の太平洋沿岸に宝永地震(1707年発生。歴史上最大級と考えられている)よりも大きな津波が押し寄せた可能性も指摘されています。
これらのことなどから“長期評価”は次のようにまとめてあります。
①南海トラフで発生する地震は、多様性に富むため、次の地震の震源域の広がりを正確に予測することは、現時点の科学的知見では困難。
②南海地域、東海地域で同時に発生する地震と、時間をおいて発生する地震があるが、時間をおいて発生する場合でも、数年以内にもう一方で地震が発生しており、両領域はほぼ同時に活動していると見なせる。
③南海トラフ全体を一つの領域と考え、大局的には100~200年間隔で繰り返し大地震が発生しているとして評価する。
以上のことから、2001年に公表された前回の長期評価は以下のように変更されました。
◆前回の評価(2001):
南海地震の発生確率:60%、東南海地震の発生確率:70~80%
◆今回の評価(2013):
南海トラフのどこかで地震が発生する確率:60~70%
「前回の評価」から20年以上、「今回の評価」から10年近く経過しています。
ですからいずれにせよ地震の発生する確率はこれらの数値よりも高くなっています。
実は「今回の評価」には非常に重要なことが書いてありますが、これについては次週説明したいと思います。