第百五十段:「ポセイドン・アドベンチャー」
先々週、モロッコの地震について、そしてあわせて地中海の地震について少し触れました。
地中海周辺はユーラシアプレートとアフリカプレートがぶつかり合って、地震が多発するところですと。
地中海の地震で思い起こすのが、まだ私が20代のころ観た、「ポセイドン・アドベンチャー」という映画のことです。
この映画は豪華客船「ポセイドン号」が、地中海で大津波に襲われ転覆するという、当時はやりのパニック映画です。
ポセイドン号はニューヨークからアテネに向かって航行していましたが、アテネの南方にあるクレタ島の南西約200キロの海底で起こった地震による大津波で転覆します。
生き残りをかけての様々なヒューマンドラマが繰り広げられ、最後には数人だけが助かるというストーリーです。
何度かリメイクされて上映されたので、若い年代の人も「ポセイドン・アドベンチャーという映画のことをご存じの方もおられると思います。
この映画、最初に観たときには気づかなかったのですが、地震工学を研究するようになって、大きな間違いがあることに気が付きました。
映画では高さ30mにも及ぶとんでもない高さの津波が壁のようになって迫ってくるのですが、これが大間違い。
漁師さんや海運に関する仕事をされている方もおかしいと気づかれたと思います。
津波が壁のように迫ってくるのは海岸近くでのこと。
沖合では波として海面が上下するだけ。
東日本大震災の時に、津波が来る前に漁船が沖に向かって急いでいる映像がテレビで放映されましたが、これはまさに漁師さんたちがそのことを知っているからです。
ましてや海岸から数百km離れた大海原では、大きくてせいぜい数十cmくらいしか海面の変化はありません。
例えば東日本大震災のとき、津波は地球の反対側のチリまで到達し、数mの津波となって被害を生じましたが、太平洋では三陸沖でも高いところで1m程度だったのです。
津波の高さ、あわせて速さについては来週引き続き書きたいと思います。
ちなみに「ポセイドン」(写真)とはギリシャ神話に出てくる神で、海と地震をつかさどっているそうです。
このことから、ギリシャ、すなわち地中海では、神代の昔から地震があり、受け持ちが海と地震ということですから津波もあったということが分かります。