第三段:南海トラフ巨大地震が迫っている ~山口県地震・津波被害想定~
南海トラフ巨大地震は近い将来必ず起こります。
従って、それに備えなければなりません。地震は昔から、『地震、雷、火事、親父』と、怖いものの筆頭に挙げられ、確かに怖いものです(家長制度のなくなった今は、親父はもはや怖い存在ではありません。そのかわり・・・)。
その一方で、『幽霊の正体見たり枯れ尾花』ということわざもあります。
ただやみくもに恐れ、混乱しては、何の解決にもなりません。孫氏の兵法にも『敵を知り己を知れば百戦危うからず』とあります。敵(ここでは南海トラフ巨大地震)を“正しく知って、正しく恐れ、正しく行動(準備)する”ことが大切です。
敵を正しく知るには、山口県の地震被害想定が一番参考になります。
平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災の後に最初の地震被害想定が行われました。その後、県内の活断層調査を山口大学と県が共同で行い、その成果を入れて平成20年(2008年)に改定が行われました。
さらに東日本大震災ののちに国が南海トラフ巨大地震の震源の見直しを行い、それを受けて再度被害想定が行われました。その報告書が「平成26年3月山口県地震・津波被害想定調査報告書」です。山口県のホームページで検索して見てください。
被害想定は、冬の深夜、夏の昼12時、冬の夕方の3ケースに対して、それぞれ風速が3m毎秒と15m毎秒の2ケース、計6ケースについて行われています。
ここで、「冬の深夜」はみんなが寝ている時間で、阪神・淡路大震災がこれに相当します。
「夏の昼12時」は昼食時で火を使っている家庭が多く、また海水浴をしている人が多い時間帯です。関東大震災はこの時間帯に相当します。
「冬の夕方18時」は通勤時間帯で交通量が多く、かつ夕食の支度で火を使っている家庭が多い時間帯です。
また風速を2通り仮定しているのは、風速によって延焼規模が大きく異なり、被害も大きく異なるからです。
想定した被害は、津波、建物被害(焼失、全壊)、人的被害(死者、負傷者、重傷者数)、ライフライン(電力、上下水道、通信、ガス)など、非常に多岐にわたっています。これらが県内の市町ごとに求められています。
その中から、死者数についてまとめたものを付表に示します。
このように、被害想定の数がマスコミ等に公表されると、必ずそのくらいの犠牲者が出るものと、大きく勘違いされます。この数字は様々な仮定の下に(妥当ではありますが)、また過去の被害調査を基に震度によってどれくらいの被害が出るかを統計的に処理し、何の対策もせずに今地震が起こったら、という前提で出てきた数です。
このような被害想定は、決して世間を惑わすために行っているわけではなく、どのような原因で被害が出るかを明らかにし、その原因を取り除く、すなわち対策を実施することによって、被害をできるだけ小さくするために行っているものなのです。
この表より、どのケースでも600人前後の犠牲者が出ることになっています。その大半は津波が原因です。宇部市は一番下の行にあるように、13~29人の犠牲者となっています。この原因もすべて津波です。
実はこれらの数字、いくらでもゼロにできるのです。その方法については次回以降に書きたいと思います。
付表 南海トラフ巨大地震による想定死者数