第三十七段:衛星データを防災に活かす ~本当に必要なことは、それが実現するまで言い続ける~

 多くの関係された皆さんの悲喜こもごものエピソードを生みながら、無事JAXAの衛星データが山口県へ来ることが決まり、平成28年(2016年)9月14日、県庁でJAXA、山口県、山口大学の三者協定の調印式が行われました。

 

 協定は、「人工衛星による衛星データの応用研究や利用促進に相互に協力して取り組むことにより、防災分野等における衛星リモートセンシング技術の利用を推進すること」を目的としています。

 

 写真は協定締結後の記念写真です。
 左から、奥村JAXA理事長(当時)、村岡山口県知事、岡山口大学長です。

 

第三十七段:衛星データを防災に活かす ~本当に必要なことは、それが実現するまで言い続ける~

写真 JAXA、山口県、山口大学三者協定締結後の記念写真。左から、奥村JAXA理事長(当時)、村岡山口県知事、岡山口大学長

 

 

 この協定式に同席しましたが、「JAXAの衛星データを山口県に」、と思いついた時の日本を救わなければという思い(多少誇大妄想のケがあるようですが)、JAXAの山本理事さんにそのことを訴えたメールの、送信ボタンを押すときの震えるような感覚、Cold Beautyを説得するための「アー言えばコー言おう、コー言えばアー言おう」という数々の事前シミュレーション、高層の文部科学省の窓から見た霞が関、永田町の寒々とした冬景色、様々な思い出が頭の中を駆け巡りました。
 そして最後につぶやきました。

 

「まさか本当に来るとは・・・」

 

 以来、私には一つの信念のようなものが生まれました。
「本当に必要なことは、それが実現するまで言い続けることが、それに気が付いた人の責任」

 

 現在私は「有限会社山口ティー・エル・オー」の代表取締役も務めています。
 この「山口ティー・エル・オー」は一言で言うと、山口大学の特許や著作物などの知的財産を社会に移転する、という仕事をしています。
 あわせて産官学連携の橋渡しもするという重要な役割があります。
 ちなみにティー・エル・オーとはTechnology Licensing Organization の最初の一文字をとってTLOと一般に書かれます。

 

 今から21年前、TLOは、経済産業省の国策としてスタートし、山口ティー・エル・オーは、中、四国、九州地方で最初に設立されました。
 以来20年以上の年が経過し、大学、産業界、中央政府を取り巻く環境は大きく変化しています。

 

 TLOを取り巻く環境も激変しています。
 15~20年前、地方の国立大学も次々とTLOを立ち上げましたが、最近は廃業、再編するところが次々に出ています。
 中国地方では山口ティー・エル・オーだけになりました。

 

 南海トラフ巨大地震、首都直下地震といった国難が時々刻々と迫っていますが、TLOをとり囲む環境もそれに似たものがあります。
 知的財産の重要性はますます増しており、大学等の知的財産がわが国の国力の基になることは明らかなのに、様々な制度がそれに追いついていないのです。

 

 代表取締役になって丸2年、いま様々なこと、しなければいけないことに気が付き始めました(気が付くのに2年もかかったのか?遅いのう、と思われると思います。1年目はまだ大学の副学長を兼ねていて、そちらにほぼ全力を傾けていたので、あまり社長業に時間がかけられなかったのです、という言い訳をさせてください)。

 

 「気が付いたら、それを実現するのが気が付いた人の責任」、という思いを胸に、それらを一つ一つ実現していこうと思っています。
 今回は防災とあまり関係がない話で終わってしまいましたが、来週は戻ります。
 たまには脱線もお許しください。

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