●第八十五~八十九段 HPCのまとめ●

 家庭の防災計画、家庭継続計画(Home Continuity Plan: HCP)、について具体的に我が家を例に作成してみたいと思います。
 プライバシーのこともありますので、これから書くことは全て我が家のことを正直に書いていないところがありますので、その辺はご了承下さい。
 ただし、HCPの本質は外さないようにしています。

 

●第八十五~八十九段 HPCのまとめ●

 

 「A検討体制の確立」、「B被害想定」をまず記入して行きます。
 以下にその考え方を説明します。
 ここで、HCPの対象にしている家庭とは、私たち夫婦と高齢の母、長男一家、次男一家、長女一家です。

 

「A-1-1計画策定の意義・目的」:
 目的は家族全員がこれから起こる災害に対してけがをしないこと。
 具体的な行動を整理し、準備しておくことによってそれが実現できるところにHCP策定の意義があります。

 

「A-1-2計画策定の体制」:
 誰かがリーダーシップをとる必要があります。
 一般的にBCPもそうですが、危機管理はトップダウンでないとうまくいきません。
 一応専門家である私がリーダーシップを取ります。

 

「A-2-1家族への周知方法」:
 一通りではなく複数の方法で周知します。

 

「B-1-1家族の住宅周辺で懸念される災害の一覧整理」:
 私の家は西岐波の江頭にあります。
 長男一家、長女一家も近くに住んでいます。
 ここは地震では近い将来必ず起こる「南海トラフの巨大地震」、「安芸灘・伊予灘の地震」の影響が考えられます。
 想定される震度は山口県の地震被害想定から求めます*。
 風水害では家が少し高いところにありますので、洪水、高潮、津波の心配はありません。
 土砂災害の心配もありません。
 唯一心配なのは、海が見えるところに家が建っているので、台風の時直接海からの強風が当たることです。
 次男一家は東京都の多摩地域に住んでいます。
 地震では「南海トラフの巨大地震」はあまり心配ありませんが、「首都直下地震」に対しては備えをしておく必要があります。
 ただ23区と違って、対応は大分楽になります。
 風水害の心配はありません。
(以上、第86段の内容)

 

「C-1家族の安否確認方法」:
 家族の携帯電話番号、LINEを全員が共有しています。
 災害時には通話は制限されて繋がらなくなると考え、ショートメールやLINEで連絡を取り合います(少し時間がかかることがありますが)。
 そのことを共有します。

 

「C-2費用のかからない対策」の「C-2-1家具、機器類の災害対策」:
 タンスや食器棚は天井との間に隙間がない丁度の高さのものを使ったり、空間に詰め物をしています。
 また本棚も作り付け、あるいは天井との間に隙間がないようにツッパリをしています。
 天井との間に隙間がないと家具等は非常に倒れにくくなります。
 天井との間に詰め物をすることが難しい場合には、家具類の底面の手前側に薄い詰め物をして、全体を壁の方に傾けるのも有効です。
 私の部屋の本やファイルなどは壁一面の本棚に収納していますが、地震の揺れで本棚は倒れないにしても本などは落ちてくる可能性があります。
 これらが私の上に落ちてきても大したことはないのですが、一応これらをどうするか現在考慮中です。

 

「C-2-3重要な書類、データ等のバックアップ」:
 家庭ごとに重要な書類等の保管場所を確認。
 また仕事等のデータなどはクラウドを利用、あるいはUSBやハードディスクにバックアップを取っています。

 

「C-3避難場所、避難所」:
 避難場所と避難所の違いをご存じない方が結構おられるようです。
 「避難場所」はまずは身の安全を確保するために避難するところです。
 「避難所」は被災するなどして自宅で生活できない人が寝泊まり、生活をするところです。
 「避難所」は災害によって異なりますので、宇部市のハザードマップやホームページで確認しましょう。
 我が家の場合、長男、長女一家は近くに住んでいますから連絡はすぐ取れますが、次男一家は東京都ですから、しっかりと連絡が取れるようにしておく必要があります。
 ただ次男一家は仙台で東日本大震災を体験していますので、防災意識は高いです。
(以上、第87段の内容)

 

「C-4-1災害発生直後に連絡すべき相手先一覧」:
 家族全員がそれぞれリストアップし、表を作成、共有します。
 我が家は私の勤務関係、母の通っている介護施設、親戚、子供たちの家庭では、勤務関係の他に学校、幼稚園があります。
 一応、我が家だけでなく子供たちの家庭の連絡先も共有しておきます。

 

「C-5備蓄品」:
 これに関しては、市のハザードマップ等に例がありますから、それを参考に我が家で必要なものを揃えます。
 その際、ライフライン(電気、水道、下水道、ガス)の被害が発生することも考慮に入れておくことが必要です。
 停電も考えられますが、ここ宇部では停電が数日も続くことは考えられません。
 従って、冷蔵庫に保存すべき食料は冷蔵庫に入れておいて大丈夫でしょう。

 

 次にですが、第八十六段で書きましたように、私の住んでいる地域の断水する確率は非常に低いのですが、最悪の場合を考えて36リットル備蓄しています。
 一人一日3リットルが目安ですから十分でしょう。
 ちなみに水道管等が被災して断水した場合、水道局は被害のあったブロックに流れる水をストップして復旧作業を行い、その他のところは給水を続けます。
 断水した地域には、給水拠点(学校やスーパーなどの駐車場の広いところ)で給水できる体制を取ります。

 

 下水ですが、もし下水管に被害があったとしても、各家庭の水道、トイレはそのまま使えます。
 ただ断水したときのトイレ用の水その他のために、風呂にいつも残り湯、あるいは水を入れておくことをお勧めします。
 一応我が家では万一の時のために携帯用のトイレも備えています。
 水道、下水道共に古い管は順次新しい耐震性のある管に置き換えているということですが、まだ一部古い管もあり、万一被災したときのためにBCPに基づいて対策はいろいろと考えているということです。

 

 我が家はプロパンですが、都市ガスを使っている家庭はガスが止まることを考えておく必要があります。
 カセットコンロ、カセットガスは是非備えておきましょう。

 

「C-6災害対応」:
 家族が一緒にいても離れていても、常に連絡を取り合って、臨機応変に対応するしかないでしょう。
 その際最も重要なことは、“誰もけがをしない”ということです。
 そのための備えをする、ということがHCPのポイントになります。
(以上、88段の内容)

 

「D-1-1家族での災害時対応訓練の実施計画」:
 毎年9月1日の防災の日(関東大震災の起こった日)、1月17日の阪神・淡路大震災の起こった日、3月11日の東日本大震災が起こった日前後では、マスコミがいろいろと特集をします。
 それに合わせて我が家でも連絡を取り合う練習、防災対策の確認、もし不足、改善点があればそれ実行します。

 

「D-1-2訓練の実施とその記録」:
 気づいたこと、改善点、また実施したことを記録に残します。

 

「D-1-3講習会、勉強会、家庭外の訓練等への参加記録」:
 要点、気付いたこと(テレビの特別番組や新聞の記事などが主ですが)、またこれらに基づいて実施したことを記録しておきます。

 

「D-2-1計画の定期点検計画と見直し」、「D-2-2計画の定期点検実施記録」:
 企業ですときちんと定期的に見直しと点検が必要と思いますが、家庭は特に定期的に行う必要はなく、折に触れ、その都度バージョンアップを図ればいいと思います。
 ただ、計画の修正の記録を残しておいて、進歩の度合いを見える形にしておくのはHCPをさらに充実させるための励みになるでしょう。

 

 

 被害想定については以下の資料を参考にしています。

 

*南海トラフ巨大地震の被害想定「平成26年3月山口県地震・津波被害想定調査報告書について」
 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/6/12599.html
*安芸灘・伊予灘の地震被害想定「山口県地震被害想定調査報告書について」
 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/6/12637.html
*首都直下地震の被害想定「首都直下地震等による東京の被害想定」
 https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/torikumi/1000902/1021571.html
 これら被害想定の結果に対する説明等は私のホームページに書いたり、YouTube で説明していますので、ご参考ください。

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