第百八十四段:山口県地震・津波防災対策検討委員会⑥
地震が起こって、みんながすぐに避難すれば、犠牲者はゼロにできる、と先週書きました。
ただ読者の中には、津波が地震後すぐに来たら逃げる暇がないのではないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
また、津波からの避難は、車の渋滞があるから歩いて避難しましょう、と言われています。
では寝たきりの人や足の不自由な人、赤ちゃんなど、自分で歩いて避難できない人はどうすればいいのか、と思われるでしょう。
図は宇部港、小野田港、秋穂魚港における津波の時刻歴、すなわち、地震発生後何分後にどれくらいの高さの津波がやって来るかをシミュレーションした結果です。
この図より、上向きの矢印で示した第1波がやってくるのは、宇部港で約240分(4時間)後、小野田市も大体同じ240分後、秋穂漁港で約150分(2時間半)後ということになります。
これだけ時間があれば、すぐに避難すれば歩いてでも十分避難できますね。
歩いて避難できない人は車を使って避難すればいいのです。
慌てる必要がないので、渋滞も避けることができるでしょう。
ただそのためには地域で誰一人取り残さないぞ、という強い気持ちをみんなが持って、誰が誰を助けるか、だれが運転するか、といったことを今からしっかりと計画を立て、避難訓練をしておく必要はあります。
こう書くと、これまでさんざん大胆な仮定のもとに計算されている、と言っておきながら、このシミュレーション結果は信頼できるのか。
倍半分、場合によったら10倍、10分の1くらいの幅があると書いたではないか、と言われる方もいらっしゃると思います。
確かにそう書きました。
ただ津波の高さはそのばらつきを考えて最悪の場合を示してあります。
ですからこれよりも高くなることはまずないでしょう。
次の問題は津波のやってくる時間です。
もっと早くなる可能性があるのではないか、と心配されるかもしれません。
ご安心ください。
あまり変わりません。
なぜなら、津波の伝わる速さは海の深さだけで決まります。
その海の深さはかなり精密にわかっています。
それを利用した例が海路図です。
ですから津波の伝わる速さはかなり正確に求まりますので、やって来る時間もこの図とあまり変わりません。
避難の時間は十分にあります。