第百五十四段:「南海トラフ巨大地震による津波想定③」
先週、先々週は、国の南海トラフ巨大地震による津波想定結果(平成24年発表)で、どこにどれくらいの高さの津波が押し寄せるか、そして、黒潮町の34.4mばかりがクローズアップされたが、実は太平洋沿岸の各地で、20m、30mを超える津波が押し寄せる可能性のあることが想定されている、ということを書きました。
津波による被害に関しては、津波の高さとともに、地震発生後、どれくらいの時間で津波が押し寄せるか、その時間も非常に重要になります。
そのような観点から、図はこれまでも述べてきた基本5ケースのうち、最も東側で破壊が始まり、大きな滑りが「駿河湾~紀伊半島沖」で起こる「ケース1」と、最も西側で破壊が始まり、大きな滑りが「四国~九州沖」で起こる「ケース5」で、1mの高さの津波が到達する時間を示したものです。
図中の楕円は,高さ1mの津波が、地震発生後10分以内に到達する地域を示したものです。
この図より、1mの高さの津波到達時間が10分以内のところは、破壊開始場所や、大きく断層がすべる場所が変わってもほとんど変わらない、ということが分かります。
それらの場所は、東から「静岡県の駿河湾沿岸」、「静岡県の御前崎から和歌山県の日の岬沿岸」、「高知県室戸岬沿岸」、そして「高知県足摺岬沿岸」です。
図では分かりにくいですが、原図をよく見ると上記4地域は変わりませんが、それぞれの地域内での違いはあります。
しかしその差はわずかです。
さて、1mの高さの津波による被害は堤防などで防げる可能性が高いと考えらえれますが、先週、先々週述べてきたように、それ以上高い津波が広い範囲を襲うことが想定されています。
そのような高い津波は容易に堤防を超えてしまいますので、堤防だけでは被害を防げません。
すなわち堤防のようなハードだけでなく、情報伝達や事前の避難準備などのソフトの備えが非常に重要になります。
その意味において、より高い津波の到達時間も重要になってくることになります。
次回以降、もう少しこの点について考えてみたいと思います。