第百二十六段:トルコの地震の教訓①
シリアとの国境近くで起こった地震の被害がなぜあのように大きくなったか、その理由として、①世界最大級の内陸直下地震で、地震の揺れが非常に強かった、②建築物が脆弱であった、そして③トルコとシリアの国境付近は政治的、民族的な複雑性を抱えており、これが迅速で安全な救助・救援活動を困難にした、ということを書きました。
この震災は日本から遠く離れたところで起こった災害ですが、日本にも大きな教訓があります。
上記③の理由は日本には当てはまらないと思いますが(ただ、最近はだいぶ周辺がきな臭くなっていますが)、①、②の理由は日本への警鐘でもあります。
まず①ですが、ご存じのように南海トラフの巨大地震は確実に近づいていますし、その前後で内陸の直下地震も多発することが想定されます。
さらには首都直下地震も確実に近づいています。
これらの地震が起こりますと兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)や東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の時、あるいはそれ以上の強い揺れが起こってもおかしくありません。
次に②の建物の脆弱性です。
日本の建物は耐震設計がきちんしているので大丈夫、特に1981年(昭和56年)に耐震設計基準が大改訂され(新耐震基準とよく言われます)、それ以降に建てられた家屋は大丈夫、と思われるかもしれません。
実際、阪神・淡路大震災の時には1981年前に建てられた建物と、1982年以後に建てられた建物の間には被害の程度に大きな差がありました。
図は国土交通省が調べた我が国の住宅約5360万戸がいつ建てられて、耐震性があるか、ないかという視点でまとめたものです。
ここでは1982年以降建設された約4050万戸は一括で「耐震性あり」とされています。
しかし、1982年から40年以上経っています。
手入れの良くない建物は相当弱くなっている可能性があります。
図に「実は、これも注意が必要」と書いているように(私が書いたのですが)、実はこの約4050万戸も一口に安全、とは言えないのです。
そのことを証明したのが2016年(平成28年)に起こった熊本地震です。