第六十段:大規模災害に備える ~衛星データ観測シミュレーション~

 日曜日のテレビドラマ「日本沈没」の最終回では、北海道と九州を残してリアルタイムで日本列島が沈んでいく様子を見ることができました。
 ただ、どうして見ることができるんだろうと、私は不思議に思って見ていたのですが・・・。
 日本各地に設置した様々なセンサーからのデータをコンピュータでシミュレーションしたのならわかるのですが。
 しかしその場合もセンサーからの情報がどうしてコンピュータへ届くんだろう、とまたまた不思議に思ったのです。
 日本列島が沈んでいったら当然電気や通信ネットワークがダメになりますので。たぶんコンピュータも。
 科学的には様々な疑問が浮かんだドラマでしたが、主人公たちや日本の企業群の協力で、最後はシベリアの凍土が地球温暖化のせいで溶け出し、そこから新型ウイルスが発生するという逆境の中で、何とか1億2千万人の移住先が決まり、日本人の未来に希望が持てるという人間ドラマでした。
 日本人かくあるべし、と、それはそれで感動的でした。

 

 さて、人工衛星を用いて宇宙から「日本沈没」のように日本列島が沈没するところを見ることができるのではないか、と思われるかもしれませんが、現時点では見ることはできません。
 もっともそれに近い映像が得られるとすれば気象衛星「ひまわり8号」の映像でしょう。

 

 日本列島は500mの空間解像度で2分30秒に一回データが地上に送られてきます。
 受信はいざというときのために北海道にも受信アンテナがあります。
 ドラマでは北海道は沈没しませんでしたから受信はできます。
 が、関東が沈没しているため解析ができず、やっぱり「ひまわり8号」の映像も見ることはできないのです。

 

 いまJAXAが考えているのは、南海トラフの巨大地震、首都直下地震を想定して、今運航中の「だいち2号」に加え、これから打ち上げる「だいち3号」、「だいち4号」、さらには海外の人工衛星も含めて被災地のどこがどのタイミングで撮影できるかをシミュレーションして、準備を進めていることです。
 詳細は省きますが、図は南海トラフ巨大地震発生後の撮影のシミュレーションです。

 

第六十段:大規模災害に備える ~衛星データ観測シミュレーション~

図 南海トラフ巨大地震発生後の人工衛星による被災地撮影のシミュレーション

凡例はどこをどの人工衛星が撮影するかが示してある。(JAXAのホームページより)

 

 可能な限り多くの人工衛星を活用して、被災地をできるだけ早く撮影、膨大な量のデータをAIを用いて迅速に解析し、その結果を政府や都道府県、防災関連機関等に速やかに提供する、という準備をしているのです。

トップへ戻る