第三十四段:衛星データを防災に活かす ~続続JAXAの衛星データを山口県へ~
神風が吹いたお話をする前にもう一人、重要な役割を果たして下さった方のお話を。
当時JAXAの地球観測担当の理事を務めておられた山本静夫さんです。
以前お話した田中佐(たすく)先生のJAXA時代の同僚で、田中先生から紹介いただきました。
物静かな方で、私よりはるかに学究肌の方でした。
田中佐先生は「邪魔者は蹴散らしてでも大事なことは実現せんといかん(ご本人から何度か聞いた言葉)」という、いわば織田信長タイプの性格とは全く逆のタイプの方でした。
だからよく気が合ったのでしょうね。
私も山本さんほどではないですが、穏やかな性格(自称)なので、田中先生と気が合ったのでしょう。
その山本さんはのちに副理事長を務めてJAXAを退任されました。
理事時代に何度もお会いし、衛星データの防災への利用の可能性についてお話をしていました。
穏やかな性格同士でも気は合っていたように思います。
いよいよ私自身、JAXAの衛星データのバックアップ機能を関西に持つべき、との確信を持つに至って、ある意味腹をくくって、山本さんへメールを送りました。
東日本大震災の後、村岡知事に「JAXAのデータを山口県へ・・・」とお話した後でした。
そのメールには、
「衛星データは防災に非常に重要な役割を果たせる。
特に災害直後の被災状況の全体像を把握するのに有効。
大規模になればなるほどその有効性は高くなる。
南海トラフ巨大地震、首都直下地震は近い将来必ず起こる。
従って、衛星データのバックアップ機能を西日本にももつべき(ここで山口県と書きたいところでしたが、あえて西日本と書きました。山口県のことだけではなく、日本全体のことを考えています、というメッセージを送るために)。
そのバックアップ機能の構築は今から始めないと間に合わない。
何千、何万人の人の命を助けることができるのに、その機会を失ってしまう。是非お考えを・・・・。等々」
自分でも読み返して熱い文だなと思いました。
何度も読み返し、メールの「送信」ボタンを押すか押さないか、5分は考えたと思います。
「送信」ボタンを押すともう元には戻れない、という一種の恐れのようなものを感じたのを覚えています。
そして「エイヤ」と「送信ボタン」を押しました。
山本さんは地球観測をしている部下である責任者の方たちにこう言われたそうです。
「三浦先生から、このようなメールが来た。実際に何ができるか、フラットに考えて欲しい。」
マイクロ波センサーによる地球観測の世界の第一人者である当時JAXAの島田政信さんから後日お聞きしました。
この話を聞いた時私は涙がでそうでした。
当時から島田さんは山口大学の非常勤講師として何度も宇部に来て頂き、食事もよくご一緒しました。
私の研究室の大学院生のJAXAでの研修を受け入れて下さったのも島田さんです。
現在は東京電機大学の教授を務めておられます。
JAXA東京事務所のエントランス。山手線御茶ノ水駅の前の「御茶ノ水ソラシティ」の地下にあります。ロケットの模型や、リアルタイムの地球観測の映像など、様々な展示があります。ホールには自由に入れます。是非一度新型コロナが治まったら訪問してみてください。