第十八段:阪神・淡路大震災から26年 ~耐震設計の体系的な見直し~

 日本は地震国で、地震に対してどのように構造物を設計したらよいか、ということが、すなわち耐震設計法が、明治以降ずっと考えられてきて、地震で被害が起こるたびに設計法が改訂されてきています。
 前回、阪神・淡路大震災がその耐震設計の考え方を大きく変えることになった、と書きました。

 

 耐震設計は簡単に言うと、その構造物の重さの何%が地震による力(地震力といいます)として、構造物に水平に作用するかを考え、その地震力が作用しても構造物が壊れたり、倒れたりしないように設計することを言います。
 このことを簡単な図に表しました。

 

第十八段:阪神・淡路大震災から26年 ~耐震設計の体系的な見直し~

 

 ここでWが構造物の重さ(自重)、Hが地震力です。
 例えば自重の20%(すなわち0.2倍)を地震力と考える場合には、H=0.2Wとなります。
 一般にはH=aWとあらわし、aを「設計震度」と言います。

 

 さて、前置きが長くなりました。
 阪神・淡路大震災以前は、一つの構造物に対しては、一つの「設計震度」で設計していました。
 この「設計震度」は、作る構造物の大きさや形、重要性、固い地盤の上に作るか軟らかい地盤の上に作るか、地震のよく起こる地域に作るかあまり起こらない地域に作るか、などで決まっています。

 

 ちなみに同じ構造物であれば、山口県の地盤の良いところ(高台など)に作れば、日本で最も地震力(言い換えるとaは)小さくてすみました。
 ということは他の地域に比べて安く構造物を作ることができました(過去形で書いていますが、今もほとんど変わりません)。

 

 阪神・淡路大震災の地震力は強烈なものでした。
 それまでの耐震設計で考えていた「設計震度」をはるかに超えるものでした。
 そこで、この地震力の抜本的な見直しがなされました。
 その結果、2段階で考えることになりました。
 その構造物が使われている間(50~100年程度)に数回体験する地震と、阪神・淡路大震災のように活断層が動いて数百年から数千年に一度の強烈な力が作用する地震の2段階です。
 地震による揺れの強さを表す指標として、前者を「レベル1地震動」、後者を「レベル2地震動」と言います。
 構造物をすべて「レベル2地震動」に対して設計すれば、どんな地震に対しても構造物は安全になるわけですが、非常に高価になります。

 

 そこで以下のような考え方で設計することになりました。
「レベル1地震動」に対しては、構造物は無被害になるように、「レベル2地震動」に対しては、被害は生じても、人命を損なうことのないようなしなやかな構造物に設計する、橋でいえば、落橋しないように、ということになりました。
 じつはこの「レベル1」、「レベル2」という考えは、東日本大震災の後の津波に、そして最近頻発している豪雨に対しても取り入れられることになりました。

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