第四十段:平成30年7月西日本豪雨災害 ~山口県でも3名の犠牲者が~

 前回、平成30年7月の豪雨では山口県内でも土砂災害で3人の方が亡くなり、いずれもレッドゾーン、イエローゾーンに住んでおられる高齢の方たちだったということを書きました。
 図にその3人の方が亡くなった場所を示します。

 

第四十段:平成30年7月西日本豪雨災害 ~山口県でも3名の犠牲者が~

 

 被災現場は×印で示しています(山口県防災会議、防災対策専門部会資料。当時私は部会長を務めていました)。
 いずれも光市、周南市、岩国市を流れる島田川の上流で、岩国市周東町上須通、岩国市周東町獺越、周南市樋口の特別警戒区域(レッドゾーン)、警戒区域(イエローゾーン)内で起こっています。大変な豪雨にもかかわらず避難せずに被災されました。

 

 防災対策専門部会では、その後島田川流域の土砂災害、洪水の被災地に住む住民に対して、避難に関してアンケート調査をしました。
 その結果、以下のことが分かりました。

 

〇自分が住んでいるところの災害リスクが認識されていないケースが多い。
〇「危ない」と感じても48.7%の人は避難行動をとっていない。
〇避難行動をとらなかった主な理由は、「避難しなくてもよい場所に自宅があるから」、あるいは「これまで大丈夫だったから」など。

 

 人は「自分は大丈夫」という思い込み(“正常性のバイアス”と呼ばれます)に陥りやすく、危険であってもなかなか避難行動をとらない、という習性があります。

 

 実際私も被災地をこれまで訪ねて行って被災した人の話を聞いていますが、皆さん異口同音に「まさかここがこんなことになるとは」とか、「まさか自分がこんな目に合うとは」と言われます。
 私から見れば被災する可能性が十分ある場所にもかかわらず、です。

 

 逆に、よく知っている人から「避難しよう」という呼びかけがあったり、周りの人が逃げている姿を見たりすると避難する、という習性もあります。

 

 実際、東日本大震災の時、避難行動を起こしたきっかけは、テレビやラジオ、あるいは防災行政無線の避難の呼びかけよりも、近所の人の呼びかけや、避難している人を見て、という回答が多かったというアンケート調査もあります。

 

 これらのことより、まずは自分たちの住んでいる場所の災害の可能性、すなわちどのような災害が起こり得るのか、起こるとすればどの程度の災害となるのか(例えば洪水や高潮、津波では水深など、土砂災害ではイエローゾーンやレッドゾーンの中か、あるいはそれらの下流か、など)ということを再確認する、さらには呼びかけや率先して避難する人を育成するといったことも含めた率先避難体制づくりが必要だということが分かります。

 

 これらを受けて、昨年度から県と市町が協力して「率先避難体制づくり」が進められています。新型コロナの影響で、まだあまり進んでいませんが、今年度は宇部市内でも数か所の自治会をモデルとして進められています。私もそのお手伝いをさせて頂いています。

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