第百九十三段:首都直下地震⑤東京都の被害想定
第191段で、首都直下地震(都心南部直下地震)が冬の深夜に起こった場合、人的被害、すなわち死者が約23,000人、負傷者が約113,000人という結果が国から発表されているということを書きました。
これと同じ時期に東京都も独自に地震被害想定を行っています。
約10年前のことでした。
それから10年、東京都はその後建物の耐震化や街の不燃化などが進んだ、その一方で高齢化が進んだなどの理由から、一昨年(令和4年5月25日)被害想定の見直しをした結果を発表しました。
その結果が表です。
この表を見て、私がまず驚いたのは、なんと1の位まで数字があるということです。
被害想定を行うとき考える様々な前提条件や仮定を考えると、有効数字は1桁有るか無いか、場合によっては倍半分、もっと極端なことを言うと、5倍から1/5くらいの変動は十分考えられると思っているのです。
過去4回山口県の地震被害想定を行った(今5回目を行っていますが)経験から言うとそんな感覚なのです。
ましてや人口だけとっても山口県の10倍に近い東京都。
はるかにハード、ソフト両面の社会構造の複雑さをもつ東京です。
そんなに精度よく出せるはずがないと私は直感するのです。
次に驚いたのが死者が6,148人。
少ないに越したことはありませんが、少なすぎるのではないかと思うのです。
これでは、“自分はその6,148人には入らない”と思う人がほとんどで、真剣に危険に備える人は少ないのではないでしょうか。
その一方で負傷者が9万人以上、避難者が最大約300万人、帰宅困難者も450万人以上。
エレベータの閉じ込め22,000台以上。
人に換算すると何人くらいになるのでしょうか?
また自力脱出困難者が3万人以上。
これらの人達は無事で済むのでしょうか?
私にはそうは思えません。
次回詳しく説明しようと思っていますが、ライフラインが大変な被害を受けます。
表の数字はそのライフラインの被害がすべて反映されているわけではないのです。
閉じ込められたら最後、まず救出されることは期待できないでしょう。
避難所に避難した人、あるいは帰宅困難者に食料や水、トイレが十便提供されるとはとても思えません。