第百五十一段:「津波の速さと高さ」
先週はパニック映画「ポセイドン・アドベンチャー」には、津波に関して大きな間違いがあることを書きました。
映画では津波が壁のようになって迫ってきましたが、そのようなことが起こるのは海岸近くでのこと。
津波の伝わる速さは非常に簡単な式で表されます。
中学校で平方根(√)を習ったら、すぐに計算できます。
津波の伝わる速さ=√ghという式です。
ここにgは重力の加速度で、9.8m/s2、hは水深(m)です。
図は水深と津波の伝わる速さの関係を表したものです。
水深5,000mですと、√9.8x5,000=221、すなわち秒速221m、時速にすると約800㎞になります。
これはジェット旅客機の速さに相当します。
1960年にチリでマグニチュード9.5という世界史上最大の地震が発生、その地震による津波が地球の反対側の日本の三陸地方に6mを超える高さで伝わってきました。
残念ながらこの津波でわが国でも141人の方が亡くなっています。
三陸地方に伝わってきたのが22時間半後でした。
実は私はJICAプロジェクトでチリに10回行きました。
パリ経由、ロサンゼルス経由、ニューヨーク経由、カナダ経由、シドニー経由、いろいろなルートで行きましたが、どうしても30~35、6時間かかりました。
飛行機よりも津波の方がはるかに早く地球の反対側に到達するのです。
全く個人的な話ですが、ロサンゼルス経由が一番早いのですが、この経由にはうんざりしました。
入国に時間はかかる(単なる経由なのに入国しなければならないのです)、トランクは壊れる、トランクは届かない、等々。
それでいろいろな経由を試みた次第です。
カナダ経由、シドニー経由がいいですね。
津波に話を戻します。
図に示すように海岸が近くなると水深が浅くなり、水深10mになると時速36㎞となります。
そうすると後ろからやって来る津波がどんどん追いついてきて、水面は高くなって行きます。
ただ、どれくらい高くなるかは、海岸の形や海底の形で異なってきます。
直線の海岸よりも湾になっている方が、湾の奥に行くほど狭められるので、津波は高くなります。
三陸海岸が津波の被害を受けやすいのはそういった地形の影響もあります。
海岸のすぐ近くでも津波の速さは車の速さくらいありますので、見えてから避難をしても間に合いません。
これが、地震の揺れを感じたらすぐに避難をしなければならない理由です。