第百九十五段:南海トラフ地震臨時情報

 前回まで東京都の被害想定のことを、それもかなり悲観的なことを書いてきました。
 それに対して東京都がどのような対策を立てているか、をこれから書こうとしていた矢先、8月8日に日向灘で気象庁マグニチュード7.1 の地震が発生し、初めて「南海トラフ地震臨時情報『巨大地震注意』」が出されました。

 

 多分ほとんどの人が初めて聞かれたのではないでしょうか。
 テレビのニュースを見て、私に電話をかけてきた人がいます。
「テレビで言ってることはさっぱりわからん。一体どういうことなんじゃ?」

 

 実は、この「防災徒然日記」では第六十七~七十一段に「南海トラフ地震臨時情報」について書いていますが(そういう意味では、先見の明があった?)、あらためて説明したいと思います。
 今回の大騒ぎで、南海トラフ巨大地震に対する関心が非常に高くなったことは、ある意味いい機会だったのではないかと思いますが、逆に報道を見ていて気になる点が2点ありましたので、まずはそちらから。

 

 その1。
 南海トラフの巨大地震が起こる前には、必ず「南海トラフ地震臨時情報」が出されるものと勘違いされたのではないか。

 

第百九十五段:南海トラフ地震臨時情報

 

 詳細は次回書きたいと思いますが、図に示すように南海トラフで起こる地震は、いつも断層域全域が一挙に破壊するわけではなく、むしろ分かれて起こることが多いのです。
 そこで断層域内のどこかで地震が起こったら、次の地震に注意を促すために出されるのがこの情報なのです。

 

 一番の問題は、一気に断層域全域が破壊する時です。
 この時は当然「南海トラフ地震臨時情報」は出せません。
 なんの情報もなしに、いきなりM8~9の巨大地震が起こるわけです。
 実際1707年の宝永地震がこのような地震でした。
 この時は日向灘まで破壊した可能性が指摘されています。

 

 その2。
 「南海トラフ地震臨時情報『巨大地震注意』」が出され、1週間はM8クラス以上の巨大地震が起こる可能性が“相対的に”高まっているので、注意しましょう、という言い方。

 

 これだと一週間たてば地震の起こる可能性が低くなり、安心できるよう感じられます。
 このことは次々回詳しく書こうと思いますが、決して安心してはいけません。
 時間とともに巨大地震の発生する確率は高くなります。
 したがって、1週間過ぎても、着実に備えを充実しなければいけません。

 

 


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