第五十九段:大規模災害に備える ~宇宙から災害状況を把握、「だいち4号」も打ち上げ~
先週はJAXAが今年度中に打ち上げ予定の「だいち3号」が南海トラフ巨大地震の観測を念頭に置いて、一度の軌跡(パス)で非常に広い範囲の観測、すなわち南海トラフの巨大地震で被害が大きい太平洋沿岸の広い範囲を撮影できるように設計されていることを書きました。
あわせて、空間解像度が80㎝ということも書きました。
空間解像度が80㎝ということはどのくらいかということを図に示します。
図の左が「だいち」の画像で、空間解像度が2.5m、右が「だいち3号」の画像で空間解像度が0.8mです。
と言っても「だいち3号」はまだ打ちあげられていませんので、あくまでもこれはコンピュータによるシミュレーション結果、すなわちイメージ図です。
「だいち3号」の画像は、建物などの構造物はじめ地上の様子が非常にはっきりと見えることがお分かりと思います。
この「だいち3号」は地上約670㎞(670mではありませんよ!)の高さで、約100分で一周のスピードで地球の周りをまわりながら地上を観測しています。
直線で670㎞というと宇部から富士山くらいの距離になります。
いかにすごいかがお分かりいただけると思います。
視力が2.0どころか、何百というくらいの超遠視ですね。
これくらいくっきりと見えると、どこがどのような状況かを手に取るように見ることができます。
非常に広い範囲に被害が生じたときにも一目瞭然です。
しかしながら、光学センサーの「だいち3号」では天気が悪いと雲が映って地上の様子を見ることができません。
そこで登場するのが、マイクロ波センサーの「だいち2号」です。
が、「だいち2号」は打ち上げが2014年5月ですから、既に7年経過しています。
設計寿命が5年ということですので、そろそろ「だいち」のように寿命が来てもおしくありません。
そこでJAXAは「だいち2号」の後継機として「だいち4号」の打ち上げの準備をしています。
予定では来年度すなわち令和4年度となっています。
この「だいち4号」の空間解像度は「だいち2号」の約3mとおなじですが、観測幅が「だいち2号」の約4倍の200㎞です。
これくらい幅があると、「だいち2号」では山口県全体をカバーするのに4~5枚の撮影が必要で得したが、1枚で済みます。
空間解像度3mで観測幅が200㎞というのもすごいですね。
しかしもっとすごいのは、JAXAはこれら「だいち3号」、「だいち4号」およびそれらを補完するための海外の衛星を使って首都直下地震や南海トラフ巨大地震が起こったときに、いつどこが撮影できるかをシミュレーションしていることなのです。