第五十四段:首都直下地震が近い ~死因の多くが火災~

 先週は、首都直下地震のうち最も被害が大きいと想定されている「都心南部直下地震」の人的被害について説明しました。今週も引き続きその話をします。
 この地震が「冬・深夜」、「夏・昼」、「冬・夕」の3つの時間帯に起こった時の死亡の原因ごとにまとめられた表を今週も示します。

 

第五十四段:首都直下地震が近い ~死因の多くが火災~

表 都心南部直下地震における人的被害

 

 この表より、「冬・夕」に地震が起これば、最悪の場合23,000人の死者が出るという結果になっています。
 そしてさらに、「揺れによる建物被害に伴う要救助者」すなわち自力脱出困難者は救助が遅れれば遅れるほど命を失い、最悪の場合、この数を死者合計数に加えると「冬・深夜」で約90,000(18,000+72,000)人、「冬・夕」で約81,000(23,000+58,000)人、最も少ない「夏・昼」でも約60,000(62,000+54,000)人となります。

 

 死因の最も大きいのがどのケースも火災です。
 そこでどこで火災による被害が大きいかを示したのが付図です。

 

第五十四段:首都直下地震が近い ~死因の多くが火災~

 

 この図は冬の夕方、風速8m/sの時の全壊・焼失棟数を示したものです。
 250mx250mメッシュごとの棟数が色分けしてあります。
図には「皇居」と「山手線」の位置を矢印で示しています(私が加筆)。
 ほぼ中央にある「皇居」は被害がありません。そして山手線の内側もそれほど被害は大きくありません。
 しかしながら山手線の外側は非常に多くの全壊、焼失家屋があるメッシュが広い範囲にわたって分布しています。

 

 東京タワーや、東京スカイツリーの展望台から東京を眺めると、山手線の外側には木造住宅が密集していることが分かります。
 ちなみに私は無料の東京都庁の展望台から眺めています。

 

 東京消防庁は、ポンプ車、救急車、はしご車等の消防車両、消防艇、消防ヘリコプター、消防ロボット等1,951台(平成27年4月現在)を配備して災害に備えていますが、地震によって同時に多くの場所から出火した場合、この数は十分ではありません。
 しかも山手線外側の木造住宅密集地では、消防車が入れないところが沢山あります。
 地元の人による初期消火に失敗した場合、あとは燃えるに任せるしかありません。
 関東平野の冬は空気が非常に乾燥し、強い空っ風が良く吹きます。想定の風速8m/s以上の風が吹く可能性は非常に高いといえます。
 ちなみに冬の空っ風がめったに吹かない山口県の被害想定でも風速15m/sを想定しています。

 

 さらに、工場地帯である東京湾沿岸部は無被害となっています。
 これは被害がないのではなく、データがないので想定できないのです。
 これらのことを考えると、もっと犠牲者が増えることが想像されるのです。

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